レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20030822
- 登録日時
- 2005/02/04 02:13
- 更新日時
- 2005/11/28 15:17
- 管理番号
- K2003F1392
- 質問
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解決
アメリカの連邦憲法と各州憲法における国旗に関する規定、国旗掲揚義務および罰則等について知りたい。また、先住民居留地における国旗掲揚や掲揚しなかった場合の罰則等に関する規則があるかどうか知りたい。
- 回答
-
まず、アメリカ連邦憲法には国旗に関する規定は全くありませんのでご留意下さい。
一方、連邦の法律集”United States code 2000 Edition”(以下”U.S.code”と呼びます。当館請求記号)の第4編第1章「国旗」の第6条(Tittle 4 Chapter 1”the Flag”§6, p.544)には、国旗を掲揚する時と場合(Time and occasions for display)についての条文があります。ご指摘の学校、公共施設、選挙日の投票所については、第6条(g)(e)(f)項にそれぞれ規定がありますが、その他に国旗を掲揚することが義務付けられている「場所」についての規定はありません。よって、”U.S.code”にはアメリカ先住民居留地(Reservation)において国旗掲揚が義務付けられている場所に関する規定はありません。
それ以外には第6条(d)項に国旗を掲揚すべき「時」についての規定があります。この条文によると、国旗(the flag)は常に掲揚されるべきとありますが、特に掲揚すべき日として以下の日が挙げられています。
元日(New Year’s Day) 1月1日
大統領就任式の日(Inauguration Day) 1月20日
M.L.キング誕生日(Martin Luther King Jr.’s birthday) 1月第3月曜日
リンカーン誕生日 (Lincoln’s Birthday) 2月12日
ワシントン誕生日(Washington’s Birthday) 2月第3月曜日
復活祭(Easter Sunday) 年により異なる
母の日(Mother’s Day) 5月第2日曜日
軍の日(Armed Forces Day) 5月第3土曜日
戦没将兵追悼記念日(Memorial Day) 5月最終月曜日
国旗制定記念日(Flag Day) 6月14日
独立記念日(Independence Day) 7月4日
労働者の日(Labor Day) 9月第1月曜日
憲法記念日(Constitution Day) 9月17日
コロンブス祭(Columbus Day) 10月第2月曜日
海軍の日(Navy Day) 10月27日
退役軍人の日(Veterans Day) 11月11日
感謝祭(Thanksgiving Day) 11月第4木曜日
クリスマス(Christmas Day) 12月25日
その他合衆国大統領が布告により定める日
各州発足の日(合衆国加入の日)及び各州の休日
次に州法では、ニューヨーク州、ワシントンD.C.、カリフォルニア州について調査しました。結果は以下のとおりです。
【ニューヨーク州】
”McKinney’s Consolidated laws of New York annotated”<CU-1113-31>にはいくつか国旗の掲揚に関する英文の条文があります。全ての条文に「義務である」と明記されている訳ではありませんが、ご参考までに法律名、条文番号と所収の巻号を以下に記載します。なお日本語のタイトルは担当者が便宜上付記したものです。
公共の集会での国旗の掲揚に関する条文
・General Municipal Law
Article 14-E. Display of flag at public meetings §440
(上記法令集のBook23 Sections210 to 699 p.284)
法廷内での国旗の掲揚に関する条文
・New York City Criminal Court Act
Article VI. General miscellaneous provisions §93
(Book29A -judiciary Part3 p.437)
公務員の国旗の掲揚業務を記した条文
・Public Buildings Law
Article 2. Commissioner of general services §3.2(Book43 pp.5-6)
ニューヨーク州には、アメリカ先住民族人口の多い都市圏であるニューヨーク(1990年時点で第3位)がありますが、居留地で国旗掲揚を義務付けている条文は見当たりませんでした。
【ワシントンD.C.】
”District of Columbia code, annotated”<CU-1113-127>を調査しましたが、見当たりませんでした。
【カリフォルニア州】
”Wes’s annotated California codes”<CU-1113-7> を調査したところ、国旗の掲揚に関する条文がありましたのでご紹介します。
法廷内での国旗の掲揚に関する条文
・Government Code
Title 1. State Seal, Flag, and Emblems Division 2 Chapter 3 §430
(上記法令集 No.32 p.109)
公共の土地建物への国旗の掲揚に関する条文
・Government Code Title 1 Division 2 Chapter 3 §431
(No.32 pp.109-110)
競技場等での国旗の掲揚に関する条文
・Government Code Title 1 Division 2 Chapter 3 §432
(No.32 p.110)
州の高速道路内または高速道路に隣接する歩道への国旗の掲揚に関する条文
・Streets And Highways Code
Division 1. State Highways Chapter 3 Article 2 §670.5
(No.63 p.340)
カリフォルニア州にはアメリカ先住民族人口の多いロサンゼルス(1990年時点で第1位)が位置していますが、居留地で国旗掲揚を義務付けている条文は見当たりませんでした。
居留地で国旗掲揚を義務付けている条文があるかについては、網羅的なレファレンスには応じかねますので、人口の多いアメリカ先住民族居留地のあるアリゾナ州(1990年時点で人口第1位のナヴァホ等がある)、サウスダコタ州(同年で第2位のパインリッジ等がある)、モンタナ州(同年で第9位のブラックフットがある)に限定して、以下の資料を調査しました。
【アリゾナ州】
”Arizona revised statutes―annotated”<CU-1113-62>
【サウスダコタ州】
”South Dakota codified laws”<CU-1113-86>
【モンタナ州】
”Montana code annotated 2001”<CU-1113-94>
いずれも「Reservation」と「Flag」を見出し語として、目次から本文を当たってみましたが、居留地で国旗掲揚を義務付けている場所に関する条文は見当たりませんでした。
なおアメリカ先住民族人口の多い州を調べるために、以下の資料を参考にしました。
『アメリカ・インディアンの歴史[第3版]』 冨田虎男著 雄山閣出版 1997 第1章図表 (G161-G21)
国旗掲揚をしない場合は罰則があるのか、というご質問に対しては、国旗の冒涜については罰則がありますが、掲揚しなかった場合の罰則は見当たりません。
また、国旗やアメリカについての図書、アメリカの国旗についての雑誌記事などを調査しましたが、掲揚することが義務付けられている場所や、アメリカ先住民族居留地における国旗掲揚義務についての記事は見つかりませんでした。
参考文献は以下のとおりです。
(1)『アメリカを知る事典 新訂増補版』 平凡社 2000 <GH8-G5>
(2)「紙谷 雅子:象徴的表現 ―合衆国憲法第1修正と言葉によらないコミュニケーションについての一考― (1)~(4)」(『北大法学論集』40(5・6-上):1990.8, 41(2): 1990.12, 41(3): 1991.1, 41(4): 1991.3)
※こちらの第3回の記事は、星条旗の利用を規制する連邦法と州法に関する論説となっています。罰則についても言及されていますが、主に星条旗冒涜に対するものです。
< >内は当館請求記号
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 国際法 (329 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 国旗-アメリカ合衆国
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 公共図書館
- 登録番号
- 1000014381