レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年06月09日
- 登録日時
- 2021/01/20 11:13
- 更新日時
- 2021/01/20 12:06
- 管理番号
- 0000001789
- 質問
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未解決
泰澄寺について調べている。泰澄寺は現在真言宗智山派だが、いつから真言宗になったのか、また、泰澄寺の縁起などはどこかに翻刻されているのかを知りたい。「泰澄大師誕生地遺跡縁起」が福井県立図書館にあることは国立国会図書館サーチで分かったが、遠方のため内容が知りたい。オンラインで読める福井県史通史編は確認済。
- 回答
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(1)養老元年(717年)開創の泰澄寺の宗派について、1939年宗教団体法以前の情報として確認できたのは、1700年代半ばに執筆された観光案内「越前国名勝志」で「真言宗」と記載されていることと、旧国立史料館収蔵の寺院明細帳においても「真言宗智山派」と記載されていることのみです。
(2)ご質問にある『泰澄大師誕生地遺跡縁起』を確認しました。「真言宗」の記載はありますが、いつから真言宗なのかについての記載はありませんでした。
資料内容は以下の通りです。発行年は不明ですが、著作権保護期間満了の確認ができないため、全文複写はできません(半分までは複写可)。
なお、この資料は館外貸出は不可ですが、最寄りの図書館内での閲覧ならびに半分までの複写は可能です。最寄りの図書館での利用を希望される場合は、最寄りの図書館にご相談ください。
『泰澄大師誕生地遺跡縁起』(泰澄寺編 泰澄大師誕生地遺跡保存会編 泰澄寺 [19--])
※奥付はありません。発行年は資料未記載のため不明ですが、本文に昭和31年改築の記載があるほか、資料巻頭に昭和55年に郷土史家から寄贈された当館押印があります。
・表紙
・表紙見返し(白紙ページだが、寄贈印押印)
・泰澄大師御影(白黒図)1ページ(ページ付番号なし)
・泰澄大師賛仰の御詠歌1ページ(ページ付番号なし)
・泰澄大師伝記(元享釈解誦書) p1-3
・泰澄大師誕生地遺跡縁起 p4-5
・泰澄大師誕生地 p6-7・・・境内地内の建物や遺跡等について簡易に説明。泰澄寺についても「白鳳山泰澄寺 真言宗にして大日如来を安置す。現在の寺院は昭和十年建立す。」と記載あり。
・宝物(泰澄寺)及び仏像 p8-10
・泰澄大師誕生地祭日 p11
(3)泰澄寺の詳細な縁起の存在は、確認できませんでした。
『麻生津村誌』(麻生津村誌編纂委員会∥編 麻生津村誌編纂委員会 1979)p221-222に「泰澄寺」の項があり、戦後の泰澄寺について最も詳しく紹介されています。『麻生津村誌』は、最寄りの図書館を通じて館外貸出が可能です。最寄りの図書館での利用を希望される場合は、最寄りの図書館にご相談ください。
- 回答プロセス
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(1)まず泰澄寺の所在地を調べる。
『全国寺院名鑑』(全日本仏教会寺院名鑑刊行会 1969)「福井県-2」(都道府県ごとのページ番号付)に泰澄寺の項あり。住所(福井市三十八社町33の99)のほか簡易な由緒と宗派(真言宗(智山派))記載あり。
(2)福井市の寺院明細帳(台帳)を確認するが、「真言宗智山派」以外の記述は見つからず。
『県立図書館本 福井市寺院台帳』(福井県立図書館(製作) 2004)・・・泰澄寺の項なし。
『国立史料館本 福井県管下越前国足羽郡寺院明細帳』(福井県立図書館(製作) 2004)p74に、泰澄寺の項あり。巻頭に「越前国坂井郡坂井港下西町本寺性海寺末 新義真言宗智山派 泰澄寺」と記載あり。
(3)質問にある資料を確認する。「真言宗」の記載はあるが、いつから真言宗なのかは記載なし。
『泰澄大師誕生地遺跡縁起』(泰澄寺編 泰澄大師誕生地遺跡保存会編 泰澄寺 [19--])
(4)(2)と(3)以外の泰澄関連資料で、泰澄寺の由緒等を調べるが、「真言宗」あるいは「真言宗智山派」以外の記載は見つからず。主な資料は下記の通り。
『泰澄大師』(高嶋勝栄∥著 高嶋勝栄 1979)p45-52「十九章 泰澄大師誕生の地」に泰澄寺ならびに境内内の説明あり。「真言宗」の記載はあるが、いつから真言宗なのかは記載なし。
『福井県仏教風土記 上』(読売新聞福井支局∥編 歴史図書社 1975)「泰澄大師」の章あり。章中のp60に泰澄寺の記載あり、「現真言宗智山派」とあるが、いつから真言宗なのかは記載なし。
出雲路康哉「泰澄大師について(一)」(『白鳳 創刊号』泰澄大師讃仰会∥編 泰澄大師讃仰会 1951)p6に泰澄寺は「真言宗」である旨記載あり。また同ページには、泰澄生誕地の遺跡は真言宗泰澄寺によって、遷化地の遺跡は天台宗大谷寺によって保存されていることに言及し、「大師が真言、天台二派の寺院の開基とは妙であるが、大師時代には日本にまだ天台宗も真言宗も伝来しておらなかつたのである。後程それぞれの宗派の僧が大師の跡を守るために大師建立の寺院に入寺され、各自の宗派を弘教されたものであろう。」と記載している。
『麻生津村誌』(麻生津村誌編纂委員会∥編 麻生津村誌編纂委員会 1979)p221-222に「泰澄寺」の項あり。「真言宗智山派」とあるが、いつから真言宗なのかは記載なし。文章中に、1744年に泰澄寺で火事があったという「越前名勝志」からの引用あり。
『越前若狭地誌叢書 上巻』(杉原丈夫∥共編 松原信之∥共編 松見文庫 1971)「越前国名勝志(越前名勝志)」の翻刻掲載あり。p313-314「泰澄寺」項のなかで、「真言宗」と記載あり。「越前国名勝志(越前名勝志)」の執筆年は不明だが、著者竹内寿庵の生没年は、1670-1755。 1744年の火事の記載は、写本によっては無いものがあると同書p314に補記されている。
なお、「越前国名勝志」の写本の一つが、デジタルアーカイブ福井で公開されている。泰澄寺は27コマ目で紹介されている。
https://www.library-archives.pref.fukui.lg.jp/archive/da/detail?data_id=011-557951-0
(5)(2)の資料結果「性海寺末」を受けて、性海寺の由緒等を調べるが、泰澄寺との関連記載なし。
『全国寺院名鑑』(全日本仏教会寺院名鑑刊行会 1969)「福井県-19」(都道府県ごとのページ番号付)に性海寺寺の項あり。簡易な由緒記載あり。宗派は「真言宗(智山派)」、由緒に「延文元年宗信の開創(中略)その後現寺地の多門院(泰澄建立)遺址に移った」と記載あり。
『[国立史料館本 坂井郡寺院台帳 1』(福井県立図書館(製作) 2004)p14に性海寺の項あり。由緒沿革に「延文元年開山宗信上人ノ創建」と記載あり。
『県立図書館本 阪井郡寺院明細帳』(福井県立図書館(製作) 2012)ページ番号なし。性海寺の項あり。由緒に「泰澄大師開基(中略)延文元丙申年宗信上人再興」と記載あり。
『三国港町の名所旧跡と文化遺産』(印牧邦雄∥著 印牧邦雄 2014.7)p60-74に性海寺の項あり。律宗から真言宗への改宗や京都醍醐寺報恩院流から智積院流への宗派変更について記載あり。泰澄についての記載は見当たらないが、千手寺多門院跡への移転について記載あり。
『福井県仏教風土記 下』(読売新聞福井支局∥編 歴史図書社 1975)p392-393に「泰澄の遺跡へ移す」項あり。
(6)その他
『大日本近世史料 [10]下 諸宗末寺帳』巻末索引には泰澄寺、性海寺ともに記載なし。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 仏教史 (182 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000292692