レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年10月29日
- 登録日時
- 2015/10/29 09:48
- 更新日時
- 2015/12/14 10:42
- 提供館
- 京都市図書館 (2210023)
- 管理番号
- 右中‐郷土‐85
- 質問
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解決
石田の杜(いわたのもり)について知りたい。
- 回答
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石田の杜は,京都市伏見区石田森西町に鎮座する天穂日命神社(あめのほひのみことじんじゃ・旧田中神社・石田神社)の森で,和歌の名所として『万葉集』などにその名がみられます。
・山科の石田の杜に幣(ぬさ)置かばけだし我妹に直に逢はむかも
〈『万葉集』巻九-1731〉 藤原宇合(ふじわらのうまかい)
・山代の石田の杜に心おそく手向けしたれや妹に逢ひ難き
〈『万葉集』巻十二-2856〉 作者不詳
現在は“いしだ”と言われるこの地域ですが,古代は“いわた”と呼ばれ,大和と近江を結ぶ街道が通り,道中旅の無事を祈って神前にお供え物を奉納する場所でした。この石田の杜の所在地については諸説あったようですが,大和から近江への道すがらを歌う長歌【資料11】や,“石田杜”を解説する地誌【資料3】などから,明治10年(1877),京都府庁が現在の場所がふさわしいとし,社名も現在の天穂日命神社に改称されました。【資料1・6・9~11・13~16】
現在周辺は開発がすすみ,田地が減って集合住宅や商業施設に囲まれているものの,本殿などの建物は樹林の中に建つという良い環境が保たれ,京都市文化財環境保全地区に指定されています。
- 回答プロセス
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●京都の地名や地誌に関する資料より・・・【資料1~5】
【資料2】“杜の中心に式内社の天穂日命神社があったとされている。~同社の比定地を石田森に決定したのは明治10年である。”
【資料3】“石田杜田中杜。同所に在り。”
【資料4】“参道入口には万葉の歌人藤原宇合のうたった〈山科の石田の小野の柞原(ははそはら)見つつか君が山道越ゆらむ(万葉集巻九‐1730)〉と記した歌碑が建っている。”
●伏見の地誌より・・・【資料6~7】
【資料6】石田村(いしだ)
【資料7】“このあたりは万葉の昔石田の森といわれる交通の難所で~石田の神に旅の安全を祈ったところである。”
●歌枕に関する資料より・・・【資料8~10】
【資料8】“「石田の森」は『万葉集』以下『勅撰集』にも多く詠まれ,『枕草子』(三巻本)一九三段にも,「森は,殖槻(うえつき)の森。石田の森」とある。”
【資料9】“今は神社のあたりにわずかの森を残すだけであるが,住宅地としてひらける以前には広い森があった。「森」は本来神の憑りつく木や林を意味し,鎮守の森をいった。”
●万葉集に関する資料より・・・【資料11~13】
【資料11】長歌〈『万葉集』巻十三-3236〉 作者不詳
●天穂日命神社より・・・【資料14~15】
●京都市の文化財に関する資料より・・・【資料16】
- 事前調査事項
- NDC
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- 神社.神職 (175 9版)
- 日本 (291 9版)
- 詩歌 (911 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『日本歴史地名大系 27 京都市の地名』 (平凡社 1979) p459“石田杜”
- 【資料2】『角川日本地名大辞典 26-[1] 京都府』 (「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1982) p121“石田〈伏見区〉”
- 【資料3】『大日本地誌大系 37 山州名跡志』 (雄山閣 2002) p346
- 【資料4】『昭和京都名所図会 6 洛南』 (竹村 俊則/著 駸々堂出版 1986) p360~361“天穂日命神社,石田の杜”
- 【資料5】『新修京都叢書 第6巻 都名所図会』 (野間 光辰/編,新修京都叢書刊行会/編著 臨川書店 1967) p565
- 【資料6】『史料京都の歴史 16 伏見区』 (京都市/編 平凡社 1991) p172~175,191~192
- 【資料7】『京都伏見歴史紀行』 (山本 真嗣/著,水野 克比古/撮影 山川出版社 1983) p195
- 【資料8】『和歌の歌枕・地名大辞典』 (吉原 栄徳/著 おうふう 2008) p275
- 【資料9】『日本うたことば表現辞典 12 歌枕編』 (大岡 信/監修 遊子館 2008) p282~283
- 【資料10】『校注歌枕大観 山城篇』 (森本 茂/編著 大学堂書店 1979) p691~694
- 【資料11】『新日本古典文学大系 3 万葉集』 (佐竹 昭広/[ほか]編集委員 岩波書店 2002) p231~232
- 【資料12】『万葉の歌 人と風土 7 京都』 (保育社 1986) p138~146
- 【資料13】『京・近江の万葉めぐり』 (矢田 逸次/写真・文 かもがわ出版 2007) p16~17
- 【資料14】『式内社調査報告 第1巻 京・畿内』 (式内社研究会/編纂 皇学館大学出版部 1979) p290~291
- 【資料15】『京都・山城寺院神社大事典』 (平凡社/編 平凡社 1997) p51
- 【資料16】『京都市の文化財 第21集』 (京都市文化市民局文化部文化財保護課/編 京都市文化市民局文化部文化財保護課 2003) p12~13
- キーワード
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- 石田杜(いわたのもり)
- 石田(いしだ)
- 天穂日命神社
- 万葉集
- 歌枕
- 伏見
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000183028