レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/8/22
- 登録日時
- 2017/09/27 17:02
- 更新日時
- 2018/02/11 09:37
- 管理番号
- 島根参2017-08-005
- 質問
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解決
戦後の日本で人工甘味料として使われていた「ズルチン」について、成分や特徴、使用禁止となった経緯が書かれた資料はないか。
- 回答
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当館所蔵資料から以下の記述を紹介。
【資料1】 『平凡社大百科事典 8』 (平凡社)
p215 「ズルチン dulcin」
合成甘味料の一種。 パラエトキシフェニル尿素 p-ethoxyphenyl-urea ともいう。ショ糖の約200~300倍の甘みを有するが、動物実験で発癌性がはっきりしたので、日本では1968年に使用禁止となった。 合成法が容易で安価であったことから、日本では第2次世界大戦後の砂糖不足の時代に甘味料として大きい役割を果たした。
【資料2】 『世界大百科事典 15』 (平凡社)
p213 「ズルチン dulcin」 記載内容は 【資料1】 と同じ。
【資料3】 『日本大百科全書 13』 (小学館)
p235 「ズルチン dulcin」
特徴、合成法について、 【資料1・2】よりやや詳しい記載あり。
日本では食品添加物として1948年 (昭和23) に許可されたが、毒性が強いことから、67年には10品目に限り制限付きで使用が認められ、69年に全面使用禁止となった。
【資料4】 『丸善食品総合辞典』 (丸善 1998)
p590 「ズルチン dulcin」
β-エトキシフェニルウレアともいう。 合成甘味料の一種。
ショ糖の200倍の甘みをもち、サッカリンとならんだ代表的な合成甘味料として第二次大戦後の日本で広く使用されたが、安全性の問題から1968年に使用禁止となった。
【資料5】 『食品大事典』 (真珠書院 1970)
p483~484 「ズルチン dulcin]
人工甘味料の一種。 食品添加物として許可されていない。 甘味度は砂糖の220~250倍で、サッカリンナトリウムと併用するとさらに甘味度が増し、砂糖の味に似る。 1948 (昭和23) 年に食品添加物に指定、戦後の甘味料不足で大いに使われた。
しかし消化酵素に対して抑制作用があり、長期間連用すると血液毒になるなど種々の毒性が確かめられた。
1947(昭和38)年に幼児が5gなめて死亡したのを始め、1963(昭和38)年、1966(昭和41)年にさらに死亡者が出たため1967(昭和43)年6月16日にしょうゆなど10品目に使用制限した。 ・・・ 1969(昭和44)にすべての食品に使ってはいけないこととなった。
【資料6】 『料理食材大事典』 (主婦の友社 1996)
p450 「ズルチン dulcin」
使用禁止の人工甘味料のひとつ。 砂糖の約250倍の甘みを有する。
1948(昭和23)年施行の食品衛生法で食品添加物に指定され、戦後の砂糖不足の時代に一般家庭でも広く使用された。
しかし、ぼたもちに大量使用して死者が出る急性中毒事件が発生し、国内外でも発ガン性が認められ、1968年に添加物の指定がとり消され、使用禁止となった。
【資料7】 『食品衛生事典』 (中央法規 1984)
p210 「ズルチン dulcin」
砂糖の250倍の甘みがあることから第2次大戦後の砂糖不足のときに甘味料として広く利用、昭和21年サッカリンナトリウムとともに使用が認められる。 昭和23年食品衛生法施行に際し甘味料として指定、漬け物・冷菓・煮物・しょうゆなどに利用されたが発がん性が指摘され昭和43年に使用禁止。
【資料8】 『総合食品事典』 (同文書院 1968)
p358 「ずるちん Dulcin」
人口甘味料の一種で蔗糖の約200倍の甘味を有するが、サッカリンと同様栄養にはならない。
〔合成法〕 〔性質〕 〔使用法〕 の記載あり。
〔注意〕 として、 「現在使用されている人工甘味料のうちでは毒性がもっとも激しく、消化器系統を害し、肝臓障害、溶血作用を伴う」 「致死量は6才の男子で3~10gといわれるが、不純物が存在すれば一層危険であるから、その使用は慎重にする必要がある」 とある。
【資料9】 『図説 厚生白書』 (至誠堂)
p77 「食品添加物規制強化措置一覧 (43年以降) 」 として、「ズルチン(甘味料)の全面禁止 44年1月1日以降」との記載あり。
【インターネット情報】
J-Stage https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja/
『食品衛生学雑誌 Vol. 10 (1969) No. 2 』 P 112-113
「ズルチンによる食中毒事件 昭和41年 7月 島根県衛生研究所 斉藤孝一」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/10/2/10_2_112/_article/-char/ja/
1. 事件の概要
(1) 事件発生日時 昭和41年7月3日
(2) 発生場所 島根県安来市
(3) 患者数 6名,内1名死亡
(4) 病因物質 ズルチン
(5) 原因食品 「あんつけ餅」(米の粉をこねて蒸し団子にしてあんをまぶしたおはぎ様のもの)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 食品.料理 (596 8版)
- 衛生学.公衆衛生.予防医学 (498 8版)
- 参考資料
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【資料1】平凡社大百科事典 8. 平凡社, 1985.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I004208718-00 (p215 当館請求記号 R031/174/8 ※貸出禁止資料) -
【資料2】世界大百科事典 10 改訂新版. 平凡社, 2007.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000424620-00 (p213 当館請求記号 R037-1/セ/07-15 ※貸出禁止資料) -
【資料3】日本大百科全書 13 (すけーせん). 小学館, 1987.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001835916-00 , ISBN 4095260130 (p235 当館請求記号 R031/177/13 ※書庫資料,貸出禁止資料) -
【資料4】五十嵐脩, 小林彰夫, 田村真八郎 編集代表 , 五十嵐, 脩, 1934- , 小林, 彰夫, 1933- , 田村, 真八郎, 1930-. 丸善食品総合辞典. 丸善, 1998.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002679055-00 , ISBN 4621044516 (p590 当館請求記号 R498.5/マ98 ※書庫資料,貸出禁止資料) -
【資料5】河野 友美/編 , 河野‖友美. 食品大事典. 真珠書院, 1970.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000102669-00 (p483~484 当館請求記号 ※書庫資料,貸出禁止資料) -
【資料6】主婦の友社 編 , 主婦の友社. 料理食材大事典. 主婦の友社, 1996.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002518832-00 , ISBN 4072147419 (p450 当館請求記号 R596/シ96 ※貸出禁止資料) -
【資料7】河端俊治 [ほか]共編 , 河端, 俊治. 食品衛生事典. 中央法規出版, 1984.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001673660-00 , ISBN 4805802383 (p210 当館請求記号 R498/669 ※書庫資料,貸出禁止資料) -
【資料8】桜井芳人 編 , 桜井, 芳人, 1905-1974. 総合食品事典 新訂版. 同文書院, 1968.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001107782-00 (p358 当館請求記号 R498/161 ※書庫資料,貸出禁止資料) -
【資料9】厚生省 編 , 厚生省. 図説厚生白書 : 繁栄への基礎条件 昭和44年度. 至誠堂, 1969.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069266515-00 (p77 当館請求記号 R498/361/69 ※書庫資料,貸出禁止資料)
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【資料1】平凡社大百科事典 8. 平凡社, 1985.
- キーワード
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- 食品添加物
- 人工甘味料
- ズルチン
- 砂糖
- 毒性
- 食中毒
- 昭和
- サッカリン
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000222464