レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015/12/11
- 登録日時
- 2016/03/20 00:30
- 更新日時
- 2016/03/27 15:31
- 管理番号
- 千県中参考-2016-8
- 質問
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解決
遺産分割協議の確定前でも、銀行にある預金の法定相続分は現金での支払いが可能だと聞いた。最高裁判所の判例があれば知りたい。
- 回答
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遺産分割協議前の払い戻しを可とする最高裁判所の判例には以下のようなものがあります。
・最高裁判所昭和29年4月8日判決(『最高裁判所民事判例集』8巻4号p819)
・最高裁判所昭和30年5月31日判決(『最高裁判所民事判例集』9巻6号p793)
昭和29年の判例は裁判所ホームページ「裁判例情報」(http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56093)にも掲載されています。
なお、判例的には遺産分割協議前であっても金融機関に払戻を請求することは可能としていますが、金融機関の実務上、遺産分割協議前の払戻請求に応じていない場合も多いようです。
以下の資料に関連の記述がありましたので紹介します。
・『賢く節税&トラブル知らず 相続・贈与・遺言』
p172「遺産分割前に預金の払い戻しは可能?」
通常、預金払い戻しは遺産分割確定後に行われ、ほとんどの銀行では遺産分割の確定後でなければ、払い戻しを認めてくれない、との記述があります。
法律的には遺産分割確定前でも請求可能なため、銀行が交渉に応じない場合は、弁護士に依頼して「預金払戻訴訟」を検討するとよいとあり、銀行と払い戻しを交渉する際、以下の事柄を示す資料を銀行に提供した方が交渉しやすいと書かれています。
・遺言がないこと
・相続人の範囲で争いがないこと
・遺産分割協議が調わない事情
・『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(新版)』
p138-141「金銭債権その他の可分債権(預貯金等)」
相続人がそれぞれ自己の法定相続分に相当する部分について払戻請求をすることは許されるとする判例のほか、関連する判例が5件取り上げられています。
金融機関の対応として、後日、相続人間のトラブルに巻き込まれるのをおそれ、多くの金融機関では遺産分割協議書または相続人全員の同意書等の提出がなければ、払い戻しに応じないようだ等の記述があります。
また、実際問題として、自己の相続分に応じて単独で払戻請求訴訟を提起しても、金融機関としては他の相続人に対する責任を免れるため、相続人全員に対して訴訟告知をなし、さらに訴訟告知を受けた相続人が訴訟参加をすることもある等の記述もあります。
・『判例にみる相続人と遺産の範囲』
p182-188「一部の共同相続人による預金払戻請求(1)(2)」
払戻請求に関する事例と判例が掲載されています。
・『遺産分割・遺言の法律相談』p91-97「Q14 預金」
・『遺言・相続の知識とQ&A』p105-106「預貯金」
(インターネットの最終アクセス:2016年1月13日)
- 回答プロセス
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遺産相続関係の資料から、預貯金に関する部分を調査。
- 事前調査事項
- NDC
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- 民法.民事法 (324 9版)
- 参考資料
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- 『最高裁判所民事判例集』8巻4号|0500731250
- 『最高裁判所民事判例集』9巻6号| 0500730899
- 『賢く節税&トラブル知らず 相続・贈与・遺言』(奥田周年ほか著 池田書店 2012|0106369619
- 『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(新版)』(片岡武ほか編著 日本加除出版 2013)|0106415883
- 『判例にみる相続人と遺産の範囲』(仲隆ほか編著 新日本法規 2013)| 0106412148
- 『遺産分割・遺言の法律相談』(青林書院 2011)| 0106305157
- 『遺言・相続の知識とQ&A』(高岡俊之著 法学書院 2013)| 0106407700
- キーワード
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- 遺産相続(イサンソウゾク)
- 遺産分割(イサンブンカツ)
- 可分債権(カブンサイケン)
- 預貯金(ヨチョキン)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 法情報,一般
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000189645