レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年04月08日
- 登録日時
- 2013/11/21 18:36
- 更新日時
- 2013/11/21 18:36
- 管理番号
- 9000008392
- 質問
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解決
中世のドイツで、死体を防腐処理するような技術があったのかを知りたい。
- 回答
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中世ドイツにおける死体の防腐処理についての具体例や記述はみあたらなかったが、ヨーロッパにおける死体の防腐処理についての概況は次のとおり。古代ヨーロッパにおいては、キリスト教の宗教観と自然条件により、死体防腐保存のためのすぐれた技術は存在しなかったが、自然ミイラは作られており、ドイツのクドレンベルグ城の礼拝堂にも自然ミイラがある。13世紀にはイタリアのボローニャ大学で世界初の人体解剖が行われ、14世紀には解剖のために保存する死体に防腐処理を施す技術も開発された。15~16世紀にはイギリスで葬儀のためのエンバーミングが流行し、17世紀のフランスでも遺体の防腐処置やそのための遺体解剖は特別なことではなかった。
- 回答プロセス
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1.件名「ミイラ」で検索し、該当資料をピックアップし確認。
・『ミイラ:世界の死者儀礼』(L・デロベール著 六興出版 1980年)第4章「ヨーロッパのミイラ」によると、古代ヨーロッパには、キリスト教の宗教観と自然条件により、死体防腐保存のためのすぐれた技術は存在しなかった。しかし、保存に必要な諸条件が結びついたときには、ヨーロッパの各地で自然ミイラが作られていた。ドイツのクドレンベルグ城の礼拝堂にも自然ミイラがある。
2.件名「エンバーミング」で検索し、該当資料をピックアップし確認。
・『新しい葬送の技術エンバーミング:遺体衛生保全』(公益社葬祭研究所編著 現代書林 2005年)第4章「欧米では長い歴史を持つエンバーミング」によると、中世になると、エジプトのミイラづくりも国力の低下やキリスト教の来世観の影響で次第に行われなくなった。キリスト教が支配的だったヨーロッパ中世においては、肉体に関する関心は極めて薄く、遺体も教会に運ばれるだけだったが、聖人の遺骸だけは特別で、信仰の対象として「インコンラプティブル(不朽の聖人)」と言われるミイラがひそかに作られた。中世も終わりに近づくと、科学的なものの見方が強くなり、13世紀にはイタリアのボローニャ大学で世界初の人体解剖が行われ、14世紀には解剖のために保存する死体に防腐処理を施す技術も開発された。腹腔や内臓の中に防腐効果のある薬草を詰めたり、薬液を注入したりする原始的なものだった。15~16世紀にはイギリスで葬儀のためのエンバーミングが流行した。17世紀のフランスでも遺体の防腐処置やそのための遺体解剖は特別なことではなかった。
3.また、日本遺体衛生保全協会webサイト( http://www.embalming.jp/ ※2012.11.21確認)の「エンバーミングの歴史」のページにも、ヨーロッパにおける防腐処理についての記述があった。
4.解剖学やドイツの医学史に関する次の図書には、中世ドイツにおける死体の防腐処理に関する記述は見当たらなかった。
・『人体観の歴史』(坂井建雄著 岩波書店 2008年)〔資料番号0105351472〕
・『西洋医学史ハンドブック〕(ディーター・ジェッター著 朝倉書店 1996年) 〔資料番号0103040507〕
・『世界医療史:魔法医学から科学的医学へ』(エルウィン・H・アッカークネヒト著 内田老鶴圃 1983年)〔資料番号0100973346〕
- 事前調査事項
- NDC
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- 基礎医学 (491 9版)
- 通過儀礼.冠婚葬祭 (385 9版)
- 参考資料
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- 『ミイラ:世界の死者儀礼』(L・デロベール著 六興出版 1980年) (p123-143)
- 『新しい葬送の技術エンバーミング:遺体衛生保全』(公益社葬祭研究所編著 現代書林 2005年) (p124-128)
- キーワード
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- 死体
- 防腐処理
- エンバーミング
- ミイラ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 医療・健康
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000141063