レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/07/27
- 登録日時
- 2020/01/29 00:30
- 更新日時
- 2020/01/29 00:30
- 管理番号
- 牛久-1523
- 質問
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解決
昔からの女性の穢れ(けがれ)について調べている。いつの時代から女性に対する女人禁制があったのか知りたい。参考になる図書がないか調べてほしい。
- 回答
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「穢れ」について次の資料を紹介。
・『穢れと神国の中世』片岡耕平/講談社/2013.3)…p34-43
・『日本女性生活史 第1巻』(女性史総合研究会/東京大学出版会/1990.5」…p181-216
・『日本歴史の中の被差別民』(網野善彦/新人物往来社/2001.2)…p55-64
「女人禁制」の始まった時期については、奈良時代から平安時代。9世紀後半から11世紀。または初出は室町時代の謡曲『竹生島』で、平安時代の文献にはないなど、資料によって異なる。資料として次の2冊を紹介。
・『女人禁制』(鈴木正崇/吉川弘文館/2002.3)
・『「女人禁制」Q&A』(源淳子/解放出版社/2005.9)
- 回答プロセス
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1. フリーワード「穢れ」を入れて自館所蔵検索し、ヒットした資料の書誌を確認して次の資料にあたる。
(1)『穢れと神国の中世』片岡耕平/講談社/2013.3)…p34-43ケガレについての記述あり。
(2)『日本女性生活史 第1巻』(女性史総合研究会/東京大学出版会/1990.5」…p181-216に女性の穢れについての記述あり。
(3)『日本歴史の中の被差別民』(網野善彦/新人物往来社/2001.2)…p55-64に「ケガレとハレとケ」についての記述あり。
→以上の検索結果より、「穢れ」について(1)~(3)の資料を紹介。
2. 「女人禁制」の言葉の意味を調べるために、NDC「R380」、「R210」の参考資料にあたる。
(4)『精選日本民俗辞典』(福田アジオ/吉川弘文館/2006.3)…p411に山岳霊場や寺院、神祭の場を聖域として、結界を設けて女性の立入を禁じた。奈良時代から平安時代初期に山林修行が盛んになると、僧侶の修行の妨げとして聖俗を峻別する結界を設けて女性の入山を禁じたとあり。
(5)『日本民俗大辞典 下』(福田アジオ/吉川弘文館/2000.4)…p287-288に(1)と同じ内容の記述あり。仏教では女性は罪深く、仏堂修行の妨げとして、奈良時代から平安時代の初めからの結界内への立入を禁じたと記述あり。
(6)『国史大辞典 11』(国史大辞典編集委員会/吉川弘文館/1990.9)…p265に女性が特定の宗教行事に参加したり、特定の聖域に入ったりすることを禁ずること。仏教が伝来し『法華経』が流布するにつれて、女性には五障がある故、一旦男性に変じて比丘(びく)として修業してはじめて成仏しうるとの思想を根拠に女性が差別されるようになったとの記述あり。開始年の説明は無し。
(7)『岩波日本史辞典』(永原慶二/岩波書店/1999.10)…p415に上記と同様の記述あり。日本では9世紀以後に見られ、12世紀には山々で結界を犯した女性や尼の記録が散見する。
3. フリーワード「女人禁制」状態「在架」で自館所蔵検索し9件ヒット。書誌内容を確認し次の資料にあたる。
(8)『日本女性史大辞典』(金子幸子/吉川弘文館/2008.1)…p557-558古代から中世に寺院や宗教をめぐる場で女性の入山を拒否したり、排除したりする規制もしくは慣行のことで、時代が下がると拡大解釈されて、相撲の土俵やトンネル工事現場の立入を拒むことも含むようになった。女人禁制の成立事情やその時期については、「女人禁制」の四字熟語が史料上に現れるのは中世後期になってからであり、一般にこれが始まったとされる平安時代には所見がないとの記述あり。実態としての女人禁制のわが国での起源は仏教教団が成立した当初から禁制も同時に存在していたとの記述あり。
(9)『女人禁制』(鈴木正崇/吉川弘文館/2002.3)…p25に女人禁制の起源は平安時代に遡るとされ、成立時期は9世紀後半から11世紀後半までさまざまとの記述あり。牛山佳幸によれば、女人禁制の使用例は平安時代にはなく、 中世後期の謡曲『竹生島(ちくぶじま)』初見で、頻出するのは近世初頭。古代文献には女人禁制の用語はないが、女人禁制を通時代的な概念として、古代にも近代にも適用してきた問題点が明らかとの記述あり。
(10)『山岳信仰』(鈴木正崇/中央公論新社/2015.3)…p26に女人結界が文献上の初出は9世紀後半説と11世紀後半説がある。女人禁制の用語は平安時代の文献にはなく、初出は室町時代の謡曲『竹生島(ちくぶしま)』。頻出するのは近世初頭の仮名草子『醒酔笑』や『恨之介』(牛山1996)。女性の地位が低下した時代に女人禁制の表現が使われ始めた可能性が高いとあり。
(11)『「女人禁制」Q&A』(源淳子/解放出版社/2005.9)…p32-33女人結界を早くにしいたのは、平安初期9世紀初めの密教である天台宗や真言宗の山岳仏教。男性修行者が世俗の欲望を断ち切る手段としていたものが、後に女性が生まれながらにして罪深く穢れているものとする罪業観、不浄観から「女人禁制」をしいて、聖地、聖域から女性を排除するようになった。女性を不浄視する理由に出産時の出血の「産穢(さんえ)」、毎月の生理を「血穢(けつえ)」とした。平安前期9世紀半ば以降女性を社会中心がら排除していく社会変動があった。
→以上の検索結果より、「女人禁制」の始まった時期については、奈良時代から平安時代。9世紀後半から11世紀。または初出は室町時代の謡曲『竹生島』で、平安時代の文献にはないなど、資料によって記述が異なる。資料としては(9)(11)を紹介。
- 事前調査事項
- NDC
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- 民間信仰.迷信[俗信] (387 10版)
- 家族問題.男性.女性問題.老人問題 (367 10版)
- 日本史 (210 10版)
- 参考資料
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- B10083494 日本女性生活史 第1巻 女性史総合研究会/編 東京大学出版会 1990.5 367.21 9784130241618
- B10308444 女人禁制 鈴木正崇/著 吉川弘文館 2002.3 387 9784642055383
- B10249407 日本歴史の中の被差別民 網野善彦/ほか[著] 新人物往来社 2001.2 361.86 9784404029041
- B10640139 穢れと神国の中世 片岡耕平/著 講談社 2013.3 210.4 978-4-06-258548-4
- B10548134 精選日本民俗辞典 福田アジオ/編 吉川弘文館 2006.3 380.33 9784642014328
- B10193238 日本民俗大辞典 下 福田アジオ/[ほか]編 吉川弘文館 2000.4 380.33 9784642013338
- B10053097 国史大辞典 11 国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1990.9 210.033 9784642005111
- B10170639 岩波日本史辞典 永原慶二/監修 岩波書店 1999.10 210.033 9784000800938
- B10575779 日本女性史大辞典 金子幸子/編 吉川弘文館 2008.1 367.21 978-4-642-01440-3
- B10665228 山岳信仰 鈴木正崇/著 中央公論新社 2015.3 188.59 978-4-12-102310-0
- B10540942 「女人禁制」Q&A 源淳子/編著 解放出版社 2005.9 387 9784759260984
- キーワード
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- 穢れ
- 女人禁制
- 女人結界
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000273123