レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/05/16
- 登録日時
- 2014/03/31 00:30
- 更新日時
- 2014/04/02 17:42
- 管理番号
- 参調 13-0256
- 質問
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解決
金原まさ子さんの第4句集『カルナヴァル』の装丁画について、作者やその経歴について知りたい。
- 回答
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『カルナヴァル』の装丁を担当したのは、マルプデザイン社。
デザイナーは同社代表も務めている清水良洋氏(アートディレクションとグラフィックデザイン)。
カバーのモチーフ自体は、17世紀前半のバロック期に活動したイタリアの画家グイド・レーニ(Guido Reni、1575年11月4日-1642年8月18日)の『聖セバスティアヌス』にコラージュを施してデザインされたものを使用している。
聖セバスティアヌスは3世紀のローマ人の殉教者で、暴君により弓矢で一旦は処刑されかけるが、蘇生の後暴君に立ち向かい最終的には殉教する。木に括りつけられて矢を射られた姿は15世紀に盛んに宗教画として描かれた。
古代以来、厄病はアポロンの矢によるものと信じられていたことから、セバスティアヌスの弓矢刑からの蘇生は、当時の流行していた厄病から守る聖人としてよく描かれていたもの。
『カルナヴァル』の元画の製作者であるグイド・レーニについて調査。
『オックスフォード西洋美術事典』には、次のとおり記述されている。
「Reni,Guido(1575-1642) イタリアの画家で、カラッチ一族のすぐ次の世代に属する。(中略)1600年にローマに赴くが、カラヴァッジオとアンニーバレ・カラッチに代表される同地の二大美術潮流とは関係を持たず、ローマでは世紀の後半になるまで普及しなかった繊細な古典主義を代表する最初の一人となった。(後略)」
『西洋絵画名作レファレンス事典』
「1575~1642 16・17世紀、イタリアの画家。ボローニャ派の中心人物。後期マニエリスムから出発し、その後カラバッジョの影響を受けたが、のちに古典主義的な画風となった。」
代表作としては、「オスピリオージ・パルラヴィチーニ宮殿カジノ天井画-アウローラ」「アウローラ」が挙げられているが、『聖セバスティアヌス』は挙げられていない。
当時、『聖・・・』は画題として多く用いられたものではあるが、レーニの代表作として知られたものでもなく、レーニ自体もそれほど注目される画家とはいえないようである。
では何故、装丁の題材に用いられたのかということについては、レーニの『聖セバスティアヌス』を好んだのが三島由紀夫と言われているので、次のインターネットサイトからの情報を紹介。
『公開トーク「セバスチャンから浮世絵まで 三島由紀夫の愛した美術 」(講師/宮下規久朗、佐藤秀明、井上隆史) 第3回 三島由紀夫文学館・レイクサロン 2006年11月5日 場所:徳富蘇峰館』
→「(佐藤)三島由紀夫と美術というテーマは、今まであまり論じられたことがありません。しかし、グイド・レーニ(1575~1642。バロック期に活躍したイタリアの画家。ボローニャ派の代表的存在で、カラッチ派の折衷主義的な画風やカラヴァッジョの影響を受けた)の「聖セバスチャンの殉教」(図1)に強い関心を示していたことからもわかるように、三島と美術との関係は、浅くはありません。(略)(宮下)この写真以前に三島が好んだのはグイド・レーニのセバスチャン(図2)で、ダンヌンツィオの『聖セバスチァンの殉教』を翻訳した時には(昭41・9、美術出版社)、そのカラー画像を収録しました。これには矢が三本あって、篠山が撮った三島の扮装写真と同じです。お腹のところに矢があるので、覚えておいて欲しいと思います。ローマのカピトリーノ美術館 Museo Capitolino にあるもので、三島はキャピトール美術館と書いてますが、彼が実見したものですね。(略)」
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 芸術史.美術史 (702 7版)
- 参考資料
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- 1 西洋絵画名作レファレンス事典 1 中世?19世紀中葉 日外アソシエーツ株式会社?編集 日外アソシエーツ 2009.9 703.1/SE/1 「レーニ,グイド」p.476
- 2 オックスフォード西洋美術事典 講談社 1989.6 703.3/O 「レーニ グイド」p.1222-123
- 3 キリスト教美術シンボル事典 ジェニファー・スピーク?著 中山/理?訳 大修館書店 1997.6 702.099/KI 「聖セバスティアヌス」p206-208
- 4 キリスト教美術図典 柳宗玄,中森義宗∥編 吉川弘文館 1990.9 702.099/KI
- 5 キリスト教美術図典 柳宗玄,中森義宗∥編 吉川弘文館 1990.9 702.099/KI 「矢」p.429-430
- 1 三島由紀夫全集 25 戯曲 三島/由紀夫?著 新潮社 2002.12 918.6/MI/25 「聖セバスチァンの殉教」所収
- 2 三島由紀夫事典 松本/徹?編 佐藤/秀明?編 勉誠出版 2000.11 910.268/MI 「聖セバスチャンの殉教」p.203
- 3 三島由紀夫全集 34 評論 三島/由紀夫?著 新潮社 2003.9 918.6/MI/34 「『聖セバスチァンの殉教』あとがき」所収
- 4 カルナヴァル 金原/まさ子?著 草思社 2013.2 911.368 未収蔵
- キーワード
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- 装丁
- 宗教画
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事項調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000151679