レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20180215
- 登録日時
- 2018/03/16 20:03
- 更新日時
- 2020/02/25 12:33
- 管理番号
- 2017-086
- 質問
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解決
江戸幕府の旗本「松平孫四郎」が享保5年(1720年)に近江国の「猫田村」を治めていたことが確認できる資料がないか。
- 回答
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松平孫四郎は、享保2~10年の間、鳥羽藩主を務めており、その際に近江国蒲生郡の一部も知行地としています。
猫田村は蒲生郡に含まれ、『近江日野町志 巻上』、および『日本歴史地名大系』の内容から、猫田村は鳥羽藩の知行地であったことがわかりました。
また、松平孫四郎が鳥羽藩主だった頃の検地帳が三重県鳥羽市松尾町の公民館で保管されています。そちらでも近江国の領地の詳細が確認できるかもしれません。閲覧方法等については、鳥羽市教育委員会へお問い合わせください。
なお、松平孫四郎は、松平姓を名乗ることを将軍より許された戸田家の6代目当主で、本名は光慈(みつちか)と言います。「孫四郎」は別称で、その他に「松平丹波守」等とも呼ばれていました。
- 回答プロセス
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1. 「松平孫四郎」について
(1)リサーチナビ 調べ方案内「江戸時代の幕臣をしらべるには」を参照
http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-780.php【参照:2018-03-15】
・『寛政重修諸家譜 索引四』(続群書類従完成会, 1967)
→p.504(稱呼索引)の「孫四郎」の項に、「戸田(松平)光重」など松平姓の人物が数人確認できたため、各人を該当の巻で確認したところ、下記のとおり「光慈」の時代や知行地等が合致した。
・『寛政重修諸家譜 第十四輯』(続群書類従完成会, 1965)
→「戸田 稱松平(藤原氏支流)」の系図内、p.323に「光慈(みつちか)」の項目あり。
別称として「孫四郎」「丹波守」の表記あり。正徳2年(1712年)生まれ。享保2年(1717年)より当主となり、淀藩を継ぐが、同年鳥羽藩に移った際に「近江国蒲生十郡」を知行地の一部としている。「近江国蒲生十郡」の内訳は不明。その後は享保10年(1725年)に松本藩へ移っている。没年は享保17年(1732年)。
→p.317の戸田家の概要、およびp.319の「康長」の項目より、戸田家は、永禄期の当主「康長」の頃より、松平姓を名乗ることを将軍より許されている。康長から数え、光慈は6代当主にあたる。
★光慈の知行地について、詳細な情報は下記の資料でも確認できなかった。
・『江戸時代全大名家事典』(東京堂出版, 2008)
→「戸田(松平)家」の項目内、p628-630に光慈について記載あり。
・『三百藩藩主人名事典』(新人物往来社, 1986)
→二巻のp.510-511に松本藩時代の光慈について記載あり。
→三巻のp.257に鳥羽藩時代の光慈について、同p.331に淀藩時代の光慈について記載あり。鳥羽藩時代の光慈については、参考文献として『鳥羽誌』と『鳥羽藩政下の農村』の紹介あり。内容を確認したが、該当情報なし。
(2)上記事典類の確認の際に書架をブラウジング
・『徳川・松平一族の事典』(東京堂出版, 2009)
→p.653に光慈について記述あり。近江国に領地があったことなどの記載はなし。
(3)本学契約データベースJapanKnowledge Libを検索(キーワード:戸田、戸田&光慈)
・『日本人名大辞典』「戸田光慈」、『国史大辞典』「戸田氏」、『世界大百科事典』「戸田氏」の項目がヒット。
→概要のみ。光慈の知行地について、詳細な情報はなし。
2. 鳥羽藩について
(1)NDC9:210.5(近世)、NDC9:215.6(三重県)を参考に、書架をブラウジング
・『鳥羽市史 上巻』(鳥羽市役所, 1991)
→p.352に光慈について記述あり。「近江国蒲生郡」が知行地の一部であった以上の詳細な情報は確認できず。
→p.464に光慈の治政下で実施された享保検地帳について記述あり。文書名は「惣蒐反畝附 並 分米取付帳 享保六年」とあり、現物は「松尾文書」に所収されている。こちらに近江国の知行地についても記述があるのかは不明。
・『藩史大事典 第4巻 中部編Ⅱ―東海』(雄山閣, 1989)
→p.514の表内に鳥羽藩主時代の光慈について記載あり。領地として「近江国蒲生郡」の記述があるが、詳細な情報はなし。
・『藩史大事典 第8巻 史料・文献総覧・索引』(雄山閣, 1990)
→p.201にて紹介されている鳥羽藩に関する史料の中に「松尾文書」あり。所蔵先は「松尾町内会」となっている。
→巻末の藩主名索引に「松平(戸田)光慈」あり。参照巻・ページを確認した。下記参照。
※「松尾文書」について
・日本古典籍総合目録データベース、本学OPAC、CiNii Books、CiNii Articles、国立国会図書館オンラインを検索したが、所蔵先や翻刻資料、関連資料は確認できなかった。
・所蔵先について、鳥羽市ホームページの問い合わせフォームより問い合わせたところ、松尾町の公民館にて保管されていると、鳥羽市教育委員会より回答あり。閲覧方法については質問者が閲覧希望の際に問い合わせる。
・藤井譲治『徳川将軍家領地宛行制の研究』(思文閣, 2008)
→p.364-379の「付表6 領知朱印改め以外の領知朱印状一覧」に享保3年5月11日に光慈に宛てられた朱印状について記載あり。地域の欄に「近江」とあるが、詳細な情報はなし。出典として『領知目録書抜二』とあり、『領知目録書抜二』にて詳細な情報が確認できるのでは、と考えた。
※本学契約データベースJapanKnowledge Libを検索(キーワード:朱印状、領知目録)
・『国史大辞典』「朱印状」の項目
→朱印を押した武家文書であり、将軍が大名らに知行地を確認する際にも送っていたとある。
・『国史大辞典』「領知目録」の項目
→将軍が大名らの知行地を確認する際、朱印状の内容を補足する形で一緒に送った、知行地の目録。
(2)国立公文書館デジタルアーカイブを検索(キーワード:領知目録書抜)
・『領知目録書抜』の画像公開あり。
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/F1000000000000010892【参照:2018-03-16】
→『領知目録書抜二』の画像21枚目に「松平丹波守」とあり、23枚目に「享保三年五月十一日 孫四郎」とある。以下、国別に知行地が列挙されているが、近江については「蒲生郡内拾参ヶ村」と石高の記載があるのみで、猫田村の表記は確認できなかった。
(3)Web検索(キーワード:領地目録&戸田)
・松本市文化財ホームページ「松本のたから~受け継ぎ伝える郷土の文化財~」
http://takara.city.matsumoto.nagano.jp/city/128.html【参照:2018-03-16】
→現在の戸田家当主が松本市に寄付した、寛永11年(1634年)から明治2年(1869年)までの朱印状や領地目録が、市指定等文化財として松本城管理事務所にて保管されている。
→同ホームページ内の問い合わせフォームより問い合わせ
→『長野県史 近世史料編 第5巻1 中信地方(1)』(長野県史刊行会, 1973)に翻刻が転載されていると回答あり。
→現物を確認したが、光慈が既に松本藩主となっていた享保12年のものであったため、鳥羽藩主の頃の領地は確認できなかった。(松本藩主の頃の領地については、村名まで確認できた。)
3. 「猫田村」について
(1)本学契約データベースJapanKnowledge Libを検索(キーワード:猫田村)
・『日本歴史地名大系』「猫田村」の項目
→現在は日野町猫田。江戸時代の領主の変遷について「天和元年(一六八一)志摩鳥羽藩領となり、その後の領主の変遷は河原(かわら)村に同じと思われる。」とある。
※『日本歴史地名大系』「河原村」の項目
→現在は日野町河原。江戸時代の領主の変遷について「天和元年(一六八一)志摩鳥羽藩領となり、のち幕府領。享保一四年(一七二九)遠江浜松藩領(以下略)」とあり。
・『日本歴史地名大系』「蒲生郡」の項目
→現在の群域は日野町・蒲生町・竜王町・安土町となっており、猫田村(日野町)も蒲生郡に含まれている。蒲生郡は、近世以前は現在の郡域より広かったとあり。
→参考文献の紹介あり。以下に関連する記述があった。
・『近江日野町志 巻上』(臨川書店, 1986)
→p.632の「第二十四章 河原」の「第一節 領主」に河原村の領主の変遷の記載あり。その中に「松平丹波守 光慈 領 自享保三年(城州淀より志州鳥羽に移る)」とある。また、その後は「幕領 自享保十一年 代官甚太郎」とある。(出典不明)
猫田村に関する章はなし。
『日本歴史地名大系』「猫田村」の項目と、上記『近江日野町志 巻上』の内容より、享保5年は光慈が猫田村も治めていたと考えられる。
(2)確認したが該当する情報はなかった資料
・『滋賀縣史 第三巻 中世-近世』(滋賀県, 1928)
・『滋賀県市町村沿革史 第三巻』(滋賀県市町村沿革史編さん委員会, 1964)
・『近江蒲生郡志 巻四』(蒲生郡, 1922)
・『近江日野の歴史 第3巻 近世編』(滋賀県日野町, 2013)
- 事前調査事項
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享保3年から同8年にかけて記された、江戸幕府評定所の裁判の判例を集めた古文書「評定所公事訴訟裁許留」の記述から、享保5年(1720年)に「松平孫四郎」が「猫田村」を治めていたことが伺える。
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 中部地方 (215 9版)
- 近畿地方 (216 9版)
- 参考資料
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寛政重修諸家譜索引 第4 新訂. 続群書類従完成会, 1967.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001099311-00 (NCID:BN00873742) -
堀田正敦 等編. 寛政重修諸家譜 第14 新訂. 続群書類従完成会, 1965.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001264433-00 (NCID:BN00873742) -
工藤寛正 編 , 江戸時代全大名家事典. 東京堂出版, 2008.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009257311-00 , ISBN 9784490107258 (NCID:BA84772575) -
曽我部市太 (一紅) 著. 鳥羽誌. 富久館, 1911.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001529834-00
国立国会図書館デジタルコレクションにて公開
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/765839【参照:2018-03-16】 (NCID:BN08802238) -
松本茂一. 鳥羽藩政下の農村. 新人物往来社, 1984.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I002640266-00
国立国会図書館デジタルコレクションにて公開(図書館送信参加館限定)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9571077【参照:2018-03-16】 (NCID:BN01710073) - 『日本人名大辞典』, JapanKnowledge Lib【参照:2018-03-16】
- 『世界大百科事典』, JapanKnowledge Lib【参照:2018-03-16】
-
鳥羽市史編さん室 編 , 鳥羽市. 鳥羽市史. 鳥羽市, 1991.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002138764-00 (NCID:BN06550702) -
工藤寛正 編 , 工藤, 寛正, 1941-. 徳川・松平一族の事典. 東京堂出版, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010543642-00 , ISBN 9784490107647 (NCID:BA91105140) -
藩史大事典 第8巻. 雄山閣出版, 1988.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I045862520-00 , ISBN 4639009658 (NCID:BN02409597) -
藩史大事典 第4巻. 雄山閣出版, 1988.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I045862516-00 , ISBN 4639007922 (NCID:BN02409597) -
藤井讓治 著 , 徳川将軍家領知宛行制の研究. 思文閣出版, 2008. (思文閣史学叢書)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009606870-00 , ISBN 9784784214310 (NCID:BA87182534) - 『国史大辞典』, JapanKnowledge Lib【参照:2018-03-16】
-
領知目録書抜
国立公文書館デジタルアーカイブにて閲覧可
https://www.digital.archives.go.jp/das/image/F1000000000000010892【参照:2018-03-16】 - 『日本歴史地名大系』, JapanKnowledge Lib【参照:2018-03-16】
-
滋賀県市町村沿革史編さん委員会 編 , 滋賀県市町村沿革史 第3巻. 滋賀県市町村沿革史編さん委員会, 1964.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I003925679-00 (NCID:BN03295358) -
日野町教育会 (滋賀県) , 滋賀県日野町教育会 編纂. 近江日野町志 巻上. 臨川書店, 1986.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I002578176-00 , ISBN 4653014124 (NCID:BN06313773) -
日野町史編さん委員会 編集 , 近江日野の歴史 第3巻. 日野町, 2013.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I080518206-00 (NCID:BA71057566) -
蒲生郡役所 編集 , 蒲生郡役所. 近江蒲生郡志 巻4. 蒲生郡役所, 1922.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I076565958-00 (NCID:BN06313897) -
藩主人名事典編纂委員会 編. 三百藩藩主人名事典 第2巻. 新人物往来社, 1986.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001815374-00 , ISBN 4404013833 (NCID:BN00338046) -
藩主人名事典編纂委員会 編. 三百藩藩主人名事典 第3巻. 新人物往来社, 1987.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001879214-00 , ISBN 4404014023 (NCID:BN00338046) -
滋賀県史 : 中世-近世 第3巻. 滋賀県, 1928.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I060569022-00 (NCID:BN08894112) -
松本市文化財ホームページ「松本のたから~受け継ぎ伝える郷土の文化財~」
http://takara.city.matsumoto.nagano.jp/city/128.html【参照:2018-03-16】
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寛政重修諸家譜索引 第4 新訂. 続群書類従完成会, 1967.
- キーワード
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- 松平, 戸田, 光慈, 孫四郎
- 松平丹波守
- 猫田村
- 日野町
- 蒲生郡
- 近江国
- 知行地
- 鳥羽藩
- 松尾文書
- 朱印状
- 領知目録
- 河原村
- 検地帳
- 照会先
-
- 鳥羽市
- 松本市
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 教員
- 登録番号
- 1000232627