レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2007年01月18日
- 登録日時
- 2007/02/06 11:37
- 更新日時
- 2010/11/03 10:38
- 管理番号
- 福井県図-20070127
- 質問
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未解決
戦後発行された『石川県史』の、「古代編」にあたる巻を貸して欲しい。
利用者が以前、振媛(継体天皇の母)の出生地が江沼郡(石川県)であることを示すような考古学資料が発掘されたという情報を聞いた。そのことに触れられている資料を探している。
- 回答
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1.『石川県史』は、戦後発行されていません。戦後発行されている、『石川県史料』が取り扱う時代は、近代以降です。そのほか、『石川県史資料』も発行されていますが、お探しのような古代編は発行されていません。
2.振媛の故郷について論じられた論文「振媛の桑梓」米沢康/著(『日本古代の神話と歴史』米沢康著 1992.12 吉川弘文館 210.3/ヨネサ 資料コード:1013174964)を読みましたが、本文、参考文献など振媛と江沼郡とが関わるような記述はありません。
3.『石川県の歴史』高澤裕一〔ほか〕著 2000.3 山川出版社(県史 17)(214.3/イシカ)には、p.39「江沼氏は、木場潟・柴山潟・今江潟の湖沼周辺を舞台に成長した豪族である。河内王朝が途絶えた後六世紀初めに大王となる男弟王(継体)の母方氏族、近江の三尾君と姻戚関係にあった。」との表記があります。振媛生誕に関する記述はありません。
4.『福井県史』通史編 1 p.167~ に、以下のような記述があります。(コメントにより、近畿大学様からご教示いただきました)
【引用】継体天皇の母振媛は、『紀』では三国の坂中井の高向、『上宮記』では三国坂井県の多加牟久村の出身と記されている。高向(多加牟久村)は、現在の丸岡町の一部をなす旧高椋村に該当しよう。(中略)三国については古くから「水国」を意味するとする説と、「三つの国」を指すとの両説があったが、「三つの国」と理解した方が正しいと思われる。(中略)しかしながら「三つの国」がのちの律令制下の郡でいう坂井・足羽・丹生、坂井・大野・足羽、または坂井・江沼・足羽のいずれと考えるべきかは、まだ議論の余地がある。
『上宮記』に「祖にまします三国命」という記載がある。(中略)三国命は振媛の母であるアナニヒメ(原文漢字)をさしている可能性が強い。アナニヒメは余奴臣の祖であり、「余奴」は「与野評」と記された墨書土器などからエヌ(江沼)と訓む説が強いので(第四章第一節)、三国は江沼・坂井・足羽の三郡をさすという説に若干の根拠を与えることになる。【ここまで引用】
p.313~
【引用】隣の石川県小松市南方に広がる丘陵地帯にある、那谷金比羅山で見つかった須恵器を焼く窯跡から、昭和五九年に注目すべき文字をヘラ書きした土器が出土した。(中略)窯跡の所在地は律令制の行政区間では江沼郡内にあるが、第一行目の「与野評」は江沼郡の前身である。(中略)ここで思い起こされるのは、『釈日本紀』に引く『上宮記』に「一に云わく」としてみえる継体天皇の母方の祖母を「余奴臣」の祖とする点である。【ここまで引用】
なお、福井県史については、福井県文書館のホームページから、本文をご確認いただけます。http://www.archives.pref.fukui.jp/fukui/digitalarc.html
5.「与野評」と書かれた墨書土器が出土した遺跡の発掘調査報告書は、『県営ほ場整備事業・県営公害防除特別土地改良事業関係埋蔵文化財調査概要』昭和59年度 石川県立埋蔵文化財センター 1985.3 石川県立埋蔵文化財センター(石川県立図書館所蔵)です。
6.『書府太郎:石川県大百科事典』上巻 北国新聞社/編 2004.11 北国新聞社 (031/イ 1014613887)には、以下のような記述があります。
継体天皇 の項目p.76「継体の母、布利比売の父方の祖は、偉波都久和希という人物であるが、垂仁天皇の皇子磐衝別命に相当し、能登の羽咋君の祖とされている。また母方の祖母は余奴臣祖阿那爾比売であるが、余奴臣とは江沼臣にあたる。」
羽咋君 の項目p.388「『釈日本紀』所引の「上宮記」逸文によれば、垂仁天皇の皇子偉波都久和希(石衝別)の子孫が余奴臣(江沼臣)の祖を娶って、継体の母、比布利比売命(振媛)を生んだと記しており、継体出自伝承にも明記されてはいないが、羽咋君の祖が影を落としている。」
- 回答プロセス
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1.自館書庫で石川県の遺跡発掘調査報告書を探し、質問館に送付した。
・『石川県遺跡地名表』昭和37年度 1963.3 石川県教育委員会(214.3/イ 1010759601)
・『石川県遺跡発掘資料集』no.1(合冊本)(214.3/イ 1010782892),no.2(合冊本)(214.3/イ 1010782900)
・『石川県出土文字資料集成』1997.3 石川県埋蔵文化財保存協会(214.3/イシカ 1018198984)
・『北陸の古代史』橋本澄夫/著 1974.11 中日新聞北陸本社(210.3/H4/1A 1010812830)
2.CiNiiで「振媛」「江沼郡」を検索→該当しそうなものはない。
3.NDL-OPACで「振媛」を検索→CiNii以上の結果は得られない。
4.MAGAZINE Plus で「振媛」を検索→『継体王朝』森浩一/編 2000.12 大巧社(第7回春日井シンポジウム)(H213/K10/1A 1049185448)に、「継体大王の母・振媛の里・三国(第1部 継体の出自と系譜 基調発表)」青木豊昭/著 が所収されている。
5.自館OPACで「振媛」を検索→論文「振媛の桑梓」を発見。書籍『日本古代の神話と歴史』米沢康/著 1992.5 吉川弘文館(210.3/ヨネサ1013174964)
6.石川県立図書館蔵書検索システムで「遺跡調査報告」を検索→石川県内分を紹介。
7.コメントにより、近畿大学様から『福井県史』に関連記述がある旨ご教示いただいたので、該当個所を確認。振媛の母「アナニヒメ」(余奴臣の祖)に関わる「与野評」と記された墨書土器が、昭和59年に石川県小松市南方に広がる丘陵地帯にある、那谷金比羅山から出土されたという記述を元に、『石川県出土文字資料集成』1997.3 石川県埋蔵文化財保存協会(214.3/イシカ)を確認。当該遺跡の調査報告書が『県営ほ場整備事業・県営公害防除特別土地改良事業関係埋蔵文化財調査概要』昭和59年度 1985.3 石川県立埋蔵文化財センターであることがわかった。石川県立図書館蔵書検索システムで、所蔵を確認→質問館に連絡した。
8.『書府太郎:石川県大百科事典』上巻 北国新聞社/編 2004.11 北国新聞社 (031/イ 1014613887)を見た。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210)
- 参考資料
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- 『石川県出土文字資料集成』1997.3 石川県埋蔵文化財保存協会 (214.3/イシカ 1018198984)
- 『書府太郎:石川県大百科事典』上巻 北国新聞社/編 2004.11 北国新聞社 (031/イ 1014613887)
- キーワード
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- 振媛
- 継体天皇
- 石川県江沼郡
- 照会先
- 寄与者
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- 近畿大学
- 備考
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平成19(2007)年は、継体天皇即位1500周年です。これにあわせ、継体天皇、その母振媛に関する質問が多く寄せられています。しかし、この質問はお受けするのが初めてで、また情報も乏しいものです。何かご存知の方いらっしゃいましたら、福井県立図書館までご教示ください。
また、福井県と継体天皇のかかわりについては、
『継体大王と越の国・福井』http://info.pref.fukui.jp/keitaidaio/
をご参照ください。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000033182