レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/07/30
- 登録日時
- 2021/09/03 00:30
- 更新日時
- 2021/09/03 00:30
- 管理番号
- 6001051049
- 質問
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解決
征露とはどんな年号か。
- 回答
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調査の結果、征露は正式な年号ではなく私年号の一つだとわかった。
私年号は次のように説明されている。
・『広辞苑』(新村出/編 岩波書店 2018.1)
p.1321の「私年号」の項によると「朝廷が正式に定めた年号に対し、民間で私に用いた年号」で、「異年号」「偽年号」ともいう。
「征露」がどのような私年号だったかについては以下の資料に記載があった。
・『日本私年号の研究』(久保常晴/著 吉川弘文館 1967)
p.466に、征露は「初期的には日露戦争における戦勝を記念する意味で、一つの時を算える一基点として使用されたもので、征露の何年目としたものであろう」とある。それがp.458-459に掲載されている小山市遊園地(旧城址)前の天翁院の縁台の裏の墨書銘にあるように、月日が付されたことにより、一般に年号として受け取られるようになり、「自然私年号が成立したものであろう」としている。
征露という私年号が実際に使われていたかどうかについては次の資料に詳しい。
・高島幸次「私年号「征露二年」について」『日本歴史』487 (吉川弘文館 1988.12)
p.91-94
p.92に滋賀県の水口町役場所蔵の「「出征軍人紀年手簡」と題する書簡綴りの中から「征露二年」と記した書簡四点が見つかった」とあり、その日付、差出人、宛名、内容を紹介したうえで、日露戦争の出征軍人から水口尋常小学校に送られた手紙に「征露」が使われていた以上、「征露」が私年号として一般庶民の間に通用していたことは認めざるを得ない」としている。
また同書では「征露」が使用されていた期間についても考察されており、
「「征露」は、戦争が足掛け二年になった元旦以降、戦勝を祈願して用いられ、講和とともに戦勝を祝う意味となり、その後まもなく、おそらくは同年中にその使命を終え、年を超えて使用されることはなかったと思われる」としている。
その他「征露」に関する資料には以下の2点があった。
・『読史の趣味 (縮刷名著叢書25)』(萩野由之/著 東亜堂書房 1915)
p.201-212「三六 征露二年」の章があり、征露の用いられていた当時を実際に生きていた筆者が、征露について述べている。
なおこの資料は国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されている。
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/933652/119 (2021/7/30 現在)
・『元号:年号から読み解く日本史 (文春新書1156)』(所功/[ほか]著 文藝春秋 2018.3)
p.233-236 コラム「自由自治元年と征露二年」で征露について述べられている。また同コラム内 p.235 に「征露二年」と書かれた年賀状の図版がある。
[事例作成日:2021年7月30日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 10版)
- 参考資料
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- 広辞苑 第7版 新村/出‖編 岩波書店 2018.1 (1321)
- 日本私年号の研究 久保/常晴∥著 吉川弘文館 1967 (466)
- 日本歴史 日本歴史學会 吉川弘文館 484-487 487号:昭和63年総目次 (第487号 91-94)
- 読史の趣味 萩野/由之∥著 東亜堂書房 1915 (201-212)
- 元号 所/功‖著 文藝春秋 2018.3 (233-236)
- https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/933652/119 (読史の趣味 (2021/7/30 現在))
- キーワード
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- 私年号(シネンゴウ)
- 征露(セイロ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000304178