レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010/07/14
- 登録日時
- 2010/10/13 02:00
- 更新日時
- 2010/10/13 02:00
- 提供館
- 宮城県図書館 (2110032)
- 管理番号
- MYG-REF-100110
- 質問
-
未解決
大正5年6月に、島村抱月と松井須磨子の芸術座が宮城県の仙台と石巻で巡業を行っている。各都市での巡業期間、劇場、上演演目を知りたい。
- 回答
-
1 巡業期間と演目について
資料1のpp.468-469に、大正5年6月3日付の抱月の書簡が所収されています。
以下はその引用です。
(大正5年)
・・・若松二日は好成績なれど、仙台昨夜の初日は二百三十円ほどの不成績、一つは土曜日の前と申不利もありしなれどどうも芸術座の興行係は広告運動が下手のように候、・・・仙台後石の巻一日、郡山一日にて新潟に入り可申候
六月三日
島 村 生
中村大兄机下
「アンナアレニナ」は七月下旬までにほしく八月にこしらへ上げ九月は地方へ出たく存居候「爆発」もよろしく存候
(仙台市国分町 大泉旅館)
上記によると、仙台公演の初日は6月2日、巡業期間は不明、
また、石巻公演の初日は不明、巡業期間は1日の予定とあります。
資料2のpp.170-174に、芸術座の興行場所や演目について記述がありましたので引用します。
「芸術座の解散当時まで所属していた俳優田辺若男の『俳優』には、大正二年九月から七年の十月に至るまでの、芸術座興行総目録一覧表というものが別項のように記載されている。・・・これによって見ると「復活」が四百四十四回で第一位、中村吉蔵の「剃刀」が三百三十五回で第二位、三位は「サロメ」の百二十七回、四位は「嘲笑」の百二十六回ということになっている。
なお巡演した都市としては左のごとくなっている。・・・鶴岡・若松・新庄・郡山・ 酒田・米沢・福島・前橋・弘前・青森・盛岡・仙台・石巻・・・抱月は七年八月に右の公演 目録や巡演地の報告書をつくって、従来の関係者や後援者に送った。」
別項に掲載されている表は演目の上演件数を年ごとに表したものなので、各都市の巡演期間や演目まではわかりませんでした。なお、田辺若男の『俳優』は宮城県図書館には所蔵がないため、確認できませんでした。
資料3に所収されている「芸術座の事」の中で抱月は、芸術座が各方面の後援者に送ったという報告書を再録していますが、この資料でも各都市の巡演期間や演目はわかりませんでした。
資料4に芸術座の地方巡業についての記述がありましたので、引用します。
初めて地方巡業の旅に出たのは大正3年4月、同座が生れた翌年の春、桜花の盛りの時でもあった。・・・地方へ持って下ったのは「復活」を主として、外にワイルドの「サロメ」中村吉蔵氏の「嘲笑」及びチエホフの「熊」などであった。・・・翌5年1月四度び京阪地方から、再び九州に入って、此の度は前回以上に津々浦々まで、巡って行った。第六回は同年七月上州から東北地方を巡業し、更に十月には、五度び京阪地方を巡演した。・・・其の間の開演日数を指折って見れば実に九百日、演(だ)し物の数は三十五種で、巡演した場所は・・・其の数又実に九十五ヶ所とは、全く驚異に値するしだいである。
資料5に東京大阪での公演の演目の記述がありましたので、参考までに大正5年分を引用します。
大坂公演(第4回):大正5年1月26日より7日間午後5時開演 道頓堀浪花座
(1)「与論」1幕
(2)「真人間」3幕
(3)「清盛と仏御前」2幕
第6回公演:大正5年3月26日より6日間午後6時開演 帝劇
(1)「与論」1幕
(2)「真人間」改題「お葉」3幕
(3)「清盛と仏御前」2幕
第1回新劇普及興行:大正5年4月□日より10日間昼夜2回 浅草常盤座
(1)「復活」2幕5場
(2)「サロメ」1幕
特別公演:大正5年4月30日より□日間午後5時開演 明治座
(1)「復活」5幕7場
(2)「サロメ」1幕
野外劇:大正5年5月□日午後1時開演 小笠原伯爵邸庭園
(1)「エヂホス王」1幕
第2回研究劇:大正5年7月5日より5日間午後5時開演 牛込芸術倶楽部
(1)「扉を開け放して」1幕
(2)「闇の力」5幕
特別公演:大正5年8月□日より□日間 両国国技館
「マクベス」3幕12場
第7回公演:大正5年9月26日より5日間午後5時開演 帝劇
(1)「爆発」1幕
(2)「アンナ・カレニナ」6幕7場
第2回新劇普及興行:大正5年10月18日より10日間昼夜2回 浅草常盤座
(1)「樽仙人の誘惑」1幕
(2)「飯」1幕
(3)「新帰朝者」1幕
(4)「サロメ」1幕
第3回新劇普及興行:大正6年1月1日より11日間(大晦日初日)昼夜2回興行 浅草常盤座
(1)「思ひ出」
(2)「剃刀」1幕
2 劇場について
仙台の劇場に関することは、今回調査いたしました資料の中からは、見つかりませんでした。
石巻については資料6に下記の記述がありました。
岡田座
幕末当時、今の橋通りの所にあった芝居小屋「千葉座」は明治15年の内海橋架設工事の際撤去。橋の開通後は仲瀬に移築したが・・・後に岡田谷組八城重兵衛氏の所有となり、岡田座と改称。島村抱月や松井須磨子をはじめ幾多の歌舞伎、新劇の有名俳優が来演した。
資料7~16を調べましたが、大正5年6月の仙台、石巻公演に関する記述は、見つかりませんでした。
<調査資料一覧>
資料1 島村抱月著. 抱月全集8. 日本図書センター, 1979年 (復刻版)【918.6/シ4-2/8】
資料2 河竹繁俊著. 逍遥、抱月、須磨子の悲劇. 毎日新聞社, 1966年 【775.1/カシ665】
資料3 島村抱月著. 抱月全集3. 日本図書センター, 1979年 (復刻版)【918.6/シ4-2/3】
資料4 秋田雨雀・仲木貞一著. 恋の哀史 : 須磨子の一生. 大空社, 1999年 【775.1/マス993】
資料5 田中栄三編. 明治大正新劇史資料. 演劇出版社, 1964年 【775.2/タ1-2】
資料6 佐藤勝雄編. 石巻の大正・昭和. 石巻日日新聞社, 1988年 【K253.3/サ2】
資料7 松井須磨子著. 松井須磨子・牡丹刷毛. 日本図書センター, 1997年 【775.1/マス1997Z】
資料8 倉橋誠一郎著. 新劇年代記 戦前編. 白水社, 1972年 【775.2/ク1-3】
資料9 宮城県史編纂委員会編. 宮城県史3. 宮城県史刊行会, 1987年 (復刻版)【K201/ミ1-2/3】
資料10宮城県史編纂委員会編. 宮城県史14. 宮城県史刊行会, 1987年 (復刻版)【K201/ミ1-2/14】
資料11 仙台市史編纂委員会編. 仙台市史10. 万葉堂書店, 1975年 【K225/セ1-5/10】
資料12 石巻市史編さん委員会編. 石巻の歴史4. 石巻市, 1989年 【K253.3/イ1-2/4】
資料13 島村抱月ほか著. 明治文学全集43. 筑摩書房刊, 1977年 【918.6/メ1/43】
資料14 高山樗牛ほか著. 現代日本文学全集59. 筑摩書房, 1958年 【918.6/ケ3/59】
資料15 島村抱月ほか著. 日本現代文学全集27. 講談社, 1968年 【918.6/ニホ69Z/27】
資料16 川村花菱著. 随筆松井須磨子・芸術座盛衰記. 青蛙房, 1968年 【775.2/マ1】
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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宮城県図書館所蔵の「河北新報」はこの時期が欠けているので、調べられられなかった。
- NDC
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- 演劇史.各国の演劇 (772 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 島村, 抱月
- (シマムラ, ホウゲツ)松井, 須磨子(マツイ, スマコ)
- 芸術座
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000072209