レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20050329
- 登録日時
- 2005/12/01 02:11
- 更新日時
- 2005/12/01 18:31
- 管理番号
- B2005F0202
- 質問
-
未解決
日本近海に押し寄せる大型クラゲに対して、1922年に岸上鎌吉が新種としてエチゼンクラゲ Nemopilema nomurai KISHINOUYEと登録した。しかし、1952年以降の出版物では、Stomolophus nomurai (KISHINOUYE)と属名が変更されている。属名を変更した文献とその著者を知りたい。
- 回答
-
ご依頼の事項を調査するために、当館NDL-OPACの雑誌記事索引を「エチゼンクラゲ」で検索したところ、下記(1)の文献の「和名と学名の由来」(p.9)に、学名を 'Stomolophus nomurai(Kishinouye)' として紹介した論文(下記(2))の記述が以下のようにありました。
和名と学名の由来
このクラゲは、1920年に福井県高浜町音海の大型定置網に入った個体が,東京帝大の岸上鎌吉博士によって初めて詳しく調べられ、2年後に、新属新種、エチゼンクラゲNemopilema nomurai Kishinouyeとして発表されました。この和名は、越前地方(福井県)の名に由来して命名され、学名の種小名nomuraiは、標本を送付した野村貫一氏に捧げられたものです(岸上,1922)。その後、本種は学名をStomolophus nomurai(Kishinouye)として、一般の動物図鑑等に紹介されたり(Uchida, 1954)、一時は、砲弾クラゲと呼ばれた別種S.meleagrisのシノニムとされたこともありましたが(Kramp, 1961)、最近東京水産大学(現東京海洋大学)名誉教授の大森信博士らによって、再度分類学的な検討がなされた結果、元のN. nomuraiにもどすべきことが提唱されたので(Omori & Kitamura, 2004)、今後は、本種の学名としてこれを用いるべきでしょう。
(1) 安田徹:近年大量出現した巨大エチゼンクラゲ
(『うみうし通信』45 2004.12 pp.9-11 当館請求記号 Z18-B152)
(2) Uchida, Tohru: Distribution of Scyphomedusae in Japanese and its Adjacent Waters
(Journal of the Faculty of Science, Hokkaido University. Ser.6, Zoology 12(1-2)
1954.12 pp.209-219)
当該雑誌は国立国会図書館関西館で所蔵(当館館請求記号 Z53-C169)していますが、
上記論文を掲載するVol.12 no.1-2については欠号となっていますので、どのように記述されて
いるかについては確認ができませんでした。NACSIS Webcat (http://webcat.nii.ac.jp/)を
検索したところ、当該号を東北大附属図書館医学分館、北青葉山分館、などでも所蔵して
いるようです。
なお、ご参考までに「和名と学名の由来」で引用されている3論文(岸上,1922、 Kramp, 1961、 Omori and Kitamura, 2004)について、「参考文献」(p.11)の記載を転記いたします。
・ 岸上鎌吉 1922. 動物学雑誌,34:343-346.
・ Kramp, P. L. 1961. J. Mar. Biol. Ass, U. K., 40: 1-469.
・ Omori, M. & M. Kitamura, 2004. Plankton Biol. Ecol., 51: 36-51
また、貴館調査済み資料に加えて、『魚類レファレンス事典』(日外アソシエーツ編集部編 日外アソシエーツ 2004 1332p 当館請求記号RA2-H36)の「エチゼンクラゲ」(p.154)の見出しに掲載の下記の事典類を調査いたしましたが、属名の変更についての記述は見当たりませんでした。
(3)『原色検索日本海岸動物図鑑 1』西村三郎編著 大阪 保育社 1992 425p
(当館請求記号RA6-E39) p.68
(4)『大百科事典 第2巻』平凡社編 平凡社 1952 1274p (当館請求記号031-D15-H(s) ) p.242
(5)『日本大百科全書 3』小学館 1985 939p (当館請求記号UR1-96) p.523
上記資料(1)~(5)は、(2)を除きすべて国立国会図書館東京本館で所蔵しています。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・Nemopilema nomurai KISHINOUYEとしている文献
岸上鎌吉 1922 「エチゼンクラゲ」 動物学雑誌 34巻: 343-346
内田 亨 1936 「日本の動物分類 鉢水母綱」 第3巻第2編 三省堂
安田 徹 2003 「海のUFOクラゲ 発生・生態・対策」 厚生閣
・Stomolophus nomurai (KISHINOUYE)としている文献
谷津直秀 1952 「動物分類表 第7版」 丸善
下村敏正 1958 「1958年秋、・・の発生について」 日水研研報7: 85-107
内田 亨 1961 「生物系統分類学2」 中山書店
岡田 要 1965 「新日本動物図鑑」 北隆館
山路 勇 1967 「日本海洋プランクトン」 保育社
椎野季雄 1970 「水産無脊椎動物学」 培風館
内田 亨 1970 「現代生物学体系1巻」 中山書店
内海富士夫 1996 「海岸動物」 保育社
- NDC
-
- 無脊椎動物 (483 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 生物学
- 動物
- 無脊椎動物
- 腔腸動物
- くらげ
- エチゼンクラゲ
- 属名
- 学名
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 大学図書館
- 登録番号
- 1000025121