レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017.7.27
- 登録日時
- 2017/07/27 15:11
- 更新日時
- 2017/09/28 17:26
- 提供館
- 京都市図書館 (2210023)
- 管理番号
- 右中-郷土-100
- 質問
-
解決
すぐき漬けについて詳しく知りたい。
- 回答
-
すぐき漬けは,京都市北区上賀茂地域の特産であるすぐき菜を,丸ごと塩だけで漬けたもので,乳酸発酵の酸味と甘味が凝縮された独特の風味を持つ,京都特産の漬けもののひとつです。
漬けものとしては珍しく,古い文献に名前を残しており,江戸初期の資料『日次紀事(ひなみきじ)』から“酸茎(すぐき)”という名が確認できます。
<起源>【資料1,5~7,11,13】
①上賀茂神社の社家が鳥射ちに出かけた際に,賀茂河原で自生している蕪に良く似た植物を裏庭に植栽したという,賀茂を原産とする説。
②京都御所に仕えていた上賀茂神社の社家が,宮中より種子を貰い受けて栽培したという,外来説。
<歴史>【資料3,4,13,14】
江戸期には,上賀茂神職の社家の屋敷内のみで栽培・加工し,自家用や武家の間で自慢の贈り物として珍重され,種などを他所へ持ち出すことは禁じられていました。
明治期より農家でも栽培が始まりました。明治26年(1893),上賀茂深泥池(みどろがいけ)地域の大火事後の復興対策事業として,すぐき菜の増産・商品化が奨励され,大正期の好景気によって一気に広まりました。
<製法>【資料2,8,9,12】
①10~11月頃にすぐき菜を収穫します。
②葉をつけたまま水洗いし,かぶら部分の皮を剥きます。
③樽にすぐき菜と塩を交互に漬け込み,1日程重圧を加えて漬けます。
④一度樽から出し,水洗いしたすぐきを再び樽に渦巻状に並べ,塩を交互に樽いっぱいになるまで漬け込みます。
⑤天秤の片側に重石をくくりつけた仕掛けで,強い圧力を加えて漬け込みます。
⑥漬け込む事でかさが減り,できた空間にすぐきを何度か追加します。
⑦追漬け後,藁で樽のふたの間を詰め,室(むろ)と呼ばれる密閉空間の中に入れ,発酵を促進させ完成です。
<写真>
●白黒写真・・・【資料1】【資料5】【資料6】【資料7】【資料12】【資料14】
●カラー写真・・【資料8】【資料9】【資料10】【資料15】【資料16】
- 回答プロセス
-
●“すぐき”で当館所蔵資料を検索。
【資料1】起源,栽培法が記載。天秤漬けの様子の白黒写真あり。
【資料2】漬け方について詳しい。
【資料3・4】酸茎が江戸期の様々な資料に掲載されていることについて詳しい。
●“蔬菜(そさい)”で当館所蔵資料を件名検索。
【資料5】起源,品種,気候,栽培法について詳しい。酸茎菜と天秤漬けの様子の白黒写真あり。
【資料6・7】スグキナ全般について非常に詳しい。スグキナ畑や漬け方の様子,「スグキの碑」の白黒写真あり。
●“漬物”で当館所蔵資料を件名検索。
【資料8・9・10】漬け方の詳細などが記載。
●Google Booksで“すぐき”を検索。
【資料11・12】すぐきの起源,漬け方などについて記載あり。
●国立国会図書館デジタルコレクションで“酸茎・すぐき”を検索。
【資料13】起源,呼称,栽培,販売の発展など非常に詳しい。
【資料14】歴史や京都内での販売法について詳しい。漬ける様子の白黒写真あり。
●“京野菜”で当館所蔵資料を検索。
【資料15・16】すぐきについてわかりやすく説明。カラー写真あり。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 蔬菜園芸 (626 9版)
- 食品.料理 (596 9版)
- 参考資料
-
- 【資料1】『京都市特産蔬菜第1輯』(森本 豊種/編輯 京都市農会 1934)p31~36「上賀茂の酢莖菜」
- 【資料2】『現代にいきづく京の伝統野菜 古都の食文化を担って』(菊池 昌治/著 誠文堂新光社 2006)p160~166「酸茎菜」
- 【資料3】『賀茂文化研究 第2号』(賀茂文化研究所 1993)p37~47「江戸時代後期の上賀茂に於ける酸茎及び瓜類等栽培の動静」
- 【資料4】『賀茂文化研究 第3号』(賀茂文化研究所 1994)p13~45「『賀茂社家日記』にみる酸茎の贈答慣習について」
- 【資料5】『京洛野菜風土記』(植木 敏弌/著 伊勢秀印刷所 1972)p54~63「酸茎菜(別名,里菜,貧乏菜)」
- 【資料6】『京野菜』(高嶋 四郎/文 淡交社 1982)p68~96「スグキナ(酸茎菜)」
- 【資料7】『京の伝統野菜と旬野菜 歳時記』(高嶋 四郎/編著 京の伝統野菜保存ミッション/編 トンボ出版 2003)p31~41「スグキナ(酸茎菜)」
- 【資料8】『京都の漬物 四季の材料と漬け方』(京都府立総合資料館/編 白川書院 1973)p30~33「スグキ漬」
- 【資料9】『京のつけもの 味わいと老舗ガイド』(淡交社 1993)p16~21「すぐき」
- 【資料10】『旬香彩菜 京つけもの歳時記』(石橋 郁子/文,宮野 正喜/写真 光村推古書院 2003)p54~64「すぐき」
- 【資料11】『京都 いのちの水』(京都新聞社 1983)p19~27「すぐきの里・社家」
- 【資料12】『京都味の手仕事』(京都新聞社 1984) p78~81「すぐき漬け なり田」
-
【資料13】『京都市近郊特産蔬菜作の変遷過程』(林 義雄/著 京都府立農業試験場 1963) p142~191「上賀茂における酸茎作の発展」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2502539(2017.7.27確認) -
【資料14】『京のつけもの』(真下 五一/著 真珠書院 1966)p35~48「すぐき」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2514201(2017.7.29確認) - 【資料15】『ほんまもん京野菜ガイドブック』(京のふるさと産品価格流通安定協会 [2006])p31~32「すぐき菜」
- 【資料16】『まるごと京野菜』(田中 大三/監修 青幻舎 2009)p64~65「すぐき菜」
- キーワード
-
- すぐき
- 酸茎
- 蔬菜
- 京野菜
- 漬物
- 上賀茂
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000219355