レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018/03/15
- 登録日時
- 2018/12/10 00:30
- 更新日時
- 2018/12/11 10:09
- 管理番号
- 千県東-2018-0001
- 質問
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解決
深田久弥の言葉で「百の頂に百の喜びあり」という言葉がある。これはゲーテの詩からの引用だと聞いたことがあるが、そのことについて書かれた本はあるか。また、そのゲーテの詩がドイツ語で書かれている本が見たい。
- 回答
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質問にあったゲーテの詩は以下の資料の記述より、「旅人の夜の歌」(原題:Wandrers Nachtlied)ではないかと思われます。
【資料1】飯島斉「ゲーテと深田久弥―「なべての頂に憩あり」から「百の頂に百の喜びあり」まで―」『深田久弥の研究 読み、歩き、書いた』(深田クラブ編 新ハイキング社 1999)p.54-63
p.54「深田久弥(以下久弥という)はゲーテの詩「旅人の夜の歌」を愛し、(中略)「百の頂に百の喜びあり」は、ゲーテの「旅人の夜の歌」の、良い意味での、パロディでもある。」とあり、「なべての頂の上に憩あり」という一文から始まる「旅人の夜の歌」(日本語のみ)が掲載されています。
しかし、「旅人の夜の歌」からの引用であると、深田氏が直接言及したかについては、記述がありませんでした。
また、【資料1】の記述から以下の【資料2】~【資料3】を確認したところ、ドイツ語で書かれた「旅人の夜の歌」が掲載されていました。
【資料2】「G・S・L倶楽部」『雪山の一週間』(深田久弥著 スキージャーナル 1971)p.37-68
p.45「皆は声を揃えてシューベルトの「なべての頂にのみ憩いあり」を歌い出した。」(以下、ドイツ語の詩が掲載されており、詩の最後に(Goethe)の表記あり)
【資料3】「なべての頂の上に」『雪山の一週間』(深田久弥著 スキージャーナル 1971)p.69-86
p.71「誰もいない山頂で、二人は太古の青年と乙女のように、声を合せて歌った。」(以下、ドイツ語の詩と日本語訳が掲載されている)
なお、「旅人の夜の歌」は以下の【資料4】および【資料5】にも収録されています。日本語の表現は【資料1】~【資料3】と異なりますが、ドイツ語の表現は同じだったので、同一の詩であると判断しました。
【資料4】『旅人の夜の歌 ゲーテとワイマル』(小塩節著 岩波書店 2012)
まえがきに「旅人の夜の歌」が日本語とドイツ語で掲載されています。
またこの【資料4】から、ゲーテの詩で「旅人の夜の歌」というタイトルがついた作品は二篇あることが分かり、「なべての頂の上に憩あり」の詩は、第二の詩として掲載されていました。
【資料5】『ゲーテ詩集』(ゲーテ著 小沢書店 1996)
p.51-52「旅びとの夜の歌(二)」
日本語の詩とドイツ語の詩が掲載されています。
また、国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館内公開)で閲覧することのできる「旅人の夜の歌」の第二の詩の中で、ドイツ語での掲載を確認できたものは以下のとおりです。
【資料6】手塚富雄「ゲーテ詩集」『近代文学鑑賞講座 第21巻』(角川書店 1961)p.86-88(47-48コマ)永続的識別子info:ndljp/pid/1344394
【資料7】『ゲーテ抒情詩抄』(佐藤通次訳 元々社 1954)p.52-53(34コマ)永続的識別子info:ndljp/pid/1692406
【資料8】『佐藤ドイツ語講座 第1巻』(佐藤通次著 白水社 1950)p.128-129(70コマ)永続的識別子info:ndljp/pid/2459177
【資料9】『ドイツ詩評釈 第2(小鳥もおしゃべりしないでね)』(万足卓訳著 郁文堂 1961)p.44-45(25コマ)永続的識別子info:ndljp/pid/1696158
- 回答プロセス
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千葉県立図書館の蔵書検索システムを件名「深田久弥」で検索し、『深田久彌その山と文学』(近藤信行著 平凡社 2011)を確認するが、「百の頂に百の喜びあり」の言葉について、「ゲーテの詩句を、自分にひきよせてもじったものにちがいない」(p.10)とあるだけで、詩の題名までは分からなかった。次に検索エンジンGoogleで「深田久弥 ゲーテ」で検索すると【資料1】を紹介した「深田クラブ」のページ(http://fukata-club.jp/kaiin-katsudou/fkenkyu.html)がヒットした。【資料1】の記述から【資料2】【資料3】を確認し、千葉県立図書館の蔵書検索システムを全項目「旅人の夜の歌」で検索し、【資料4】を確認した。また、東部図書館で所蔵しているゲーテの詩集を確認し、【資料5】を見つけた。さらに国立国会図書館デジタルコレクションで、「旅人の夜の歌」をキーワードに検索し、【資料6】~【資料9】を確認した。
また、確認のため、【資料1】に掲載されていた、以下の資料を他館から取り寄せた。
『深田久弥の幼少年時代』(山下久男編 加賀市立図書館内深田久弥文学碑建立委員会 1974)
【資料1】にあるとおり、p.29「(7)語録」に「深田久弥が書名、揮毫と求められるとよく書かれた語句」として、「なべての頂きに憩ありき」があげられていた。
なお、千葉県立東部図書館所蔵の以下の資料には、「旅人の夜の歌」の第一の詩しか掲載されていなかった。
『ゲーテ全集1』(ゲーテ著 潮出版社 1979)2100521256
『ゲーテ全集1』(ゲーテ著 潮出版社 2003)2101638450
『ゲーテ詩集』(ゲーテ著 白凰社 1983)9100932290
(参考)
以下の資料を確認しましたが、直接回答につながる記述はありませんでした。
『日本百名山 新装版』(深田久弥著 新潮社 1991)9100019422
『山頂の憩い』(深田久弥著 新潮社 1971)9104491238
『瀟洒なる自然』(深田久弥著 新潮社 1967)9104094292→p.11に「それはゲエテの詩にある通り「なべての頂に憩いあり」」との記述があるが、詩の全文引用はない。
- 事前調査事項
- NDC
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- ドイツ文学 (940 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】飯島祭「ゲーテと深田久弥―「なべての頂に憩あり」から「百の頂に百の喜びあり」まで―」 (『深田久弥の研究 読み、歩き、書いた』(深田クラブ編 新ハイキング社 1999)他館資料)
- 【資料2】「G・S・L倶楽部」 (『雪山の一週間』(深田久弥著 スキージャーナル 1971))
- 【資料3】「なべての頂の上に」 (『雪山の一週間』(深田久弥著 スキージャーナル 1971))
- 【資料4】旅人の夜の歌 小塩 節/著 岩波書店
- 【資料5】ゲーテ詩集 ゲーテ/[著] 小沢書店
- 【資料6】手塚富雄「ゲーテ詩集」『近代文学鑑賞講座 第21巻』(角川書店 1961)p.86-88(47-48コマ)国立国会図書館デジタルコレクション永続的識別子info:ndljp/pid/1344394
- 【資料7】『ゲーテ抒情詩抄』(佐藤通次訳 元々社 1954)p.52-53(34コマ)国立国会図書館デジタルコレクション永続的識別子info:ndljp/pid/1692406
- 【資料8】『佐藤ドイツ語講座 第1巻』(佐藤通次著 白水社 1950)p.128-129(70コマ)国立国会図書館デジタルコレクション永続的識別子info:ndljp/pid/2459177
- 【資料9】『ドイツ詩評釈 第2(小鳥もおしゃべりしないでね)』(万足卓訳著 郁文堂 1961)p.44-45(25コマ)国立国会図書館デジタルコレクション永続的識別子info:ndljp/pid/1696158
- キーワード
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- ゲーテ・ヨハン・ヴォルフガング・フォン(ゲーテ・ヨハン・ヴォルフガング・フォン)
- Goethe Johann Wolfgang von(ゲーテ・ヨハン・ヴォルフガング・フォン)
- 深田久弥(フカダキュウヤ)
- ドイツ詩(ドイツシ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌的事項調査
- 内容種別
- 一般
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000248018