レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年02月22日
- 登録日時
- 2018/12/25 15:09
- 更新日時
- 2019/01/15 08:54
- 管理番号
- 相-180001
- 質問
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解決
大乗仏教の如来像などの眉間には『白毫』があり、チベット密教の如来像などの眉間には『第三の眼』がある。これらはそれぞれ歴史上いつ表現され、典拠とされたものは何で、その意味や働きは何か、理解出来る資料を紹介してほしい。後者の呼称はチベット語でどう言っており、意味は『第三の目』であるか確かめてほしい。
- 回答
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次の資料を紹介しました。
〇「白毫」について
・『仏像 その意味と歴史と美しさについて』町田甲一著 実業之日本社 1982
p.14-16「仏像の出現」の項では「(略)仏像はいつごろ、どのようにして生れてきたのであろうか。その時期は紀元一世紀のころ」とありますが「中インドのマトゥラーでは、(略)二世紀に入って初めて仏像が出現した」と記述されています。P.17-20では「仏、菩薩の姿」が立項されており、「仏の三十二相について記す経典は少なくないが、その各相について説明をつけている『大智度論』(第四)という経典によって、三十二相の中で具体的に表現し得るもの(中略)を、あげると次のようなものである。」として「第三十二相 白毫相 眉間に白毛が右旋する。」とあります。
・『佛像の起源』高田修著 岩波書店 1967
p.238「白毫と口髭」が立項されており、「『佛本行集經』に「眉間白毫右旋宛具足柔軟清浄光鮮」とあるなど(略)インド起源のものであるに相違ない。」と記述されています。
・『中村元選集 第23巻 決定版 仏教美術に生きる理想 大乗仏教Ⅳ』中村元著 春秋社 1995
「第五章 仏像崇拝の諸相」のp.306~334「二 ブッダの三十二相」において、パーリ文聖典の説明を漢訳「大本経」と対照して記述しています。P.324-325「(略)この白毫と両眼とを合わせるとシヴァ神の三眼に似てくる。さらに白毫が光を放つということがあるが、シヴァも第三の眼から光を放って他の人を焼くということがある。(略)後代のヨーガでは、額のところにアージニャー・チャクラ(ājñā‐cakra)があるという。しかしこれは後代のヨーガでのべることであり、仏典には出ていない」との記述があります。
・『印度學佛教學研究』40巻第1号1991 日本印度仏教学会 p.1-11「仏典における白毫相」福原隆善著では「三十二相八十種好が具わるといわれる仏陀のすがたのうち、とくに眉間白毫相の一相にしぼって、仏教史上、どのようにとらえられていったかを明らかにしたい。」との観点から執筆されており、『阿含経』、部派仏典、大乗経典など様々な仏典における白毫相について記述されています。
なお、こちらの論文はJ-STAGE(日本の科学技術情報の電子ジャーナルを無料公開するシステム)にて全文公開されています。
(https://doi.org/10.4259/ibk.40.1)
(インターネット情報 2018/12/24 最終確認)
・『往生要集研究』往生要集研究会編 永田文昌堂 1987
p.407-433「三昧経典と『往生要集』」大南龍昇著 において、白毫観に関する記述があります。
〇「第三の眼」について
・『中村元選集 第30巻 決定版 ヒンドゥ-教と叙事詩』中村元著 春秋社 1996
「第二編 叙事詩と神話」、「第四章 叙事詩の神々」のp.418-427「(五)シヴァ」によると、シヴァの妻ウマー(Umā)が戯れにシヴァの眼を塞いだところ「世界は完全な暗黒に陥り、人々は恐怖におののき、一切の生命は消滅したかのごとくであった。そこで世界を救うために、この時シヴァ神の額の上に第三の眼が閃き出たという」とあります。典拠として『マハーバーラタMahābhārata』が挙げられています。
同様の解説は『インド学大事典 第2巻』L・ルヌ-ほか著 山本智教訳 金花舎 1979の、p.134にも記述があります。
・『佛教大辭彙 第三巻』龍谷大学編 冨山房 1973
p.1762に「サンモク 三目」が立項されており、「(前略)密教の忿怒部諸尊中には三目を有するもの甚だ多し。或は之を説きて佛眼・法眼・慧眼の三とし、又は三界を照見して三品の悉地を施興するの義、三部・三諦を表する義、不縦不横の義等の秘釋あり。」とあります。
・『密教仏の研究』頼富本宏著 法蔵館 1990
p.633~642「第2部 美術遺品からみた密教仏 第2章 密教系書尊像について 第4節 インドの不空羂索観音像」のp.637「§6 不空羂索観音の図像的特色」に「(前略)額中の第三眼は、『大智度論』にも大自在天の特徴とされているように、シヴァ神の基本イメージの一つである。(中略)もっとも、具体的造像の場合は、ネパールの金銅仏、インドの石像に見られるように。第三眼を持たないものも少なくない」との記述があります。
『密教辞典』佐和隆研編 法蔵館 1975
p.489~490の「ためん・たひ-ぞう(多面多臂像)」の項に「(前略)これらはその尊の持つ能力を表徴したもので、衆生救済に直接関連のある観音部と明王部、次いで天部に多い。観音の三十三身の考え方と、インド諸神の系統に由来する。(中略)また別に多目(多くは三目として、前面額中央に縦に付ける)もまた、その尊の功能を表現したもので、仏教の多神教的性格は、元来が抱擁性に富むためで、その土地の事情に融合する本地垂迹(神仏習合)の思想とも関係する。」と記述があります。
・『印度學佛教學研究』63巻第1号 2014 日本印度仏教学会 p.258-266「東寺の立体曼荼羅の構想」真鍋俊照著によると「『仁王経』に基づいて作画された「五大菩薩像」(三幅)のうちの大幅の「金剛孔菩薩の正面像」である。顔相は大きな両眼をかっと見開き、第三眼も描き込み」とあり、「「五大力菩薩像」は平安時代後期(十一世紀)の作画」との記述があります。
なお、こちらの論文はJ-STAGEにて全文公開されています。
(https://doi.org/10.4259/ibk.63.1_258)
(インターネット情報 2018/12/24 最終確認)
なお、「第三の眼」をチベット語で表現している資料は見つかりませんでした。
・『ニューエクスプレス チベット語』星泉、ケルサン・タウワ著 白泉社 2017<829.32/4>(22923254)のp.104「数詞(序数)」として「第3 ̄sumpa(スムパ)」の記載があります。
- 回答プロセス
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〇当館OPACにて「如来」「仏像」で検索し、ヒットした資料のある棚をブラウジング
→目次・索引を見て、質問に合致すると思われる資料を抽出。
〇仏教関係の辞典類を調査。
〇インターネットで「白毫」「第三の眼」をキーワードとして検索し、典拠資料を当館OPACで検索した。
- 事前調査事項
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なし
- NDC
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- 仏教 (180 9版)
- 芸術史.美術史 (702 9版)
- 仏像 (718 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 仏像
- 白毫
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000249278