レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019/05/06
- 登録日時
- 2019/08/07 00:30
- 更新日時
- 2019/08/09 00:30
- 管理番号
- 6001032785
- 質問
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解決
『中国学芸大事典』の「人虎伝」の項目に、『太平広記』や『古今説海』・『唐人説薈』・『唐代叢書』等に収められているが、「広記と説海とでは文に異同が見られる」(p.392)との記述があった。それぞれを読み比べてみたい。
- 回答
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調査の結果、『唐代叢書』は『唐人説薈』の別称であること、『太平広記』には「李徴」という題で収録されており、もとは『宣室志』に収められていたことがわかりました。また『古今説海』は未所蔵ですが、内容は『唐人説薈』所収の「人虎伝」とほぼ同一内容であると記している資料がありました。
収録資料は下記のとおりです。
1.『唐人説薈』(一名、『唐代叢書』)所収の「人虎伝」について
・『国訳漢文大成 文学部第12巻』(国民文庫刊行会/編集 国民文庫刊行会 1920.12)
p.495-507に読み下し文ならびに語注が、巻末の「唐代小説原文」のp.196-199に原文が収録されています。
なお、p.18に「『唐人説薈(せつわい)』(一名『唐代叢書』)中より」という出典の記載があります。
・『漢文名作選 4』(大修館書店 1984.10)
p.222-259 「人虎伝」の原文、読み下し文、現代語訳ならびに解説が収録されています。出典は、『唐人説薈』で一部文字を改めたところもあるとのことです。
解説には「『古今説海』と『唐人説薈』が収めるものは、ほぼ同じ文であるが、『太平広記』が収めるものは、「李徴」という題がつけられ、前の二書に比べると物語の中間部分が大分簡略である」と記されています(p.222)。また、『太平広記』に欠けている部分についての記述もあります(p.259)。
・『「孤独」の構造』(社本武/著 桜楓社 1984.10)
p.62-71 『国訳漢文大成』所載「人虎伝」の現代語訳が掲載されています。ただし、作中の漢詩は読み下しや現代語訳はされていません。
・『佐藤春夫と中国古典』(張文宏/著 和泉書院 2014.9)
p.239 「解題」には、「『唐人説薈』は『唐代叢書』とも言い、清代の陳蓮塘が編集した文言小説集のことである」と記されています。
p.241-248 『国訳漢文大成』所収の「人虎伝」の原文ならびに読み下し文が収録されています。
p.124-129 「李徴」と「人虎伝」を比較した一文が掲載されています。その中に「上尾龍介氏の「人虎伝と山月記」に拠れば、『古今説海』と『唐人説薈』所収の二つの「人虎伝」は、一字乃至二字の、字句の異同が見られるだけで、全文にわたって全く同一である」(p.124)との記述があります。また「李徴」と「人虎伝」の対照表が掲載されています(p.124-125)。なお、『太平広記』所収の「李徴」も収録されています。
2.『太平広記』・『宣室志』所収の「李徴」について
・『太平廣記 第9冊 : 巻第401至巻第449 新1版』(李昉/等編 中華書局 1961.9)
p.3476-3479 「李徴」の原文が収録されています。
・『中国古典小説選 6』(竹田晃/編 明治書院 2008.1)
p.370-388 『宣室志』所収の「李徴」の解説、現代語訳、原文、読み下し文が掲載されています。解説には、『古今説海』や『唐人説薈』には李景亮作とする「人虎伝」があり、ほぼ「李徴」と同じあらすじを持つものの「李徴」にはないエピソードがいくつか書かれている旨の記述があります(p.372)。
・『新釈漢文大系 44:唐代伝奇』(明治書院 1971.9)
p.174-187 原文、通釈、語釈が収録されています。なお作品名が「李徴」ではなく「人虎伝」となっているが、本文は『太平広記』より、作品名は『唐代叢書』に従った旨の記述があります(p.174-175)。
・『佐藤春夫と中国古典』(張文宏/著 和泉書院 2014.9)
p.248-255 『太平広記』所収の「李徴」の原文、現代語訳、語釈が収録されています。
[事例作成日:2019月5月6日]
- 回答プロセス
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留意点:回答のように出典によって『国訳漢文大成』と内容が異同することに注意が必要。
特に『新釈漢文大系』の場合、「本文は『太平広記』により、作品名および撰者については、『人虎伝』李景亮撰とする『古今説海』並びに『唐代叢書』の記載に従っておく」との記載あり(p.174-175)。
- 事前調査事項
- NDC
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- 小説.物語 (923 10版)
- 参考資料
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- 国訳漢文大成 文学部第12巻 国民文庫刊行会∥編集 国民文庫刊行会 1920 (495-502、196-199、18)
- 漢文名作選 4 大修館書店 1984.10 (222-259)
- 「孤独」の構造 社本/武∥著 桜楓社 1984.10 (62-71)
- 佐藤春夫と中国古典 張/文宏‖著 和泉書院 2014.9 (124-129,241-248、248-)
- 太平廣記 第9冊 : 巻第401至巻第449 新1版 李昉∥等編 中華書局 1961.9 (3476-3479)
- 中国古典小説選 6 竹田/晃∥編 明治書院 2008.1 (370-388)
- 新釈漢文大系 44 明治書院 1971.9
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000259845