レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年06月05日
- 登録日時
- 2020/06/06 16:02
- 更新日時
- 2020/12/28 21:27
- 管理番号
- 塩尻553
- 質問
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解決
ジェイ・B.バーニーという人の経営に関する本はあるか。またバーニーが経営論においてどんな位置づけにあるのか知りたい。
- 回答
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ジェイ・B.バーニーが経営戦略について書いた本としては【資料1~3】がある。また、経営戦略の変遷におけるバーニーの立ち位置に関しては【資料4~9】が様々な考察や分析を加えている。
バーニーは経営戦略においては「ケイパビリティ派」とされ、主な内容は「内部環境を重要視。自社の強みがあるところで戦えば勝てる」とされる。
一方「外部環境を重要視。儲かる市場で儲かる立場を占めれば勝てる。」立場を取るマイケル・ポーターらは「ポジショニング派」とされる。
ポーターらポジショニング派を第1世代、バーニーらを第2世代とする経営戦略論の進化では、第3世代を不確実性を重視する理論、第4世代を既存の戦略理論の重要な前提に修正を迫る考え方と見る向きがある。
2013年時点でDiamondハーバード・ビジネス・レビュー オンラインでは岡田 正大 氏が「第1世代と第2世代の理論で企業業績を説明できる部分が6割」としている。
また今後の戦略論では「共有価値の創造(CSV)」が「社会性」と「経済性」の両立において重要なキーワードとなり、第1世代のポーターも「戦略と社会性の関わり」に関する論文を出すなど、「本業が帯びる社会性が呼び込む外部経営資源とのリンケージ(シナジー)」が、本業の経済的業績をどれほど上げ得るかは、今後戦略論の重要な領域になる可能性がある」と指摘されている。
- 回答プロセス
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まず図書館OPACで「ジェイ・B.バーニー」を検索。【資料1~3】がヒット。
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【資料1~3】を見たところ発行年が2003年、第10刷が2008年発刊と年数が経っているので、なぜこの著者、この資料か確認したところ、学校のレポートを書くためと分かった。
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同様の著者や訳者、類書を確認。【資料4~6】と【資料9】がヒット。
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ハーバード・ビジネス・レビュー関連を検索したら【資料7、8】のWebサイトが見つかった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 経営管理 (336)
- 参考資料
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- 【資料1】ジェイ・B.バーニー、岡田 正大『企業戦略論 競争優位の構築と持続 上、基本編』ダイヤモンド社 2003. , ISBN 978-4-47837452-8 (内容紹介:リソース・ベースト・ビュー(経営資源に基づく企業観)という戦略論を展開した、欧米MBA校でも使われているテキスト。企業戦略論ならびに関係分野での研究成果をわかりやすく要約・統合し、現実への応用を促す。)
- 【資料2】ジェイ・B.バーニー、岡田 正大『企業戦略論 競争優位の構築と持続 中、事業戦略編』ダイヤモンド社 2003. , ISBN 978-4-47837453-5 (内容紹介:リソース・ベースト・ビュー(経営資源に基づく企業観)という戦略論を展開した、欧米MBA校でも使われているテキスト。基本から応用まで、あらゆる理論を網羅した決定版。)
- 【資料3】ジェイ・B.バーニー、岡田 正大『企業戦略論 競争優位の構築と持続 下、全社戦略編』ダイヤモンド社 2003. , ISBN 978-4-47837454-2 (内容紹介:リソース・ベースト・ビュー(経営資源に基づく企業観)という戦略論を展開した、欧米MBA校でも使われているテキスト。コンピタンスの視点で,競争優位を徹底解説。)
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【資料4】三谷 宏治『経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2013.
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ISBN 978-4-7993-1313-8
(p.5-15「はじめに」の冒頭で「この数十年間の経営戦略史をもっとも簡潔に語れば、「60年代に始まったポジショニング派が80年代までは圧倒的で、それ以降はケイパビリティ(組織・ヒト・プロセスなど)派が優勢」とし、
「前者:ポジショニング派」の旗手はマイケル・ポーター、その理論は「外部環境がダイジ。儲かる市場で儲かる立場を占めれば勝てる」、「後者:ケイパビリティ派」の旗手は「百家争鳴ではありますがジェイ・バーニー」であり、理論は「内部環境がダイジ。自社の強みがあるところで戦えば勝てる」としている。
その上でp.8からは「ようやく出てきた第3の方法・試行錯誤アプローチ」として「21世紀に入って、経済・経営環境の変化、技術進化のスピードは劇的に上がり、今までのポジショニングもケイパビリティも、あっという間に陳腐化する時代」に出てきたのが「アダプティブ戦略」で「どんなポジショニングでどのケイパビリティで戦うべきなのか、ちゃちゃっと試行錯誤して決めよう」というやり方だとまとめている。
全体的に、経営理論の歴史の流れを踏まえて、バランスよく経営戦略について述べようという姿勢が見られる。) - 【資料5】山田 案稜、TNB編集部『あらすじと図解でよくわかる「ビジネス書」のきほん 社会人のきほん 地頭の鍛え方 パワフルな古典 すごいリーダー』翔泳社 2014. , ISBN 978-4-7981-3861-9 (p.98-99「バーニー「企業戦略論」に学ぶ会社の鍛え方」でバーニーが「経営資源に基づく企業観(リソース・ベースト・ビュー、RBV)」の重要性を指摘」しているとし、「我が社の強みを見つける「VRIO」の表」にまとめている。 またp.86-87は「「競争の戦略」で有名な経営学者ポーター」として「ハーバード・ビジネス・レビュー」などでバーニーと並び称されるポーターについて「有名なフレームワークのひとつが『競争の戦略』のメインテーマ」「5F(ファイブフォース)分析」と挙げている。)
- 【資料6】橋本 忠明『ビジネス名著大全』日本経済新聞出版社 2017. , ISBN 978-4-532-32186-4 (p.22-29「基本書 エッセンシャル版『マイケル・ポーターの競争戦略』」で、バーニーと比較対照されるポーターについて述べ、p.30-37「基本書 ポーターに代わる、新たな競争戦略」でポーター「5つの競争要因」理論などの限界を指摘する論を紹介。)
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【資料7】岡田 正大(慶應義塾大学ビジネス・スクール教授)『Webサイト「ハーバード・ビジネス・レビュー」「ポーターVSバーニー論争のその後を考える(前編)」2013.10.16』 2013年10月16日付 (前編)https://www.dhbr.net/articles/-/2173(確認年月日:2020年6月5日(金))
(Diamondハーバード・ビジネス・レビュー オンライン「ポーターvsバーニー論争のその後を考える(前編)」
戦略論の進化を2013年時点で4つの世代に分けて述べている。
第1世代:業界選択を重視。ポーターに代表される。
利益の上がりやすい構造を持つ場(業界)を探索・選択し、そこに経営資源を投下する。
分析レベルは「業界(industry)」。
第2世代:個別企業の内部資源を重視。RBV(リソース・ベースト・ビュー)など。バーニーに代表されるRBV(リソース・ベースト・ビュー)のように、競争優位の源泉を個別企業の特殊性・異質性(firm heterogeneity)に求める。
いかに同業他社に存在しない、自社特有の(VRIOを満たす)経営資源を保有するかを重視。
分析単位は「個別企業」単位の経営資源が中心。
第3世代:不確実性を重視する理論
代表的な理論と研究者は
ヘンリー・ミンツバーク「創発戦略(偶発性を重視する経営資源配分の決定パターンを指摘)」
レノ・トリジャージスら「リアル・オプション理論(高い不確実性を前提に企業行動の時間的価値を重視する投資意思決定の考え方)」
クレイトン・クリステンセン「破壊的イノベーション理論(技術革新の不確実性)」
ヘンリー・チェスブロー「オープンイノベーション(技術革新の不確実性に注目)」など。
第4世代:まだ1つの世代としてひとくくりにできるほどには明確ではないが、様々な理由から既存の戦略理論の重要な前提に修正を迫る考え方。(オープンソースやロングテール、CSV(共通価値の創出)などが代表的)
第1世代と第2世代の理論で企業業績を説明できる部分が6割とする。) -
【資料8】岡田 正大(慶應義塾大学ビジネス・スクール教授)『Webサイト「ハーバード・ビジネス・レビュー」「ポーターVSバーニー論争のその後を考える(後編)」』 2013年10月23日付 (後編)https://www.dhbr.net/articles/-/2183(確認年月日:2020年6月5日(金))
(Diamondハーバード・ビジネス・レビュー オンライン「ポーターvsバーニー論争のその後を考える(後編)」
今後の戦略論の中で重要なキーワードとなる「共有価値の創造(CSV)」について述べている。
「社会性」と「経済性」の両立を戦略論に取り入れることで、これまで営利の世界で閉じていた戦略論のフロンティアを拡張できる可能性がある。
かつて「社会性」の追求はリバタリアニズムの主張からは単に「コスト」とみなされた。
また既存の研究では、企業による「社会性投資」は本業とは無関係の慈善活動や寄付が対象で(「経済性との両立」研究としては)参考にならなかった。
しかし、社会性の高い企業ミッションと有力NGOの人脈や信頼を借りたことによって、社会性と経済性との間に相乗効果が生まれた事例を挙げている。
2006年スタンフォード大学ビジネススクールを卒業した2名が創業した企業「ディーライトデザイン」は、安定した電力アクセスがない地球上16億の人々の大半が使う明かりを「灯油(ケロシン)ランタン」からすべて「ソーラーランタン」に切り替える事業に取り組んだ。
インドでは成功したが、タンザニアでは販売網の構築が計画通りに進まず、自社販売を止め、NGOに販売を委ねた。
すると企業ミッションや製品の高い社会性とすでに人脈や信頼を獲得している有力NGOの力を借りたことで、社会性と経済性との間に相乗効果が発揮された。
「前編」において第1世代とされるポーターも「戦略と社会性の関わり」に関する論文を出している。
「本業が帯びる社会性が呼び込む外部経営資源とのリンケージ(シナジー)」が、本業の経済的業績をどれほど上げ得るかは、今後戦略論の重要な領域になる可能性があると指摘している。) - 資料9】入山章栄(早稲田大学ビジネススクール 准教授)『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2015年1月号』ダイヤモンド社 2014.
- キーワード
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- ジェイ・B.バーニー
- 経営戦略
- RBV リソース・ベースト・ビュー(経営資源に基づく企業観)
- ポジショニング派
- ケイパビリティ派
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000282840