次の資料に記述を確認しました。
1 県内のよしず製造の歴史について
『栃木県民俗事典』(尾島利雄/著,下野民俗研究会/編 下野新聞社 1990)に「ヨシズ(よしず)」の項(p.397-398)があり、次のとおり記されています。
「県南端・渡良瀬川遊水地内に自生する葭を刈取り、日よけ・霜よけ用のすだれを編んだもの。主としてこの周辺の旧谷中村から移住した藤岡町・野木町・小山市の農家の副業となっている。近世後期に領主・土井利亨が恵下野村(旧谷中村)でアジロとヨシズ編みをさせたのが起こりとされている。(後略)」
これをもとに関連資料をお調べたところ、次の資料に関連記述を確認しました。
それぞれ製造されるようになった時期、背景等について記されています。
・『栃木県の手仕事』(栃木県立郷土資料館/編、発行 1977)
p.94-99「Ⅱ.農家の副業として行われている手仕事 (1)ヨシズ」
・『藤岡町史 別巻 民俗』(藤岡町史編さん委員会/編 藤岡町 2001)
p.96-101「生産・生業」の章に「五 ヨシズ編み」の項あり。
・『野木町史 民俗編』(野木町史編さん委員会/編 野木町 1988)
p.127-133「第3章 いろいろな仕事と交通 5 ヨシズ編み」
・『小山市史 民俗編』(小山市史編さん委員会/編 小山市 1978)
p.131-134「第3章 生産・生業 1 農林業 (3)副業 イ.ヨシズ」
・『古河市史 民俗編』(古河市史編さん委員会/編 古河市 1983)
p.336‐337「第1章 農業と漁業 Ⅱ.経済伝承 (6)副業の諸相」に「ヨシズ編み」の項あり。
渡良瀬川流域の生業として、本県に関する記述があります。
2 日本国内のよしず製造の歴史について
事典類を中心に記述を確認しました。いずれも定義、形態の説明のみで起源等は記述されておりません。
・『日本民具辞典』(日本民具学会/編 ぎょうせい 1997)
p.591「よしず【葦簀】」
・『絵引民具の事典』(工藤員功/編,中林啓治/作画,岩井宏實/監修 河出書房新社 2008)
p.213「よしず【葦簀】」
なお、以下の資料では、葦簀(よしず)と簾(すだれ)を同一の起源のものと捉えています。
・『日本の家 空間・記憶・言葉』(中川武/著 TOTO出版 2002)
p.70-78「葦簀」
日本建築史をテーマにした読み物です。本文中で、葦簀は簾(すだれ)とも呼ばれると述べ、平安時代の内裏や寝殿造り、牛車に用いられた御簾を古代の使用例として紹介しています。
簾(すだれ)については、以下の資料から起源に関する記述を確認しました。
・『ヴィジュアル〈もの〉と日本人の文化誌』(秋山忠弥/著 雄山閣出版 1997)
p.133-137「簾」
中国伝来で、万葉集に詠まれており万葉時代の使用が伺えること、平安時代の王朝住宅の調度品として欠かせないものであること等が記されています。
・『事物起源辞典 衣食住編』(朝倉治彦/〔ほか〕編 東京堂出版 2001)
p.196-197「簾(すだれ)」
前出の資料同様に、中国由来と思われること、万葉集を根拠に日本では奈良時代からの使用が伺われること、京都でつくられていたこと等が記されています。
3 その他
次の資料からは記述を確認できませんでした。
・『愛編む民具』(栃木県立博物館/編 栃木県立博物館 1993)
・『下野の民具 1』(栃木県立郷土資料館/編 栃木県教育委員会 1975)
・『下野の民具 2』(栃木県立郷土資料館/編 栃木県教育委員会 1976)
・『全国の伝承江戸時代人づくり風土記 聞き書きによる知恵シリーズ 9』(加藤秀俊〔ほか〕/編 農山漁村文化協会 1989)