レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年08月09日
- 登録日時
- 2015/03/15 16:46
- 更新日時
- 2015/03/20 10:56
- 管理番号
- 千県中千葉-2015-4
- 質問
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解決
明治20年ごろの利根川の海運・交通について
夏目漱石の『木屑録』(ぼくせつろく)の文中において房総を旅した過程を追っている。銚子、三ツ堀(みつぼり)間は利根川の海運・交通(舟)を利用したとのことで、利根川の当時の海運・交通状況を把握できる資料等はあるか。
- 回答
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「利根川の海運、交通」関連の資料は次の通りです。
【資料1】『図説・川の上の近代 通運丸と関東の川蒸気船交通史』は近代の利根川関係の河川交通資料として比較的よくまとまっています。この本は平成19年開催の江東区中川船番所資料館・物流博物館・吉岡まちかど博物館3館における合同展「川の上の近代 川蒸気船とその時代」の展示解説図録です。とくに関東地方の蒸気船の代表的存在といえる内国通運会社の通運丸を中心に、蒸気船が各地の河岸に与えた影響や蒸気船による旅の様相をまとめています。明治20年頃の銚子、三ツ堀関連の河川交通についての記載を案内します。
・p112~127「明治期・関東地方における蒸気船交通史の概観-利根川流域を中心に-」という解説論文があり、p116「明治18年初頭、利根川流域航行蒸気船一覧」の表は航路、船名、定繋場(ていけいじょう)、定航地方などが掲載されています。定繋場-定航地方の組み合わせが「銚子」「三ツ堀」になっている船については下川航路で「銚子汽船」所有の「第1銚子丸」等、3種が掲載されています。
・p11「同盟関係の成立と航路の安定」の項で、「明治10年代後半の航運会社との競争を通じ、利根川水系では内国通運・銚子汽船・木下の吉岡家などによる同盟が成立します。明治20年代に入ると、主に江戸川・上利根方面は内国通運、下利根方面は銚子汽船・吉岡家という棲み分けが成立し、内国通運の航路も安定していきます。」と記載されています。
・p8は(通運丸の)「初期の航路延長(明治10年(1877)5月就航~同19年(1886)まで)」の表によると下利根霞ヶ浦方面に内国通運会社決算報告18年による、出発地が三ツ堀で終着地が銚子という項目があり、備考欄には「高田丸2艘購入により航路拡張」と記載されています。
・p12「通運丸の航路の変遷(明治20年以降)の項目で、
「明治21年(1888)の航路」に東京-鉾田・銚子線:汽船3艘
東京-鉾田、銚子間という航路の掲載があります。
・p68「蒸気船の旅」では「東京旅日記」という明治時代の老夫婦の10日間にわたる旅日記が紹介されています。ちょうど明治20年の1月24日に出発した旅での記録で、木下から三ツ堀に向かう途中の船中の様子が書かれているようです。
また、p69には「三ツ堀・今上巻の陸路連絡」に関する資料を見ることができます。
この他、関連記述の掲載資料を紹介します。
【資料2】『千葉県の歴史 通史編近現代1』には、「第1節房総の水運」の「1船が結ぶ東京都房総」「2 内陸の水運」p639~648の項目があり廻漕会社の設立や経緯、交通事情などが記述されています。三ツ堀銚子間の明治20年の状況についてはみつかりませんが、関連したものとしては、p644に、1884年に航路を東葛飾郡三ツ堀(野田市)に延長して下利根川は同盟汽船が、野田以南の江戸川は通運丸が航行したとの記述があります。また、p645に銚子-東京間の運賃は1888(明治21)年10月11日の『東海新報』によれば63銭で、上等は3割増しであったなどということや所要時間などが簡単に記述されています。
【資料3】『水郷汽船史 ふるさと文庫』のp15「通運丸航路開設一覧」という表では、「明治18.3.17」に三ツ堀~銚子間が増便されたことがわかります。また、p17の「銚子汽船会社の所有船舶及び航路」の表では、「明治16.8」に「銚子-三ツ堀」の便が開設された事がわかります。
【資料4】『新編・川蒸気通運丸物語 利根の外輪快速船』は、タイトル通り1冊が通運丸の資料を織り込んだ物語です。p14~15に「明治中期頃の通運丸航路図」が掲載されています。この図のはっきりとした制作年はわかりませんが、すでに利根運河の航路が記入されています。
また、【資料5】『内国通運株式会社発達史』については、所蔵がありませんが、国立国会図書館で所蔵されており、「デジタルコレクション」で本文をご覧になることができます。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/957641 (インターネット公開(保護期間満了))
この他、【資料6】『利根川汽船航路案内』、【資料7】『利根川ハイウェー 利根川水運の盛衰を探る』も明治時代の廻漕会社や水運の状況がよくわかります。
(インターネットの最終アクセス:2015年1月5日)
- 回答プロセス
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『千葉県の歴史』による「利根川の海運、交通」についての調査や、ブラウニングにより「通運丸」など具体的な調査対象を得る。
- 事前調査事項
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なし
- NDC
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- 交通史.事情 (682 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『図説・川の上の近代 通運丸と関東の川蒸気船交通史』(川蒸気合同展実行委員会 2007)(0200866647)
- 【資料2】『千葉県の歴史 通史編近現代1』(千葉県 2002)(0200785843)
- 【資料3】『水郷汽船史 ふるさと文庫』」(筑波書林 1984)(9200335882)
- 【資料4】『新編・川蒸気通運丸物語 利根の外輪快速船』(崙書房出版 2005)(0200807717)
- 【資料6】『利根川汽船航路案内』(崙書房 1972)(9200335846)
- 【資料7】『利根川ハイウェー 利根川水運の盛衰を探る』(千葉県立関宿城博物館 1996)(0200648933)
- キーワード
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- 千葉県-交通
- 水運
- 海運
- 蒸気船
- 汽船会社
- 利根川
- 通運丸
- 木屑録
- 夏目漱石
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000169062