レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20100611
- 登録日時
- 2010/07/22 02:01
- 更新日時
- 2010/07/30 19:49
- 管理番号
- B100603114036-1
- 質問
-
解決
屋形船の構造について書いてある文献があれば教えて下さい。
- 回答
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ご照会の事項について以下の通り回答します(【 】内は当館請求記号です)。
当館NDL-OPAC(http://opac.ndl.go.jp/)の書誌検索(一般)と雑誌記事索引において、キーワードを「屋形船」、「川船」、「納涼船」、「和船」、「日本の船」、「船舶」、「客船」、「造船」、「船大工」、「船 構造」、「船 遊び」として検索した結果のうち、ご照会の事項に関係すると思われる資料を調査したところ、以下の記述がありました。
(1)『近世日本の川船研究 : 近世河川水運史. 上』(川名登 日本経済評論社 2003.12 【DK175-H10】)
「第十一章 関東川船の支配と構造」の「二 関東川船の構造と名称」(pp.439-452)では、後述の資料(2)『船鑑』という古文書に収録されている船図をもとに、屋形船を含む各種の船の推進具、梶、船首の構造、船側面の構造、世事・櫓、船の大きさについて分類・整理されています。
「附図 諸船船図」(pp.455-487)では、『船鑑』に採録されている船の構造図に、船の各部の名称が図のどの部分に当たるのかわかるように対照させてあり、屋形船(p.458)の図も掲載されています。
「第六章 利根川水系の川船」の「二 川船の規模」(pp.227-236)では、船体の寸法(pp.227-232)、積載量(pp.232-234)、年貢・役銀高(pp.234-235)に分けて、屋形船を含む川船の規模について記述されています。
「第九章 荒川・元荒川・綾瀬川の水運と川船」の「まとめにかえて」(pp.389-391)では「初めは艜船や高瀬船を用いて貨客混載の乗合船であったが、その後旅人専用の屋形船が現われてくる」(p.390)との記述があります。この「高瀬船」は、「第六章 利根川水系の川船」の「三 各種の川船」の中の「1 高瀬船」(pp.236-254)において、構造上の特色、船の長さ、横巾、深さ、石や俵による積載量、年貢高、乗員数、帆、耐用年数について記述されています。また、「艜船」は、「第六章 利根川水系の川船」の「三 各種の川船」の中の「2 艜船」(pp.254-263)において、構造上の特色、長さ、横巾、深さ、石や俵による積載量、年貢高について記述されています。
(2)『船鑑』(写 明治6(1873) 【寄別3-2-3-2】)
資料(1)によれば、「『船鑑』は、徳川幕府川船奉行の下の川船役所が作成したものと云われている」(資料(1) p.442)古文書で、「和船の描かれた三十三枚の図面から成り、そこには彩色された詳細は船の構造図に各部分の名称が記入され、船の上口(舳棧蓋より艫床まで)の長さ、横巾、大凡の所在地、船の別称・俗称等が記されており、この書に採録された船の種類は、なんと四十六種にも及んでいる。」(資料(1) p.439)と記述されています。なお、当館所蔵の『船鑑』は、当館の「貴重書画像データベースシステム」(http://rarebook.ndl.go.jp/pre/servlet/pre_com_menu.jsp)の簡単検索で、キーワードを「船鑑」として検索することでご覧いただけます。屋形船は6/45ページにあります。
(3)『図説和船史話』(石井謙治 至誠堂 1983.7 【NC51-60】)
「19 川御座船」(pp.235-240)において、河川で大名が使用した豪華な御座船について、船型や構造、寸法、内装などが図面を用いて説明されています。また、平安時代の貴族用の豪華な屋形船についての記述(p.235)もあり、船体の構造のひとつである「二瓦」については資料(3)の「第二編 和船拾遺 第一章 和船の船型名称」の「1 二瓦」(pp.144-148)で説明されています。
資料(1)で紹介した艜船と高瀬舟について、資料(3)の「第一編 和船の変遷 第七章 近世の廻船 2 近世後期の廻船」内の「3 川船」(pp.119-122)において、基本構造、船型の呼称と船の形式の関係、主要寸法、居室、艤装、航法について写真とともに説明されています。また、「第二編 和船拾遺 第一章 和船の船型名称」の「16 高瀬船」(pp.223-229)に、構造、外形の形状、板合わせ、世事(船頭・水主の居室兼炊事場)、平安時代から近世までの寸法の変遷について図と写真とともに説明されています。
貴館調査済の『東京屋形船あそび』(青幻舎 2004.7 【Y77-H4782】)のp.37に記載されている御座船については、資料(3)の「4 天地丸」(pp.262-266)において、徳川幕府の海御座船「天地丸」の主要寸法、構造、外観上の特徴的な形式について図と写真とともに説明されています。また、屋形の装飾については、同じ項目の中で細川藩の海御座船「波奈之丸」の床の間や柱、敷居、鴨居の塗り、飾り、障壁画について、内部の写真を付して説明されています。
(4)『和船・お伽話と鉄・屈原・岩手の鉄文化』(菅井但俊ほか著、日本の鉱物と地名研究所編 揺籃社 2000.7 【NC64-G119】)
菅井但俊著「和船探求覚之書」の「九、利根川高瀬船と利根川水系の船」(pp.62-71)、「十、高瀬船の名称の舟船」(pp.72-76)、「十一、和船(二)屋形船と川開き」(pp.77-83)において、各船の用途や大きさ、構造、内装、船の航法などについての説明があり、それぞれに図が付してあります。船大工の使っている言葉についても記述があります。
(5)平山造船所「49GT型軽合金製屋形船「第一濱新丸」」(『舟艇技報』pp.24-27 (94) [2008.3]【Z16-B199】)
平成19年3月に起工し、同年10月に進水・引き渡しとなった「第一濱新丸」という屋形船について、船の全長や幅、総トン数などの主要要目、一般配置、船体構造客室設備、機関部、電気部、海上試運転の成績についての記述があります。
(6) 『船大工考』(山田佑平 1993.2 【NC54-E15】)
(7)『大田区の船大工:海苔の船を造る』(大田区立郷土博物館編 大田区立郷土博物館 1996.9 【GD11-G22】)
資料(6)と(7)はいずれも屋形船に特化したものではありませんが、製図図面なしに和船を造り上げていく船大工の技を記録として残すべく書かれた書で、どちらも部材の加工や仕様書、構造図、寸法表、船釘、船大工の道具などについて詳細に記されています。
調査済資料
・『近世日本の川船研究 : 近世河川水運史. 下』(川名登著 日本経済評論社 2005.3 【DK175-H21】)
・『利根川・江戸川水系の川船調査報告書. 1』(千葉県立関宿城博物館編 千葉県立関宿城博物館 2004.3 【DK175-H15】)
・『特別展 江戸の和船 : その生活と文化』(大田区立郷土博物館 1980 【NC51-49】)
・『重要文化財阿波藩御召鯨船千山丸』(和船文化・技術研究会編 船の科学館 2004.5 【NC51-H43】)
・『船をつくる、つたえる : 和船建造技術を後世に伝える会調査報告書』(和船建造技術を後世に伝える会 2005.3 【DL442-H41】)
・『木造和船の造船可能性調査報告書』(東海水産科学協会海の博物館 2005.5 【DL442-H43】)
・『日本の船. 和船編』(安達裕之著 日本海事科学振興財団船の科学館編 1998.3 【NC64-G27】)
・『昭和船舶史 : 幕末から現代まで100年の航跡』(毎日新聞社 1980.5 【NC51-47】)
・『日本客船総覧 : いとおしき、内航客船たち』(森田裕一 1989.2 【NC64-G127】)
・「もうひとつの日本への旅」川田順造(『望星』 (通号475) 39 (12) 2008 【Z7-521】)
・「和船の変遷」石井謙治(『法政史学』 pp.97-112 (通号 111) 1972.12 【Z8-109】)
・「近世関東における川船の管理統制」松村安一(『大正大學研究紀要. 佛教學部・文學部』pp.85-110 (通号 64) 1978.11 【Z9-196】)
・「関東における川船支配政策の展開--年貢・役銀増徴策を中心として」丹治健蔵(『海事史研究』 (通号 14) 1970.04 pp.1-46 【Z5-8】)
・「幕末維新期関東における川船統制--年貢・役銀徴収制の近代化過程」丹治健蔵(『海事史研究』 (通号 15) 1970.10 pp. 104-135 【Z5-8】)
・「川船奉行の廃止と享保改革」川名登(『日本歴史』 (通号 267) 1970.08 pp. 15~32 【Z5-8】)
インターネットの最終アクセス日は2010年6月15日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・『和船Ⅱ ものと人間の文化史76-2』石井謙治(法政大学出版局 1995)
・『Ⅳ章:船の名称と船型...川船』の「5>屋形船」206~210ページ、「6>屋根船」210~213ページ
・『東京屋形船あそび』
・『浦安・海に抱かれた町 聞き書きと人と暮らし』(三谷紀美/著 筑摩書房 1995)
- NDC
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- 船体構造.材料.施工 (552)
- 参考資料
- キーワード
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- 屋形船
- 楼船
- 船舶
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000069409