レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20190117
- 登録日時
- 2019/03/26 00:30
- 更新日時
- 2021/02/25 11:04
- 管理番号
- 多摩-2018-03
- 質問
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解決
太宰治の小説「花火」は、雑誌の発行後、検閲を受けて削除されたらしい。
削除された日付、理由を知りたい。
- 回答
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まず、当該小説の掲載誌、発行年月等を確認する。
都立図書館蔵書検索でキーワード<太宰治 書誌>、NDC分類<9102 日本文学史・作家論>の条件で都立多摩図書館所蔵の図書を検索すると、太宰治の著作目録が掲載されている資料1及び資料2がヒットする。これらの資料から「花火」は、1942(昭和17)年10月1日『文芸』10巻10号のp.110-125に掲載されたことがわかる。
資料1には、太宰治の著作初出一覧が年代順に掲載されており、「花火」の項には「発行後、『戦時下に不良の事を書いたものを発表するのはどうか、といふので』全文削除された。」という記述がある(p.26)。
資料2には、太宰治の年譜が掲載されており、「昭和17年」の項に資料1とほぼ同様の記述がある(p.170)。
続いて、発禁や削除処分を受けた出版物を調べることができる資料3を確認する。p.966「昭和17年」の項に『文芸』が掲載されており、処分類別は「風俗禁止」、処分理由は「一般家庭人に対し悪影響」とある。
加えて、資料3の出典である資料4を確認すると「内地出版物取締状況」内の「風俗削除」の項(p.57)に、「花火」は「登場人物悉ク異状性格ノ所有者」であり、「全般的ニ考察シテ一般家庭人ニ対シ悪影響アルノミナラズ、不快極マルモノト認メラルル」ため、1942(昭和17)年10月8日に削除、とある。
また、CiNii Articlesでキーワード<太宰治 花火>で検索すると、関連記事がヒットする。(最終確認日:2019年2月3日)
その内、資料5の「発禁・近代文学誌」という特集のうち、p.106-110に「一般家庭人ニ対シ悪影響--太宰治『花火』」(安藤宏)が掲載されている。この記事では、「花火」の削除理由を「表面的には『善良なる風俗を害する事項』の違反に見えながら、現実には『共産主義の煽動』に関わる『安寧禁止』の容疑を微妙に含んでいた」と論じている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 出版 (023 9版)
- 小説.物語 (913 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】人物書誌大系7:太宰治 / 山内祥史/編 /日外アソシエーツ, 1983. <R/9102/タサイ>
- 【資料2】太宰治 / 山内祥史/著 / 桜楓社, 1970. <J028/D362/D35>
- 【資料3】昭和書籍雑誌新聞発禁年表 下/小田切秀雄/編 /明治文献資料刊行会, 1981.<R/ 0238/ シヨウ/ 3>
- 【資料4】出版警察報 複製版40巻 (144?149号(昭17.7?19.3)) /不二出版, 1981-1986.
- 【資料5】国文学 解釈と教材の研究 47巻 9号 通巻686号 (2002年7月臨時増刊)/学灯社
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000253711