レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2006年03月20日
- 登録日時
- 2006/07/20 16:15
- 更新日時
- 2006/07/21 17:11
- 管理番号
- 青山学院大学本館-2
- 質問
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解決
婦人の婦の字が成立するにいたった起源を調べたい。漢字には象形文字、表意文字、表音文字などがあるが、「婦」はどういう経緯があってこの字になったのでしょうか?
辞書類を調べたところ「ほうきをもつ女」が「婦」というのがほとんどで、そこから、これは差別語ということで「女性」に変えようという動きがある。
- 回答
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漢字辞典、事典類、出版者のHPの記事、国立女性教育会館(NWEC)のHPに、女性情報レファレンス事例集などより、「婦」が含むホウキは家事をするためのものではなく、祭壇を清めるための神聖な道具である。差別的な文字ではない。調べた資料類を質問者に渡した。
- 回答プロセス
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まず、本学蔵の白川静「字統」を調べる。「婦」が含む帚の字は「箒」ではなく、鬯酒(ちょうしゅ)という香草入りの聖酒をそそいで宗廟を清めるのに用いる呪具である。とある。
次に、大修館のHPに“漢字の読み方・意味に関するQ&A(その2)を見る。そこに
「婦」という漢字は、もともとは「ほうきを持つ女性」を表していると聞いたことがありますが、本当ですか?という問いがあるが、そこでは、たしかに一般に「婦」は「ほうきを持つ女性、掃除をする女性」を表す、とされているが、これは、中国で紀元1世紀ごろに作られた『説文解字(せつもんかいじ)』という字書に載せられている解釈で長い間支持されてきた。しかし、最近の研究では、「婦」はたしかに「ほうきを持つ女性」を表しているのですが、その「ほうき」が、私たちの知っている「ほうき」とはちょっと違い、紀元前の中国では、神殿の中を清めるために用いられる道具であって、単純な掃除道具というよりは、宗教的な儀式に用いられる重要な道具だったようだとある。
さらに、国立女性教育会館(NWEC)のHPに、女性情報レファレンス事例集があり、
そこに「婦人」から「女性」に言い換えられるようになった経緯を知りたいのですが。
という質問があり、その提供情報、回答があり、11冊の図書、辞典類、雑誌記事3件があげられている。 本図書館(相模原、短大を含む)の所蔵を調べ参考にしてもらう。また、それらのリストにはないが、当館所蔵の「漢字の字源」 阿辻哲次著(講談社現代新書)のウェブ上での内容紹介(講談社BOOK倶楽部のHP)にもホウキを持った貴婦人ということで「婦」の字源についての解説があった。これによると
婦という漢字がオンナとホウキからできているのは、女性を家事労働に縛り付けようと売る封建的な思想の現れにほかならず、このような作り方をしている漢字はこの男女平等の時代にまことに許しがたい文字であるという議論がなされたが、それは古代中国の実情と文化をふまえていない、いささか軽薄な議論というべきである。甲骨文字や殷周時代の青銅器の銘文においては、「婦」は当時の王の妃を指す文字として使われている。この場合のホウキは、戸外や一般家屋の掃除に使われるものではなく、実は神聖なお祭りをする祭壇を掃除するためのものだった。とある。
- 事前調査事項
- NDC
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- 言語 (8 9版)
- 参考資料
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- 白川静「字統」、「古代汉语词典」、「漢字の字源」、「岩波女性学事典」
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- その他
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 名誉教授
- 登録番号
- 1000029619