レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年03月25日
- 登録日時
- 2015/03/25 15:30
- 更新日時
- 2019/09/06 13:29
- 管理番号
- 076
- 質問
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解決
「名月姫」の伝説について調べたい。また、名月姫の子孫がいるのかどうか知りたい。
- 回答
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尼崎市の尾浜八幡神社に名月姫の墓と伝えられる宝篋印塔(ほうきょういんとう)があります。また、大阪府能勢町の名月峠にも、名月姫の墓と伝えられる宝篋印塔があります。伝説のうえで、前者が名月姫の実家、後者が嫁ぎ先にあたります。この二つの地域でそれぞれ名月姫にまつわる伝承が伝えられています。
〔名月姫の伝説〕
名月姫は、摂津国御園之荘(みそののしょう)浜村の土豪三松刑部左衛門尉国春(治)(みまつぎょうぶざえもんのじょうくにはる)の娘といわれています。国春夫妻は、子どもができなかったのですが、鞍馬山で願掛けをしたところ、子どもを授かることができました。8月の十五夜に出生したので「名月姫」と名づけられました。名月姫は容姿端麗に育ち、父母の愛を一身に受けていましたが、その後能勢蔵人家包(のせのくらんどのいえかね)の妻となります。
名月姫のその後について、伝えられる内容は様々です。大きくわけて、3つの内容があります。
(1)名月姫は家包に奪われて妻となったとされます。父国春は娘が行方しれずとなったことを悲観し、出家します。そして諸国行脚の旅に出たところ、兵庫津・築島の造成のための人柱として捕らえられてしまいました。父の危機を知った名月姫と家包が、救出のため兵庫に向かったところ、清盛の寵児・松王丸が代わりに犠牲となったため、国春は無事人柱から逃れることができました。その後国春は故郷に帰り、大日堂圓福寺を建て、名月姫の死後墓を建てたといわれています。
(2)能勢の住人能勢家包の妻となったのち、名月姫は、能勢の山あいで安穏な日々を送っていました。ふとしたことから平清盛に見初められ、側室として迎えられることになりましたが、名月姫は悲嘆に暮れ、清盛のもとに籠で運ばれる道すがら、自害しました。それ以後、この峠を「名月峠」(大阪府能勢町)とよぶようになり、峠の墓所には名月姫・夫家包・父国春の石塔が建てられたと伝えられます。
(3)父国春が諸国を旅し、人柱として捕らえられたところまでは(1)と同じですが、父の助命嘆願を清盛に対して行ったところ、名月姫は清盛に見初められてしまい、あらがいきれず自害したと伝えられます。
『立花志稿』によると、名月姫の父三松国春の末裔とされる、三松武次郎氏のもとに「御津松氏家継之由緒」という由緒書があるとされ、その全文が掲載されています。
- 回答プロセス
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1 名月姫の伝説及び史跡(宝篋印塔)について記した文献及びWEBサイト
◆『尼崎地域史事典』p404、p288~289、p97 /Web版尼崎地域史事典"apedia"
項目「名月姫」「伝名月姫墓宝篋印塔」「尾浜」
◆『図説 尼崎の歴史』上巻 p75/Web版図説尼崎の歴史
中世編第1節「中世社会の形成」のうちの「この節を理解するために」「伝名月姫宝篋印塔」(田中文英氏執筆)
◆寺阪五夫編『立花志稿』p177~180、p257~259、p261~265
「大日堂圓福寺」「三松刑部左衛門居跡」「名月姫遺跡」
◆『尼崎市史』第10巻 p45~47
「尾浜八幡神社の伝名月姫墓宝篋印塔」
◆尼崎郷土史研究会々報『みちしるべ』第34号(尼崎の伝説特集号2)P18~19
「名月姫」「国春の山荘の古跡」の項目
◆『尼崎の民話 第一集 きつねのよめいり』p27~29
「名月姫」
◆山上一子『尼の散歩道』p36
「伝説『名月姫哀話』」
◆畠田繁太郎『尼崎今昔物語』p261~265
「名月姫と瓢逸紹秀坊」
◆『能勢町史』第5巻 p456~460
「名月姫(一)」「名月姫(二)」
2 名月姫の伝説について記した史料
◆寺阪五夫編『立花志稿』掲載
「摂津国河邊郡御園荘尾濱村圓福寺大日如来之来由」(p177~179)
「御津松氏家継之由緒」(p257~259)
※『能勢町史』第5巻にも同史料が掲載。名月姫の伝説が記される。
◆『摂津名所図会』巻六
「名月姫塔(めいげつひめのたふ)」に宝篋印塔についての記述がある(川辺郡尾浜村)。
「名月峠(めいげつたうげ)」に石塔についての記述がある(能勢郡田尻村・柏原村)
◆『摂陽群談』巻第九
「国春塔・名月女塔・家包塔」に石塔についての記述がある(能勢郡田尻村・柏原村)。
「国春塔」に宝篋印塔についての記述がある(川辺郡尾浜村)。
◆『摂津志』(「摂津国之十三」能勢郡)
「陵墓」「石塔」に記述がある(能勢郡柏原村)。
- 事前調査事項
- NDC
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- 近畿地方 (216 9版)
- 日本 (291 9版)
- 伝説.民話[昔話] (388 9版)
- 参考資料
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尼崎市立地域研究史料館編集 , 尼崎市立地域研究史料館 , 尼崎市. 尼崎地域史事典. 尼崎市, 1996-03.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002486437-00 (当館請求記号 219/A/ア) -
尼崎市立地域研究史料館/編. 図説尼崎の歴史 上巻. 尼崎市, 2007.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000923444-00 (当館請求番号 219/A) -
寺阪 五夫 編輯 , 寺阪‖五夫. 立花志稿. 立花村役場, 1940.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I046047493-00 (当館請求番号 219/A/テ) -
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http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000026316-00 (当館請求番号 219/A) -
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岡田蹊志 著 , 岡田‖〓志. 摂陽群談 上. 歴史図書社, 1969.
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蘆田伊人 編 , 蘆田伊人 編. 五畿内志. 巻之1−61. 雄山閣出版, 1929. (大日本地誌大系)
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尼崎市立地域研究史料館編集 , 尼崎市立地域研究史料館 , 尼崎市. 尼崎地域史事典. 尼崎市, 1996-03.
- キーワード
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- 名月姫
- 尾浜
- 三好国春
- 能勢家包
- 尼崎の伝説
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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Web版尼崎地域史事典"apedia"
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/apedia/
Web版図説尼崎の歴史
http://www.archives.city.amagasaki.hyogo.jp/chronicles/visual/index.html
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000169883