レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/10/08
- 登録日時
- 2013/12/02 00:30
- 更新日時
- 2013/12/04 10:26
- 管理番号
- 0000000089
- 質問
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解決
昔話、民話、伝説の違いを知りたい。
- 回答
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(1)『日本民俗大辞典 下』によると、用語の成立を歴史的に説き起こして、以下のように解説しています。
○伝説:民俗学が対象とする口承文芸の一分類。一般にはイワレ、イイツタエなどと称され、土地に根ざした形で伝承されてきた。日本の民俗学的伝説研究を確立した柳田国男は、伝説と領域を接するほかの分類との比較を通しながら、その輪郭を明らかにした。・・・・昔話が童幼の個的な情操の涵養の一面を担うのと対照的に、伝説は集団の一員としての社会性、アイデンティティの獲得を第一義とする。・・・・(p167)
○民話:民間に口頭伝承された散文形態の口頭伝承または口承文芸の話の総称。民話の場では、主に本格昔話は「ムカシ」で「語る」、笑話・世間話などは「ハナシ」ですると表現され、伝説は「イワレ」「イイツタエであった。明治期以降から昭和初期までの文献を見るとこれらをあらわす慣用語は民潭・民間童話・お伽話など雑多であった。英語のフォークテイルなどの訳語としての民間説話、その略語の民話は関敬吾の「高陽民話」(『旅と伝説』1930・31)が初出であろう。・・・・現在では、民俗学・口承文芸学での昔話・伝説・世間話の概念を尊重しつつ、アイヌの口頭伝承・琉球における民話・神話的伝承を意識し、現代民話を包括する散文伝承の相対として民話の用語は術語として用いられるようになった。(p656)
※( )内を一部省略しています。
○昔話:基本的には無文字社会における言語伝承。伝説・世間話とともに民間に伝えられてきた説話の一種。この研究史上早くに曙光を投じたのは上田敏(1974-1916)である。上田はforkloreを俗説学と訳した。その上で、『民俗伝説』の中に「一体ハナシには(一)娯楽の為にするハナシと(二)真実として信じるハナシとがある」として神話・伝説とお伽噺の差異を端的に示した。・・・上田敏のいうこの「お伽噺」に対して、柳田国男がはじめて注意を抱いたのは『遠野物語』の115話であった。・・・確認するに遠野郷中の「昔話」の呼称と、その語り始めの句、そして語り収めの句への記述が見える。ここには「お伽噺」と違って、その土地の「昔話」にはじめて遭遇した柳田の姿が認められる。・・・(p659-660)
(2)一方、福田晃「民話とは何か」(『日本の民話を学ぶ人のために』p4~)では、
「民話とは、民間に口頭で伝承されてきた説話、つまり民間説話(中国の「民間故事」、英米のフォークテイル forktale)の略称である。」とした上で、「一般に民話は、伝説・昔話・世間話の三つのジャンルに大別される。・・・今なお民間伝承のなかに神話が息づいており、これを加えて四つのジャンルとすることができる。そこでその四ジャンルごとの伝承的特質をあげることとするが、その特質をいちだんと明確にするために、語り物を加えて表に示す。」として、以下の分類を提示しています。
・神話(司祭者) ・伝説(古老) ・語り物(専門的語り手) ・昔話(語り爺 語り婆) ・世間話(世間師)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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旺文社「学芸百科事典」、柏書房「最新図書館用語大辞典」を調べた。
口承文芸の形態ということは一致している。その中で昔話と伝説との相違は挙げられているが、民話の位置づけが昔話≒民話なのか、民話に伝説を含む記載があるものもあるので、その場合は大きな民話の枠の中に、昔話と伝説が含まれるのかがはっきりしない。
- NDC
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- 風俗習慣.民俗学.民族学 (38 9版)
- 参考資料
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- 1 日本民俗大辞典 下 福田/アジオ[ほか]編 吉川弘文館 2000.4 R380.3/10001/2
- 2 日本の民話を学ぶ人のために 福田/晃編 常光/徹?編 世界思想社 2000.10 388.1/10050
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000141452