レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011年01月16日
- 登録日時
- 2011/03/03 19:41
- 更新日時
- 2011/03/03 19:42
- 管理番号
- 9000007109
- 質問
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解決
松尾芭蕉の「奥の細道」の冒頭の「月日は百代の過客にして…」という部分は、白楽天の漢詩の影響を受けたものと聞いたが、そのことを確認したい。
- 回答
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白楽天ではなく、李白の「春夜宴桃李園序(春夜桃李園の園に宴するの序)」の一節「夫天地者万物之逆旅、光陰は百代之過客(夫(それ)天地は万物の逆旅(げきりょ)なり、光陰は百代の過客なり)」に拠っている。この文章は「古文真宝後集」巻之三「序類」に掲載がある。
- 回答プロセス
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1.『新編日本古典文学全集』第71巻 松尾芭蕉集(小学館 1997年)の「おくのほそ道」を確認すると、冒頭部分の注に、李白の「春夜二桃園ニ宴スルノ序」の一説(古文真宝後集)に拠ると書かれている。
2.『総合芭蕉事典』(尾形仂ほか編集 雄山閣 1982年)で「李白」の項を見るとp376に「『おくのほそ道』発端の文も『古文真宝後集』に収められた「春夜宴桃李序」に拠りながらも見事に換骨奪胎され…」という記述がある。「白氏」の項には関連の記述はない。
3.「奥の細道」に関する他の資料を調べるが、次のものは、典拠は李白の文章または「古文真宝後集」だとあり、白楽天の詩によるという記述がある資料は見あたらなかった。
・『おくのほそ道(古典を読む)』(安東次男著 岩波書店 1983年)p4
・『おくのほそ道論考:構成と典拠・解釈・読み(笠間叢書)』(久富哲雄著 笠間書院 2000年)p160
・『新芭蕉講座』第8巻 紀行文篇(三省堂 1995年)p172
・『芭蕉ハンドブック』(尾形仂編 三省堂 2002年)p109
・『芭蕉の芸術:その展開と背景』(広田二郎著 有精堂 1968年)p149
4.『新釈漢文大系』第16巻 古文真宝(後集)(明治書院 1978年)で典拠となった李白の文章を確認すると、p101-103に掲載があり、p103には「李白に私淑して初めに桃青と号した松尾芭蕉の俳諧には、李白の詩文に影響された作が多い。有名な『奥の細道』のはじめに…(中略)…とあり、李白のこの序の文章を自家薬籠中の物として駆使した芭蕉の才筆をまた味わうべきであろう」という記述がある。
- 事前調査事項
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『芭蕉研究論稿集成』第2巻(クレス出版 1999年)収載「芭蕉と漢詩文」(伊東月草著)、『芭蕉研究論稿集成』第4巻(クレス出版 1999年)収載「芭蕉に於ける白楽天」(飯野哲二著)、『芭蕉の俤』(平泉澄著 錦正社 1987年)収載「白楽天」
- NDC
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- 詩歌 (911 9版)
- 参考資料
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- 『新編日本古典文学全集』第71巻 松尾芭蕉集(小学館 1997年) (p75)
- 『新釈漢文大系』第16巻 古文真宝(後集)(明治書院 1978年) (p101-103)
- キーワード
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- 「奥の細道」
- 松尾芭蕉
- 李白
- 月日は百代の過客にして
- 「春夜宴桃李園序」
- 「春夜桃李の園に宴するの序」
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 日本文学(古典)
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000081069