レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/03/18
- 登録日時
- 2017/03/19 00:30
- 更新日時
- 2017/03/22 09:33
- 管理番号
- 千県中参考-2016-45
- 質問
-
解決
「外交関係に関するウィーン条約」22条2項をめぐって、過去に問題となった事例はあるか。
- 回答
-
実際の裁判で問合せの条文が引用された事例として、次の3件が見つかりました。参考資料とともに紹介します。
(事例1)「在テヘラン米国大使館員人質事件」
【資料1】『プラクティス国際法講義』(柳原正治編 信山社出版 2013)
p159「22条2項の重大な義務に違反したと認定した(1980年米国大使館人質事件ICJ判決)」。
p176「先の米国大使館人質事件では、(中略)イランは、ウィーン外交関係条約22条2項の適当な措置をとる義務等に違反した。」
【資料2】『国際法』(浅田正彦編著 東信堂 2013)
p328「(前略)22条2項の違反となる。1980年のICJ在テヘラン米国大使館事件判決で、ICJによりこのような認定がなされた。」
【資料3】『講義国際法』(小寺彰編 有斐閣 2010)
p215「在テヘラン米国大使館員人質事件で、ウィーン外交関係条約22条2項の「適当なすべての措置」をとる義務の違反(適当な措置をとらないこと、不作為による違反)を認定した。」
【資料4】皆川洸「テヘランにおける合衆国の外国職員および領事機関職員に関する事件」(『国際法外交雑誌』79巻4号)p67-99
p87下段やp90下段において、イラン政府の不活動は外交関係に関するウィーン条約第22条2項の違反を構成するということが述べられています。
なお、国際司法裁判所の公式サイトで本件の関連資料を参照できます(英文)。
1979年「United States Diplomatic and Consular Staff in Tehran (United States of America v. Iran)」
(http://www.icj-cij.org/docket/index.php?p1=3&p2=3&code=usir&case=64&k=c9&p3=0)
(事例2)「執行停止申立事件」
(昭和42年11月23日、東京地方裁判所、昭和42年(行ク)52号)
「D1-Law.com判例体系」の要旨によれば本件は、
「外国公館前を進路とする集団示威運動が、外交関係に関するウィーン条約(昭和三九年六月二六日条約一四号)二二条二項にいう「公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害」を生じ、行政事件訴訟法二五条三項にいう「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」ものとは認められないとされた事例」です。
【資料5】「行政処分執行停止申立事件」(『行政事件裁判例集』18巻11号)p1465-1485
【資料6】「都公安条例に基づく集団示威行進の許可に付された条件および不許可処分の効力を停止した事例」(『判例時報』501号)p52-57
(事例3)
【資料7】枦山茂樹「条約に対する憲法の優位性 合衆国と日本」(『熊本学園大学経済論集』21巻1-4号)p129-144
p133-134「Boos v. Barry (1988) では、大使館周辺で外国政府の評判を貶めるような掲示を出すことを禁止する法律の合憲性が争われた。連邦最高裁は当該法律が、パブリック・フォーラムでの政治的言論に対する内容規制であると認定した。そして厳格審査を行い、他国外交官の尊厳を守ることが「やむにやまれぬ政府利益」といえるかどうかを検討した。これはウィーン外交関係条約22 条2 項に基づく国際法上の義務でもある。裁判所はReid 判決を基にしつつ、第1修正との関係で制約は正当化されないと判断した。」
本件の詳細が次のサイトに載っています(英文)。
Cornell University Law School「Legal Information Institute」「Boos v. Barry」
(https://www.law.cornell.edu/supremecourt/text/485/312)
なお、アメリカの判例を調べるにあたっては次のサイトが参考になります。
国立国会図書館リサーチ・ナビ「アメリカ合衆国-判例」
(http://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/US-Courts.php)
(インターネット最終アクセス:2017年1月31日)
- 回答プロセス
-
まず、外務省ホームページ「条約データ検索」(http://www3.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/)により問合せの条文を確認しました。
「外交関係に関するウィーン条約」(昭和39年条約第14号)第22条第2項
「接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。」
続いて、自館の書架NDC329(国際法)付近で関連資料を確認して、【資料1】から【資料3】を見つけました。
以下の資料にも本件の解説が載っていますが、「ウィーン外交関係条約」という言葉のみで「22条2項」という明示はありませんでした。
『国際法資料集』(西谷元編著 日本評論社サービスセンター 2016)
p91-92「テヘラン事件(本案)ICJ判決(1980年)」
『国際法基本判例50』(杉原高嶺編 三省堂 2014)
p114-117「在テヘラン米国大使館事件」
『判例国際法』(松井芳郎編集代表 東信堂 2006)
p427-431「在テヘラン米国大使館事件」
『国際法判例百選 第2版』(『別冊ジュリスト』204号 有斐閣)
p126-127「在テヘラン米国大使館員人質事件」(国際司法裁判決 1980年5月24日)
『国際司法裁判所 第2巻 判決と意見 1964-93年』(国際書院 1996)(県立図書館所蔵なし。県内市町村立等図書館所蔵)
p148-159「テヘランにおけるアメリカの外交職員および領事職員に関する事件 アメリカ大使館員人質事件」
ただし、上記の資料中に挙げられていた参考文献から【資料4】の書誌情報を得ました。
レファレンス協同データベース事例「国際司法裁判所の判決を調べたい」(近畿大学中央図書館)(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000053541)から、国際司法裁判所の公式サイトの存在を確認しました。
また、オンラインデータベース「D1-Law.com判例体系」(第一法規)で問合せの条約名及び条番号を参考に検索したところ、(事例2)の判例が見つかり、その出典として【資料5】【資料6】が挙げられていました。
さらに、インターネットで「外交関係条約」「22条2項」「判決」「site:ac.jp」等のキーワードを組み合わせて検索したところ、【資料7】を見つけました。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 国際法 (329 9版)
- 参考資料
-
- 【資料1】『プラクティス国際法講義』(第2版 柳原正治編 信山社出版 2013)(0106406703)
- 【資料2】『国際法』(第2版 浅田正彦編著 東信堂 2013)(0106472558)
- 【資料3】『講義国際法』(第2版 小寺彰編 有斐閣 2010)(0106227981)
- 【資料4】皆川洸「テヘランにおける合衆国の外国職員および領事機関職員に関する事件」(『国際法外交雑誌』79巻4号 1980.10)(0502573858)
- 【資料5】「行政処分執行停止申立事件」(『行政事件裁判例集』18巻11号 1968.3)(0500014799)
- 【資料6】「都公安条例に基づく集団示威行進の許可に付された条件および不許可処分の効力を停止した事例」(『判例時報』501号 1968.1)(0500014799)
- 【資料7】枦山茂樹「条約に対する憲法の優位性 合衆国と日本」(『熊本学園大学経済論集』21巻1-4号 2015.3)(http://jairo.nii.ac.jp/0287/00000526)
- キーワード
-
- 条約(ジョウヤク)
- ウィーン外交関係条約(ウィンガイコウカンケイジョウヤク)
- 外交関係ウィーン条約(ガイコウカンケイウィンジョウヤク)
- 外交関係に関するウィーン条約(ガイコウカンケイニカンスルウィン)
- 大使館(タイシカン)
- 国際法(コクサイホウ)
- 国際司法裁判所(コクサイシホウサイバンショ)
- 判例(ハンレイ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 法情報
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000212273