レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010年10月22日
- 登録日時
- 2010/12/11 10:16
- 更新日時
- 2011/01/26 09:14
- 管理番号
- 9000006868
- 質問
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解決
高浜虚子が「古壺新酒(ここしんしゅ)」を提唱した経緯を知りたい。
- 回答
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「古壺新酒」は高浜虚子の造語で、昭和5(1930)年に述べられた。この年の11月に名古屋で開かれた第4回関西俳句大会で「古壺新酒」と題する講演を行っている。『定本虚子全集』第6巻(創元社 1949年)に昭和5(1930)年11月2日に行われた講演の内容記録がある。「俳句は容器としては古い壺(形式)に花鳥諷詠という新しい酒(内容)を盛るという主張。虚子自身はこの言葉を「言い得たり」と考えていた。
- 回答プロセス
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1.「古壺新酒」について調べる
・『俳文学大辞典』(尾形仂ほか編 角川書店 1995年)p287には、「俳句用語。高浜虚子が昭和5年(1930)秋の講演で唱えた造語」などとある。
・『現代俳句大事典』(稲畑汀子監修 三省堂 2005年)p224-225には、高浜虚子の造語で昭和5(1930)年に述べた旨記述がある。
2.高浜虚子に関する作家論・作品論、著作を確認する
・『現代日本文學大系』第19巻 高濱虚子・河東碧梧桐集(筑摩書房 1968年)の巻末の年譜p445の昭和5年の項に「十一月、名古屋で開かれた第四回関西俳句大会に出席、「古壺新酒」と題して講演した」とある。
・『高浜虚子研究(近代日本文学作家研究叢書)』(山口誓子ほか編 右文書院 1974年)p207の「『虚子俳話』の研究」に「…「古壺新酒」という言葉に接した時などは…」という記述がある。
・『俳句への道(岩波文庫)』(高浜虚子著 岩波書店 1997年)p80には「古壺新酒」の項があり、「俳句は古壺新酒の文学であるという事は今でも言い得たりと思って居る」とある(出典「玉藻」昭和27年12月)
・その他の作品論には「花鳥諷詠」という項目はあっても「古壺新酒」については記述がなかった。
3.インターネットの「GeNii学術コンテンツポータル」(http://ge.nii.ac.jp/genii/jsp/index.jsp)で「古壺新酒」を検索すると、『虚子俳句問答』(高浜虚子著 角川書店 2001年)がヒットするが未所蔵。
4.自館システムで特集名「高浜虚子」×逐次刊行物で検索し、「国文学:解釈と教材の研究」平成3(1991)年10月号(学燈社)を見るとp79に『虚子俳話録』にある弟子との会話で「後世どんな言葉が残るでしょうか…「古壺新酒」でしょうか」と聞かれた虚子が「まあ「花鳥諷詠」という言葉でも残りますかね」と答えている旨記述がある。
5.以上の調査で、「古壺新酒」は昭和5(1930)年に提唱され、この年の11月名古屋で開かれた第4回関西俳句大会で「古壺新酒」と題する講演を行ったこと、『虚子俳話』に関連の記述があることがわかったので、山梨県内の文学の専門機関である山梨県立文学館(山梨県甲府市貢川1丁目5-35)に調査を依頼した。県立文学館からの回答は次の通り。
・『定本虚子全集』第6巻(創元社 1949年)p437~458に、昭和5(1930)年11月2日に行われた講演の内容記録がある。「これは既に諸方でかういう題で講演いたしました。既にいひ古した説でありますが、多少補綴して申し陳べます」とあるので初出ではないようだ。芭蕉、西行、蕪村、一茶などの俳句を紹介し、「古壺新酒」を提唱している。
・『定本虚子全集』第6巻(創元社 1949年)p497-498には「虚子俳話」の「深は新なり 古壺新酒」の項があり、この言葉について説明している。
・俳誌「ホトトギス」昭和6年1月号(ほととぎす)掲載の「俳句に志す人の為に」中p11に「古壺新酒」の項があり、この言葉について説明している。
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911 9版)
- 参考資料
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- 『俳文学大辞典』(尾形仂ほか編 角川書店 1995年) (p287)
- 『現代俳句大事典』(稲畑汀子監修 三省堂 2005年) (p224-225)
- 『現代日本文學大系』第19巻 高濱虚子・河東碧梧桐集(筑摩書房 1968年) (p445)
- 『俳句への道(岩波文庫)』(高浜虚子著 岩波書店 1997年) (p80)
- 『定本虚子全集』第6巻(創元社 1949年) (p437~458 ※山梨県立文学館所蔵)
- 『定本虚子全集』第6巻(創元社 1949年) (p497-498 ※山梨県立文学館所蔵)
- ホトトギス」昭和6年1月号(ほととぎす) (p11 ※山梨県立文学館所蔵)
- キーワード
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- 古壺新酒
- 花鳥諷詠
- 高浜虚子
- 俳句
- 照会先
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- 山梨県立文学館
- 寄与者
- 備考
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次の資料には「古壺新酒」について記述は見つけられなかった。
・『知られざる虚子』(栗林圭魚著 角川学芸出版 2008年)
・『新潮日本文学アルバム』第38巻 高浜虚子(新潮社 1994年)
・『俳人虚子』(玉城徹著 角川書店 1996年)
・『高浜虚子:定本』(水原秋桜子著 永田書房 1990年)
・『高浜虚子の世界』(『俳句』編集部編 角川学芸出版 2009年)
・『高浜虚子』(富士正晴著 角川書店 1978年)
・『俳句の五十年』(高浜虚子著 中央公論社 1949年)
・『虚子消息』(高浜虚子著 東京美術 1973年)
・『虚子物語:花鳥諷詠の世界(有斐閣ブックス)』(清崎敏郎編 有斐閣 1979年)
・「俳句」平成7(1995)年4月号(角川書店) 特集「高浜虚子とその時代」
・「国文学:解釈と鑑賞」平成21(2009)年11月号(至文堂) 特集「高浜虚子・没後50年」
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 日本文学(現代)詩歌・シナリオ
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000075036