レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2008/07/31
- 登録日時
- 2009/05/01 02:11
- 更新日時
- 2009/05/01 02:11
- 管理番号
- B2008M1069
- 質問
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解決
飼育業に用いられるエコフィード(残飯資料)のマイナス面が書かれた本やサイトを探しています。
- 回答
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ご照会の事項について、NDL-OPAC(http://opac.ndl.go.jp/index.html)をタイトル「エコフィード」や「食品残さ 飼料」、件名「飼料」などのキーワードで検索し、ヒットした資料を中心に調査しました。そのうち、エコフィードの安全性や問題点に関する記述があった資料を次の通りご紹介します。(書誌事項の【 】内は当館請求記号)
・『有機性資源の餌・飼料化の現状と課題』 (日本有機資源協会事務局 2003.11【RB531-H39】)
「第3章 餌・飼料原料」の「第1節 餌・飼料としての安全性」(pp.21-32)では、食品廃棄物を原料として家畜の飼料を製造する際に必要な考えを基本として、安全性に関する問題点を指摘していす。p.23では、餌・飼料の製造流通過程における有害物質汚染の可能性を図とともに示しており、例えば原料の段階では微生物汚染や異物混入の可能性があることなどが記述されています。p.25-30では、カビやマイコトキシンなど、食品廃棄物を利用した飼料に発生する可能性のある安全阻害要因を解説しています。また、pp.30-32では、加工食品などに含まれる脂質の酸化生成物に関する問題を取り上げ、劣化程度や過酸化脂質の毒性障害などについて解説しています。
・『中央畜産技術研修会時事問題. 平成17年度 2』 (農林水産省生産局 2005【DM411-H1】)
平成17年9月に行われた中央畜産技術研修会の資料です。pp.87-107の「リサイクル飼料の安全性確保」(研修の講義で用いたパワーポイント資料をそのまま掲載しているようです)では、リサイクル飼料の安全性確保に関する法令の要点を掲載しています。このうち、p.98には、「リサイクル飼料のリスク」という記述があり、残飯などの残さによるリスクについて、次の5点が挙げられています。
・有害物質(残留農薬、かび毒、重金属等)
・有害微生物(サルモネラ等)
・家畜疾病の感染源(BSE、豚コレラ、鶏インフルエンザ等)
・遺伝子組換え体の混入
・きょう雑物
・『未利用有機物資源の飼料利用ハンドブック』 (阿部亮〔ほか〕編 サイエンスフォー 2000.12【RB531-G47】)
食品製造副産物、都市厨芥、農場残渣、海産物残渣などを飼料として利用する際の技術や社会科学的な基盤整備などについて解説しています。pp.197-213の「第5章飼料としての安全性」では飼料などを汚染する危険性の高い有機微生物やカビ、生ごみに含まれる重金属の分量、腐敗しやすい厨芥類などの管理法、脂質酸化物の家畜への影響と測定法などについて解説しています。
以上のほか、NDL-OPACの雑誌記事索引や当館で契約している科学技術文献データベースJDreamIIで、エコフィードや食品残さの飼料利用に関する雑誌記事や論文を調査しました。エコフィードの問題点について言及のあった記事をご紹介します。
・山谷昭一:「「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」の概要」
(『畜産コンサルタント』 43(4)(508) 2007.4 【Z18-709】 pp.14-16)
2006年8月に制定された「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」の概要を解説しています。その中の「リスクに応じた管理」で、「食品残さ等利用飼料の主なリスクとしては、畜産物を介して人に影響を及ぼすものが考えられる」との記述があり、具体例として、「細菌、ウイルス等病原微生物汚染(豚コレラ、口蹄疫、サルモネラなど)」や「洗剤、殺虫剤、医薬品等の化学物質および重金属の混入」などが挙げられています。
・宮崎茂:「自給飼料の安全性確保とガイドラインの制定」 (『畜産の研究』 61(1) 2007.1 【Z18-530】 pp.134-140)
自給粗飼料および食品残さ利用飼料の安全性確保に特有の問題について概説しています。「4. 食品残さ利用飼料の安全性確保に関する問題点」では、「食品残さは本来人間が食べるものの一部であるから、排出時点では基本的に安全である」としながらも、「しかし、食品残さは水分含量の高いものが多く、腐敗菌が増殖しやすい。また、一度食卓に出された残さでは、割り箸、爪楊枝、たばこ、プラスチック類などの異物が混入するおそれもある」としています。食品残さの危害要因について、細菌やカビの増殖、家畜伝染病の媒介、混入物、化学物質の4種に分けて解説しています。なお、この記事はインターネット上で公開されており、下記のアドレスで閲覧可能です。
http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/society/73-2439.pdf
・川島知之:「食品残さ飼料化の技術的課題」 (『畜産の研究』 61(1) 2007.1 【Z18-530】 pp.129-133)
食品残さの飼料化について解説しています。「食品残さは水分含量が多く、雑菌が増殖しやすいものが多い」などの問題点を指摘し、排出から処理調製がなされるまで、安全対策が強く求められると述べています。この記事もインターネット上で公開されており、下記のアドレスで閲覧可能です。
http://rms1.agsearch.agropedia.affrc.go.jp/contents/JASI/pdf/society/73-2438.pdf
また、当館で契約している新聞記事データベース「ヨミダス文書館」でエコフィードに関する記事を検索したところ、エコフィードの安全性に関して触れている記事がありましたのでご紹介します。
・「[食ショック]飽食のコスト 売れ残りをえさに再加工」 (2008.6.19 東京朝刊 34頁掲載)
千葉県の養豚業を営む農場が、エサの6割を食品リサイクルの飼料で賄うようになったことを紹介する記事です。記事中では、「何が使われているか不安」や「期限切れの食品が飼料なんて、体に良くなさそう」などの理由でエコフィード肉を「購入したいと思わない」人がいるという調査結果を紹介しています。この結果に関して、「ミニストップは「(リサイクルに回す目安である)販売期限は、消費期限より手前に設定してあり、その消費期限も本来食べられる期限よりは短い。品質に不安はない」と断言し、在田さん(農場経営者)も「腐っていたら鼻の敏感な豚は食べません」と話す」や「食品のリサイクルに詳しい東京農業大の牛久保明邦教授(環境科学)は「売れ残りを使っていることに、消費者が神経質になりすぎている面がある。温度管理も行われており、健康や安全への影響はない」と話す」などの関係者や識者の見解が紹介されています。
・「「食ショック」読者の反響 飽食の実態、嘆く声 もったいない精神どこへ=特集」
(2008. 07. 05 東京朝刊 15頁掲載)
飼料のリサイクルに関する上記の記事に対する読者からの反響と、それに対する識者の回答が掲載されています。 読者からの「弁当を餌にして育った豚の肉を食べると、弁当に含まれていた添加物も食べることになるのでしょうか。健康に影響がないか心配です」という疑問に対して、「内閣府の食品安全委員会で、飼料の安全性などを検討する専門調査会の座長を務める唐木英明・東大名誉教授(毒性学)によると、動物実験で体内に蓄積しないことが分かった物質だけが食品添加物として使用を認められており、人間でも動物でも、添加物は主に肝臓で代謝され、尿と一緒に体外に排せつされるということです。食品に使われている添加物は微量であり、「豚の肉に添加物が蓄積しているという心配はありません」とのことでした」という回答が掲載されています。 また、「残り物の中に豚肉の製品が入っていれば、豚が豚肉を食べることになる。危険ではないのでしょうか」という疑問に対しては、「富田武・名古屋大名誉教授(家畜育種学)は「飼料の原料に豚肉が含まれていたとしても、豚がそれを食べて遺伝的に影響を受けることはありません」と話しています。高野克己・東京農大教授(食品化学)も「豚が鶏肉を食べても、牛肉を食べても、そのたんぱく質を摂取しているのであって、豚肉でも同じ。心配いりません」とのこと」との回答が示されています。
インターネットの最終アクセス日は2008年7月28日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 畜産業 (640)
- 参考資料
- キーワード
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- 農林水産学
- 畜産
- 飼養
- 飼料
- エコフィード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 公共図書館
- 登録番号
- 1000054350