レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015/06/12
- 登録日時
- 2016/10/29 00:30
- 更新日時
- 2016/11/01 10:42
- 管理番号
- 0000001402
- 質問
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解決
太陽や月に顔を描く一番古い事例や由来を知りたい。神話など。
- 回答
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(1)『イメージ・シンボル事典』p225「face 顔」の項によると、顔がすなわち、神の像を表し、太陽や月を表しているという意味を掲載しています。
(2)『シンボルの世界』p120~121には、古代人における太陽、月、星をシンボルとする図版が掲載されていますが、太陽や月に顔を描いた図は掲載されていません。
(3)『天文学の歴史』p69には、「アリスタルコスは太陽が地球の周囲を回るのではなく、地球が太陽の周囲を回っていることを算出したことで有名」というのを説明するために「微笑む月が不機嫌な太陽をおおいかくし、日食を起こして地球をに黒い影を落としている」木版画を紹介していますが、木版画の出展や成立は不明です。
(4)『天体の図像学』第1章「古代ギリシア・ローマの天体」には、西洋における天体を現す古い事例を図版入りで解説しています。しかし、これらをは、天体を神の像で表現しており、太陽や月に顔を書いた表現方法ではありません。
(5)同書第2章「磔刑像の天体」によりますと、p79「これら三点の九世紀半ばから後半にかけて制作された象牙板状の浮彫り作品はすべて「磔刑」を主題とし、キリストの背後あるいは上にふたつの天体を表している。三作すべてにおいて、太陽と月はそれぞれ男性と女性の擬人像で表され、女性は上弦の三日月を、男性は櫛状の冠をそれぞれの頭に載せている点も共通している」とありますが、該当する3点の図版を見ると、丸い円の中に男性・女性の顔が掘り出された形となり、太陽や月を顔に見立てて目鼻が描かれた表現とは異なります。
(6)同書第4章「初期ネーデルラント絵画の天体」に掲載の磔刑図(図19、20)では、太陽と月の目鼻が描かれた表現になっています。同章p153~154には、「イタリアの「磔刑」図においては、十五世紀はおろか、十六世紀になっても、太陽と月には顔が描かれていた」とあり、フランチェスコ・ペゼッリーノによる1440年代の作品(図19)、ラッファエッロによる1500年代の作品(図20)などを例にあげています。
(7)『錬金術図像大全』は、17世紀の錬金術図像を集めた本ですが、顔を描かれた太陽や月の図像がたくさん収録されています。
以上より、太陽や月を顔にみたてて目鼻を描く表現は、9世紀以降15世紀までの間に成立したと考えられますが、この表現の成立に言及した資料を見つけることはできませんでした。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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月については、『月世界大全』『月の本』に記述あり。
- NDC
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- 芸術.美術 (70 9版)
- 参考資料
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- 1 イメージ・シンボル事典 アト・ド・フリース?著 山下/主一郎?[訳者]主幹 大修館書店 1984.3 801.9/29
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2 シンボルの世界 D.フォンタナ?著 阿部/秀典?訳 河出書房新社 1997.12 146.15/10001 -
3 天文学の歴史 ヘザー・クーパー?著 ナイジェル・ヘンベスト?著 東洋書林 2008.11 440.2/10016 -
4 天体の図像学 藤田/治彦?著 八坂書房 2006.1 702.3/10021 -
5 錬金術図像大全 スタニスラス・クロソウスキー・ド・ローラ?著 磯田/富夫?訳 平凡社 1993.6 430.2/36
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000198884