レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2008/12/26
- 登録日時
- 2009/05/01 02:12
- 更新日時
- 2017/02/02 10:59
- 管理番号
- D2008M1856
- 質問
-
未解決
播磨勝太郎と言う人物について。
典拠にある『日本映画発達史』で著者、田中純一郎氏は1916年、米ユニヴァーサル社の極東セールス・マネージャー「トム・コクレン」と「播磨勝太郎」の提携によって「播磨ユニヴァーサル商会」が設立されたと述べている。
利用者によると、当時の映画雑誌「キネマフィルム」に出された広告の表記では「ユニバーサルハリマ商会」。また、その代表名の表記は播「間」勝太郎であったという。
会社名・ハリマ氏の名前共に、どちらが正確なのか、判断出来るような資料はないか。
典拠:『日本映画発達史』? 活動写真時代 田中純一郎/著 中公文庫 第三章過渡期 P.257
- 回答
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ご照会の「播磨勝太郎」および「播磨ユニヴァーサル商会」の表記について、映画事典、映画史に関する資料、「播磨ユニヴァーサル商会」が設立された大正5(1916)年頃に発行されていた映画雑誌、シンガポール在住日本人関係資料などを参照しました。
次の資料1から資料9までには、「播磨勝太郎」について記述がありますが、表記は「播磨」と「播間」に分かれており、どの表記が正確なのかは判断できませんでした。「播磨ユニヴァーサル商会」についても同様です。
なお、資料10は、これらとは表記が異なります。誤植である可能性もありますが、参考までに紹介します。
1『日本映画初期資料集成. 6』 三一書房 1991.2 760p 活動画報. 第1巻第1号~第1巻第3号の複製 (当館請求記号KD652-E67)
2『日本映画初期資料集成. 7』 三一書房 1991.2 756p 活動画報. 第1巻第4号~第1巻第6号の複製 (当館請求記号KD652-E67)
3『日本映画初期資料集成. 8』 三一書房 1991.2 776p 活動画報. 第1巻第7号~第1巻第9号の複製 (当館請求記号KD652-E67)
※大正期を代表する映画雑誌とされている『活動画報』が創刊された大正6(1917)年の各号の巻末には、「ユニバーサル・フィルム」の広告が掲載されています。このうちの第1号(集成6巻p.268)から第8号(集成8巻p.521)までの広告には、「ユニバーサル・フィルム会社」と「播間商会」、「播間勝太郎」が並んで記されています。
4『映画年鑑 昭和編 I 2(昭和2年版)』監修:岩本憲児,牧野守 日本図書センター 1994.4 697p 『日本映画事業総覧』(国際映画通信社大正15年刊)の複製 (当館請求記号KD652-E146)
※田中純一郎「日本映画事業発達史」(pp.177-233)が収録されていますが、表記は『日本映画発達史』とは異なり、「播間勝太郎」、「ユニヴアサル・ハリマ商会」です(p.204)。
5『単行図書資料. 第14巻』 龍溪書舎 2000.4 20世紀日本のアジア関係重要研究資料; 3 シンガポールを中心に同胞活躍南洋の五十年 上 (南洋及日本人社昭和12年刊)等の複製 (当館請求記号A99-Z-G107)
※収録されている『シンガポールを中心に同胞活躍南洋の五十年 上』の143ページでは「播摩勝太郎」と、145ページでは「播磨勝太郎」と記されています。
6『日本映画の歴史 : その企業・技術・芸術』 岡田晋著 ダヴィッド社 1967 435p (当館請求記号778.21-O455n-d)
※「播間勝太郎」と記されています(p.68,70,113)。
7『日本映画史大鑑 : 映画渡来から現代まで・86年間の記録』 松浦幸三編著 文化出版局 1982.2 222p (当館請求記号KD652-95)
※大正4(1915)年9月の項(p.73)では、「播間勝太郎と提携、ハリマ・ユニヴァーサル協会を起こす。」と、同5(1916)年6月の項も「播間勝太郎」と記されています。
8『年表・映画100年史』 谷川義雄編 風濤社 1993.5 250p (当館請求記号KD651-E167)
※大正5(1916)年7月の項(p.48)では、「播磨勝太郎、T・Dコクレンと提携、播磨ユニバーサル映画商会設立。」とあります。翌年2月(p.50)の播磨の病没の項も同じ表記です。
9『戦前シンガポールの日本人社会 : 写真と記録』改訂版 Adam Road シンガポール日本人会 2004.5 232p (当館請求記号DC812-H209)
※シンガポール在住の日本人で初めて活動写真を上映した人物の一人として取り上げられています(p.65)。表記は「播磨勝太郎」です。
10『映画五十年史』 筈見恒夫著 大阪 創元社 1951 428p (当館請求記号778.2-H417e)
※ユニヴァーサル支社の開設に関する記述(p.56)では、「幡間勝太郎」、「ユニーヴァーサル幡間商会」と記されています。
参照した資料は、次のとおりです。
・『最新映画辞典』 山根幹人著 映画国策社 昭和11 166p (当館請求記号YD5-H-特264-463)
・『映画百科辞典』 岩崎昶等編 白揚社 1954 638p (当館請求記号778.033-E38-I)
・『事典映画の図書』 辻恭平著 凱風社 1989.12 526p (当館請求記号KD1-E14)
・『映画の事典』 映画の事典編集委員会編 合同出版 1978.11 569,17p 『映画論講座』別巻 (当館請求記号KD2-72)
・『日本の映画人 : 日本映画の創造者たち』 佐藤忠男編 日外アソシエーツ 2007.6 713p (当館請求記号KD2-H82)
・『世界映画大事典』岩本憲児,高村倉太郎監修 岩本憲児,奥村賢,佐崎順昭,宮澤誠一編 日本図書センター 2008.6 1455p (当館請求記号KD2-J15)
・『20世紀アメリカ映画事典 : 1914-2000日本公開作品記録』 畑暉男編 カタログハウス 2002.3 2073p (当館請求記号KD712-H7)
・『欧米及び日本の映画史』 石巻良夫著 プラトン社 大正14 466p (当館請求記号YD5-H-547-96)
・『映画大観』 大阪毎日新聞社,活動写真研究会編 春草堂 1924 166,115p (当館請求記号778.2-O775e)
・『日本映画史』 飯島正著 白水社 1955 2冊 (当館請求記号778.21-I193n)
・『映画史』 岩崎昶著 東洋経済新報社 1961 351,17p (当館請求記号778.21-I934e)
・『日本映画論言説大系. 第3期(活動写真の草創期) 29』 牧野守監修 ゆまに書房 2006.1 732p 「日本映画界事物起源」(「シネマと演芸」社 昭和8年刊)等の複製 (当館請求記号KD641-H135)
・『もう一つの映画史 : 活弁の時代』 吉田智恵男著 時事通信社 1978.8 278p (当館請求記号KD652-57)
・『日本映画史の研究 : 活動写真渡来前後の事情』 塚田嘉信著 現代書館 1980.11 318p (当館請求記号KD652-78)
・『講座日本映画』 今村昌平〔ほか〕編 岩波書店 1985‐1988 9冊 (当館請求記号KD652-145)
・『映画生誕100年博覧会 : シネマの世紀』キネマ旬報社編 川崎 川崎市市民ミュージアム 1995 162p (当館請求記号KD652-G17)
・『秘録・日本の活動写真』田中純一郎著 本地陽彦監修 ワイズ出版 2004.12 319p (当館請求記号KD652-H99)
・『日本映画史. 1(1896-1940)』増補版 佐藤忠男著 岩波書店 2006.10 443p (当館請求記号KD652-H154)
・『最尖端民衆娯楽映画文献資料集 17』牧野守監修 ゆまに書房 2006.12 368p 日本映画盛衰記 / 玉木潤一郎著 (万里閣昭和13年刊)の複製 (当館請求記号KD652-H171)
・『日本映画初期資料集成』監修:牧野守 三一書房 1990-1992 14冊 (当館請求記号KD652-E67)
・『南十字星 : 創刊二十周年記念復刻版』 Singapore シンガポール日本人会 1987.6 496p (当館請求記号DC812-E6)
・『シンガポールの日本人社会史 : 「日本小学校」の軌跡』 西岡香織著 芙蓉書房出版 1997.4 305p (当館請求記号DC812-G43)
・『幕末明治海外渡航者総覧』手塚晃,国立教育会館編 柏書房 1992.3 3冊 (当館請求記号GB13-E58)
・『海を越えた日本人名事典』新訂増補 富田仁編 日外アソシエーツ 2005.7 918p (当館請求記号GB12-H42)
・『大正ニュース事典』 大正ニュース事典編纂委員会,毎日コミュニケーションズ出版事業部編 毎日コミュニケーションズ 1986-1989 8冊 (当館請求記号GB8-163)
・『明治人名辞典』 日本図書センター 1987.10 2冊 『現代人名辞典』 第2版(中央通信社大正元年刊)の改題複製 (当館請求記号GB12-E1)
・『明治人名辞典. 2』 日本図書センター 1988.7 2冊 『日本現今人名辞典』(日本現今人名辞典発行所明治33年刊)の改題複製 (当館請求記号GB12-E1)
・『明治人名辞典. 3』 日本図書センター 1994.9 2冊 『大日本人物誌』(八紘社大正2年刊)の複製 (当館請求記号GB12-E1)
・『大正過去帳 : 物故人名辞典』 稲村徹元,井門寛,丸山信共編 東京美術 1973 (当館請求記号GB13-30)
・『新聞集録大正史』 大正出版 1978.6 15冊 (当館請求記号GB461-20)
・『朝日新聞人名総索引 : 合本版. 第1巻』自大正元年~至昭和20年 日本図書センター 2004.9 p341-358,70,219p (当館請求記号UP58-H1)
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レファレンス回答の作成(2008年12月26日)後、下記の文献について情報が寄せ
られました(2017年2月1日)。
海を渡った興行師・播磨勝太郎 : 20世紀初頭のアジア映画市場におけるシンガ
ポールと日本 / 笹川 慶子
關西大學文學論集 / 關西大學文學會 編 64巻4号 2015.3. pp.23-47
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I026283982-00
*p.46の注1)に、「シンガポールやアメリカ、イギリスなどで発行された英字新聞や雑誌
の表記はHarimaだが、日本で発行された新聞や雑誌の表記は「播磨」と「播間」
のあいだで揺れている。ただし、シンガポールで発行された邦字新聞の広告に
は「播磨」と記されている」との記載があります。
*同論文は、関西大学学術リポジトリでも公開されています。
http://hdl.handle.net/10112/10042
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
調査済み資料:
『日本映画発達史』中公文庫
『キネマフィルム』と言う名称での雑誌は国会図書館未所蔵。(キネマレコードという誌名が、当時の年代的に当てはまるか。)
『講談社日本人名大辞典』 講談社 『日本人名大事典』平凡社 人名事典等には情報は皆無。また、ネット検索(主にGoogle)でも<播磨勝太郎><ユニバーサル>等の単語を組み合わせて検索してみたが、出てくるのは『日本映画発達史』による情報だけ。
『講談社 日本人名大辞典』 ; 『日本人名大事典』
- NDC
-
- 映画 (778 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 映画産業
- 播磨勝太郎
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 公共図書館
- 登録番号
- 1000054363