レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年05月19日
- 登録日時
- 2021/01/26 00:30
- 更新日時
- 2021/12/28 00:30
- 管理番号
- 3A20006475
- 質問
-
解決
東住吉区の南百済という地名について知りたい。古代の朝鮮半島に百済という国があったそうだが、南百済はその百済とは関係があるのか。
- 回答
-
現東住吉区にあたる地域に、明治22年から大正14年まで「南百済村」がありました。現在「南百済」の地名はありませんが、小学校名として残っています。
「南百済」の地名について、また、古代の「百済郡」について、関連記述のある資料をご紹介します。
(1) 『南百済小学校創立140周年記念』([大阪市立南百済小学校/編] 大阪市立南百済小学校創立140周年記念事業委員会 2014.5)
p.10「南百済小学校140年のあゆみ その2」に、「明治22年 1889年 町村制実施で、湯谷島・中野・砂子・鷹合を合わせて南百済村とする。」「明治27年 1894年 南百済尋常小学校と名を改める。」と記述があります。
p.18-24「6.南百済地域のうつりかわり 6.1 百済王朝との歴史的なつながり」に、現在も韓国の関係者と交流があることや、古代の南百済小学校区周辺に百済から来た渡来人がたくさん住んでいたこと、小学校周辺の百済王朝にまつわるスポットなどについて記述があります。また、p.25「(1)南百済の名前の由来」に、「一説では、村名に行き詰っていたところ、村に百済の酒君塚があったことから、住吉神社の津守宮司が南百済村と命名したといわれています。」と紹介されています。(酒君に関してはp.19に関連する記述があります)
(2) 『角川日本地名大辞典27 大阪府』(「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1983.10)
p.1164「南百済村」の項に「明治22年~大正14年の自治体名。(中略)中野・鷹合・砂子・湯谷島の4か村が合併して成立。(中略)往時当地は百済郡に属しており、村名は北百済村に対して名づけられた。古くは天王寺の東方一帯にあたる当地付近には百済人が多く居住していたと思われる。(中略)同(大正)14年大阪市住吉区の一部となり、村制時の4大字は湯谷島が湯里町と改称したほかは同区の町名となる。」とあります。
p.382の「北百済村」の項にも同様の記述があります。
(3) 『日本歴史地名大系 28-[1] 大阪府の地名 1』(平凡社 2001.7)
「摂津国」のp.88「百済郡」の項に「当郡の所在地域を、現大阪市生野区・天王寺区・東住吉区・阿倍野区のそれぞれにわたる地域にあったと推定しておく。(中略)現存する古代史料によると、当郡内に本貫をもつ氏族としては百済王・竹志・広井造・一難・調らを復原しうるが、いずれも百済からの渡来氏族であり、高麗郡や新羅郡と同様に百済からの渡来者を集めて建郡したことは間違いない。」とあります。
(4) 『大阪における朝鮮文化 -歴史地理学的・説話考古学的アプローチ-(大阪文庫 4)』(段 煕麟/著 松籟社 1982.9)
「2章 百済郡」のp.32-33に「百済系渡来人が定着繁衍したために特別行政区画として設置されたわけであるが、設置年代ははっきりしないのである。(中略)七世紀末か八世紀初(中略)に設置されただろうと思われる。」とあります。
(5) 『地名は語る -わが町の生い立ち-』(大阪民主新報社/編 文理閣 1982.6)
p.154-157「百済-古代朝鮮にちなむ地名 摂津百済郡の名残り」の章にて、百済という地名についての解説があります。
(6) 『KOREA TODAY 〔日本版〕 -MONTHLY VISUAL MESSAGE MAGAZINE-』2001年12月・26巻12号306号(ANC社/Korea today 2001.12)
p.22-28 塩川慶子「大阪の中の百済-旧百済郡 1」の記事中、p.22-23に「百済郡は、東住吉区のほとんど全域と、東成区、生野区などを含む地域であった。当然、百済から来た人中心に開けた町であると言える。この地域には、今もいくつか百済と言う名が残っている。」とあります。
(7) 『上方 -郷土研究- 6 自第六十一号(昭和十一年一月)至第七十二号(昭和十一年十二月)』(上方刊行会/監修 新和出版社 1970)
62号 p.20-24 由井喜太郎「攝州住吉郡と百濟郡」が収録されています。「田邊鷹合等の地が嘗て百濟群に屬していたという証拠は何処にもありはしないではないか!?(中略)その村名たるや明治年間に時人が謬れる古説を信じて命名したものだから(略)」とあり、懐疑的な意見もあるようです。
- 回答プロセス
-
1.商用データベース「JapanKnowledge」を検索、資料(3)が見つかる。『日本国語大辞典』の「百済」の項にも簡単な記述あり。
2.当館所蔵検索で地名辞書類を検索、資料(2)が見つかる。
3.大阪府立中之島図書館「おおさかポータル」( http://www.library.pref.osaka.jp/site/osakaportal/ )をキーワード“百済”で検索、「百済郡」の文献情報より資料(4)(5)(6)(7)が見つかる。
4.資料(2)を確認、p.429「百済野」の項に「「全志」2では(略)」とあるので、『大阪府全志』索引で「百済野」「南百済」「北百済」の項を確認。いずれも「百済」の地名の由来については記述なし。
5.当該地域の学校史を確認、当館所蔵検索でフリーワード“南百済小学校”を検索、資料(1)が見つかる。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本 (291 9版)
- 参考資料
-
- 当館書誌ID <0000184865> 角川日本地名大辞典 27 大阪府 「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1983.10 9784040012704 資料(1)
- 当館書誌ID <0010176189> 日本歴史地名大系 28-[1] 大阪府の地名 1 平凡社 2001.7 資料(3)
- 当館書誌ID <0000245417> 上方 -郷土研究- 6 自第六十一号(昭和十一年一月)至第七十二号(昭和十一年十二月) 上方刊行会/監修 新和出版社 1970 資料(7)
- 当館書誌ID <0000297736> 大阪における朝鮮文化 -歴史地理学的・説話考古学的アプローチ-(大阪文庫 4) 段 煕麟/著 松籟社 1982.9 資料(4)
- 当館書誌ID <5110212089> [巻号] KOREA TODAY 〔日本版〕 -MONTHLY VISUAL MESSAGE MAGAZINE- 2001年12月 / 26巻 12号 / 306号 アジアニュースセンター 2001.12 資料(6)
- 当館書誌ID <0000341369> 地名は語る -わが町の生い立ち- 大阪民主新報社/編 文理閣 1982.6 9784892590535 資料(5)
- 当館書誌ID <0013017263> 南百済小学校創立140周年記念 [大阪市立南百済小学校/編] 大阪市立南百済小学校創立140周年記念事業委員会 2014.5 資料(2)
- キーワード
-
- 大阪府大阪市東住吉区
- 百済郡
- 百済野
- 南百済村
- 南百済小学校
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000292929