レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年11月13日
- 登録日時
- 2021/03/28 10:54
- 更新日時
- 2021/03/31 15:58
- 管理番号
- 千県中参考-2020-22
- 質問
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解決
俳句・川柳で使われる「動く句」の語義を解説した資料はあるか。動く句として挙げられている句例も知りたい。
- 回答
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【資料1】『俳文学大辞典』(尾形仂ほか編 角川書店 1995)
p77「うごく・うごかぬ→ふる・ふらぬ」
p823「ふる・ふらぬ」
「俳諧用語。『うごく・うごかぬ』とも。一句の中で、ある語や題材が、他のものに置き換え得るか否かという、表現の治定性に関する評語。元禄俳壇でしばしば取り上げられたことが、『祇園拾遺物語』『蝶すがた』『去来抄』『独ごと』などに見える。単に表現の的確性のみをいったものではなく、本意・本情とも深くかかわっている。」
【資料2】『川柳総合事典』(尾藤三柳編 雄山閣 1984)
p43「動く」
「構成上、事物の配合が調和適応を欠き、代語をもってしても一句が成立する場合。たとえば、『夕刊の汚職の記事に腹が立ち』の夕刊には、特別に夕刊でなければならない必然性がなく、朝刊でもよいわけだから、どちらにしても動くことになる。もともと『記事』とあるから、情景を特定する必要がなければ、夕刊も朝刊も不要であったことが、動く原因になっている。ふる(反対は、ふらぬ・ふれぬ)ともいう。」
【資料3】『本質論としての近世俳論の研究』(復本一郎著 風間書房 1987)
p162-180 「四 『うごく句』『うごかぬ句」の論」
「『うごく』『うごかぬ』、あるいは『ふる』『ふらぬ』という評語がいかなる価値基準を示すことば」であるかを、去来ほかの蕉門の俳人と鬼貫の下記の俳論から検討している。『俳諧発句十六篇』以外は、句例の記載がある。
松春『祇園拾遺物語』(p163-165)、宇鹿『俳諧発句十六篇』(p166-167)、有隣『たね茄子』(p167-168)、
助然『蝶すがた』(p168-172)、去来『去来抄』p172-177、鬼貫『独ごと』・『続七車』(p177-179)
【資料4】『俳人名言集』(復本一郎著 朝日新聞社 1989)
p205 「又、ふる、ふらぬの論、かしがまし (芭蕉)」
「『ふる・ふらぬ』とは、表現の揺れを言う言葉であり、『動く・動かぬ』とも言う。」と定義し、表題の芭蕉の言葉について解説している。
【資料5】藤本美和子「季語が動くと言われる 季語が輝く瞬間 (大特集 名句で解決! 悩み別作句法)」(『俳句』 69巻2号 角川文化振興財団 2020 p56-59)
「『季語が動かぬ』一句とは季語の本意が十全に理解された上で生かされ、一句が機能している」ことと定義し、その要である「一語の発見」の第一歩が、「①季語の本意を知る、②季語を生かす、③季語に託す」であるとして、それぞれについて解説している。
【資料6】「この"季語"動く?動かない?」(『俳句界』通号259号 文学の森 2018 p125-143)
前半「季語が動く、動かない」では、2人の筆者による句例を挙げての論考がある。後半「この句にこの季語」では、複数の筆者が各別に句例を1つずつ掲げ、その句で使われた季語の意義などを論じている。
【資料7】「実用特集 『季語が動く』と言われぬために」(『俳句』 59巻13号 角川文化振興財団 2010 p162-173)
「季語が動く」と言われないための工夫や心がけについて、複数の著者が、句例を挙げてそれぞれ2ページずつ解説している。季語が動く句例、動かない句例も掲載され、その理由が示されている。
【資料8】三宅巨郎「初歩添削講座『動く句とは』」(『川柳きやり. 23(8)(253)』 川柳きやり吟社 1942 p23-26)(国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6082535)
冒頭で「動く句」の語義と解釈を説明し、「これ等のいづれにも引かゝらぬ様に萬全を期して作句する事」としたうえで、読者から投稿された川柳27句を批評・添削している。「動く句」であるとの記載はないが、「この場合は他に用語があらう」(p25)等のコメントが付されている。
【資料9】時実新子「連載川柳エッセー417『川柳新子座』」(『アサヒグラフ』朝日新聞社 1997年7月4日号 p54-55)
読者から投稿された川柳に対する、時実新子の批評が掲載されている。
そのうち、一句について「動く句である。」との評が、別の一句について「この句は動かない」との評がある。
【資料10】『若山牧水全集 第9巻』(若山牧水著 増進会出版社 1993)
p119-121 動く句、動かぬ句の語義を解説したうえで、牧水自身の短歌を動く歌の例として挙げ、その推敲課程を示している。
(インターネット最終アクセス:2021年2月5日)
- 回答プロセス
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1 「千葉県立図書館 図書・雑誌・視聴覚資料検索」で書名「俳句」&「辞典」を検索。日本十進分類法で911.3の開架書架をブラウジングして【資料1】を確認。【資料1】の参考文献の記載から【資料3】を得た。【資料3】の内容を確認後、書庫の日本十進分類法911.3の棚をブラウジングして【資料4】を得た。
2 「千葉県立図書館 図書・雑誌・視聴覚資料検索」で書名「川柳」&「辞典」を検索。開架及び書庫の日本十進分類法911.4の棚をブラウジングして川柳の辞典類を確認。【資料2】に「動く」の項目があることを確認した。【資料2】以外の辞典類には、該当する項目が見あたらなかった。
3 国立国会図書館サーチで「俳句」&「動く」を検索。【資料5】及び【資料7】がヒットした。
4 Googleで「俳句」&「動く」を検索してヒットしたブログ(https://tsukinami.exblog.jp/28091469/)に、【資料6】に関する記載があったことから、【資料6】の内容を確認した。
5 「国立国会図書館デジタルコレクション」で「川柳」&「動く句」を検索。【資料8】がヒットした。
6 Googleブックスで「川柳」&「“動く句”」を検索。【資料9】がヒットした。
7 Googleブックスで「動く句」&「動かぬ句」を検索。【資料10】がヒットした。
- 事前調査事項
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【資料2】は確認済。
- NDC
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- 詩歌 (911 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『俳文学大辞典』(尾形 仂ほか編 角川書店 1995)(9102912555)
- 【資料2】『川柳総合事典』(尾藤三柳編 雄山閣 1984)(9102912976)
- 【資料3】『本質論としての近世俳論の研究』(復本一郎著 風間書房 1987)』(9100507670)
- 【資料4】『俳人名言集』(復本一郎著 朝日新聞社 1989)』(9100508678)
- 【資料5】藤本美和子「季語が動くと言われる 季語が輝く瞬間 (大特集 名句で解決! 悩み別作句法 ; 悩み別作句法)」(『俳句』69巻2号 角川文化振興財団 2020 p56-59)(2500823525)
- 【資料6】「この"季語"動く?動かない?」(『俳句界』通号259号 文学の森 2018 p125-143)(2500775811)
- 【資料7】「実用特集 『季語が動く』と言われぬために」(『俳句』59巻13号 角川文化振興財団 2010 p162-173)(2500565663)
- 【資料8】三宅巨郎「初歩添削講座『動く句とは』」(『川柳きやり. 23(8)(253)』 川柳きやり吟社 1942 p23-26)(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6082535)
- 【資料9】時実新子「連載川柳エッセー417『川柳新子座』」(『アサヒグラフ』朝日新聞社 1997年7月4日号 p54-55)(0501627533)
- 【資料10】『若山牧水全集 第9巻』(若山牧水著 増進会出版社 1993)(9100826556)
- キーワード
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- 動く句(ウゴクク)
- 動かぬ句(ウゴカヌク)
- 俳句(ハイク)
- 俳句-作法(ハイク-サホウ)
- 川柳(センリュウ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 一般
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000295883