レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年04月15日
- 登録日時
- 2019/11/28 19:58
- 更新日時
- 2022/04/26 14:40
- 管理番号
- 2432
- 質問
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解決
「天」という字は、第一画が長いのか、第二画が長いのか。
- 回答
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常用漢字(明朝体の活字)では第一画を長く書きます。
手書き文字(楷書)では第二画を長く書くことが一般的だったそうです。
現在「天」の文字については、第一画・第二画いずれを長く書いても
誤りではないそうです。
- 回答プロセス
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1.書道関係の蔵書を調査。
教本類に掲載されているお手本には、第二画が長く書かれているものがあるが、
解説はない。
2.字体・字形に関する資料を調査。
●『楷行草筆順・字体字典 第3版』(江守 賢治/編 三省堂 2018年)参考 728.4/K
日常よく使われる漢字・旧字体・特殊な漢字などについて、楷書・行書・草書の
筆順、美しい書き文字、書体一覧を収録する。
・第二 「楷行草(三体)筆順一覧」
見出し語は毛筆楷書、その下に楷書・行書・草書の筆順を硬筆で示す。
P.304「天」の項
書き文字はすべて第二画が長い。
「小学校教科書の活字は下の横棒(=第二画)が短い。一般では長い」という注記がある。
・第三 「楷行草(三体)一覧」
楷書・行書・草書の美しい字形・一般的な書き文字を示す。
P.559「天」の項
すべての字体で第二画が長い。
・第四 「楷書の字体一覧」
見出し語は明朝体の活字。活字と形の異なる楷書の字体を示す。
P.687「天」の項
第二画の長い「天」が載せられており、「楷書ではこの形でもよい」という注記がある。
表の見方の注記には
「(明朝体の)活字と違っても、楷書として正しく、また違った感じの美しさになる形」
と説明されている。
本書には、第一画を長く書くのが誤りであるという記述はない。
手書きの場合は第二画をより長く書くのが一般的である、と説明されている。
●『常用漢字表の字体・字形に関する指針 文化審議会国語分科会報告(平成28年2月29日)』
(文化庁/編 三省堂)811.2/J
p.5-
当用漢字表(昭和21年)から常用漢字表(昭和56年、平成22年)までの漢字施策について
まとめている。これらは、漢字の異体統合や点画の整理をして、筆写字体と印刷字体を
できるだけ近いものにすることを目的としている。
ここでは、明朝体活字を現代の通用字体としていることが書かれている。
p.7
字体・字形についての考え方を述べている。
一つの字体が印刷されたり書かれたりして表現されるとき、出現する文字の形は
無数のバリエーションを持つこと、それぞれの文字に現れる文字の形状(字形)は、
長短や方向、接触の有無、とめ、はね、はらい等の違いがあっても、
骨組み(字体)が同じであれば同じ漢字だと認識されること、などが解説されている。
p.38
手書きの楷書では点画の長短にいろいろな書き表し方があるものとして
構成要素や字形に違いがあっても同じ字体として認めることができる、
天の第一・二画の長短についても問題はない、としている。
p.102 Q58
横画の長短についてのQ&A。
「天」の字は手書きの楷書では第二画を長く書くのが一般的だったこと、
現在では第一画が長く書くこともありいずれも誤りではないこと、などが書かれている。
p.171「字形比較表」
「天」の常用漢字表に揚げられている文字として第一画が長い「天」が表示されている。
本書でも第一画・第二画いずれを長く書いても誤りではないと述べられている。
標準常用漢字は明朝体活字が通用字体として採用されており、「天」の字は第一画が長い。
手書きの楷書では第二画をより長く書く方が一般的である。
- 事前調査事項
- NDC
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- 書.書道 (728 10版)
- 音声.音韻.文字 (811 10版)
- 参考資料
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『楷行草筆順・字体字典』参考 728.4/K
江守 賢治/編 三省堂 2018年 , ISBN 9784385150512 (レファレンス対応時は2002年刊の第2版を使用) -
『常用漢字表の字体・字形に関する指針』811.2/J
文化庁/編 三省堂 2016年 , ISBN 9784385362335
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『楷行草筆順・字体字典』参考 728.4/K
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000269170