レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
提供館 (Library) | 埼玉県立久喜図書館 (2110009) | 管理番号 (Control number) | 埼熊-2013-050 | |||||
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事例作成日 (Creation date) | 2013年06月01日 | 登録日時 (Registration date) | 2013年11月18日 14時49分 | 更新日時 (Last update) | 2014年01月29日 11時44分 | |||
質問 (Question) | 「無私の日本人」(磯田道史著 文藝春秋 2012)の中に、「日本人は素晴らしいと宝物を発見したかのように報告した戦国時代の宣教師がいた」とある。 1 その宣教師とは誰か。 2 その報告書があれば見たい。 | |||||||
回答 (Answer) | 人物の特定はできなかったが、戦国時代に来日し、日本人に好意的な記述を残した宣教師は、以下のとおりだった。 フランシスコ・ザビエル(生没年1506-1552) 「この国の人びとは今までに発見された国民の中で最高であり、日本人より優れている人びとは、異教徒のあいだでは見つけられないでしょう。彼らは親しみやすく、一般に善良で悪意がありません。驚くほど名誉心の強い人びとで、他の何ものよりも名誉を重んじます。」(『聖フランシスコ・ザビエル全書簡 3』p96より) アレッサンドロ・ヴァリニャーノ(生没年1539-1606) 「日本人は世界で一番利口な国民である。理性が教えることに従うことを愛し、したがってわれわれよりすぐれている。(中略)人にはひどく寛大で、改悛の情を持ち、信仰を大切にする。また、外面的形式を大いに尊重する。」(『巡察師ヴァリニャーノと日本』p84-86より) | |||||||
回答プロセス (Answering process) | 1 質問内容を確認する 「無私の日本人」p80-81に、以下の記述あり。 「体面というものの占める割合が著しく高かった。この国民性は、すでに戦国時代にはヨーロッパ人宣教師が発見し、まるで宝物でもみつけたかのように報告している。」 2 宣教師が書いた日本人論を探す 『「日本人論」の中の日本人』(築島謙三著 大日本図書 1984) p13 1549年11月5日付けでフランシスコ・ザビエルが書き送った書信に、「この国の人は礼節を重んじ、一般に善良にして悪心を懐かず、何よりも名誉を大切とするは驚くべきことなり。」とあり。 p34 「ルイス・フロイス」の項に「名誉を重んじ、道理に従い、創造性があるとはなんと見事な日本人の傾向であったであろう。そのことをフロイスはのべたのである。」とあり、出典は『日欧文化比較』『日本覚書』となっている。 3 戦国時代に来日した宣教師の資料を調べる (1) ザビエルの関連資料を調べる 『聖フランシスコ・ザビエル全書簡 3』(フランシスコ・ザビエル〔著〕 河野純徳訳 平凡社 1994) p96 12「この国の人びとは今までに発見された国民の中で最高であり、日本人より優れている人びとは、異教徒のあいだでは見つけられないでしょう。彼らは親しみやすく、一般に善良で悪意がありません。驚くほど名誉心の強い人びとで、他の何ものよりも名誉を重んじます。」とあり。 質問出典資料にあった〈体面〉という訳語は見あたらないが、〈名誉〉の語句あり。 『聖フランシスコ・ザビエルの日傘』(平湯晃著 河出書房新社 1993) p54 1549年11月5日付書翰の引用(前掲) p73に「シナへの出発を前にして、聖信学院における夕方の説教でザビエルは、繰り返し日本について述べ感銘を与えた。彼は日本人ほど理性と理解に優れた人種は世界に見当らない。」とあり。 『ザビエルと日本』(岸野久著 吉川弘文館 1998) p32-35に、ザビエルの親友であるジョルジュ・アルヴァレスが1546年に日本に滞在し、日本人を「理性豊か」で「旺盛な知識欲がある」と日本での布教を進めていたという記述あり。ただし、質問内容に合致するような発言についての記載なし。 (2)フロイスの関連資料を調べる 『フロイスの日本覚書』(松田毅一、E.ヨリッセン著 中央公論社 1983) p42にザビエルの通信の引用あり。 「日本において今日まで私が観察したところを書き送ろう。第一に、この国民は、私が今日まで交際した限りにおいて、すべていままで発見された諸国民のうちで最良のものであり、(中略)あらゆる他のことにもまして名誉を重んじる。」 p49にオルガンティーノの通信の引用あり。 「われら(ヨーロッパ人)はたがいに賢明に見えるが、彼ら(日本人)と比較すると、はなはだ野蛮であると思う。(中略)私には全世界じゅうでこれほど天賦の才能をもつ国民はないと思われる。」と絶賛しているが、〈体面〉にあたる文言は見られない。また、本書簡の掲載資料見あたらず。 p50に、フロイスの日本人観について記述あり。 「だが彼は、オルガンティーノのように日本人を絶賛しはしなかったし、数少ない非公開性の通信文からは、彼は内心では典型的なポルトガル人として、カブラルらと同様に日本人に好感をいだいていなかったことが十分に察せられるのである。」 (3) ヴァリニャーノの関連資料を調べる 『巡察師ヴァリニャーノと日本』(ヴィットリオ・ヴォルピ著 原田和夫訳 一藝社 2008) アジアにおけるイエズス会全権使節ヴァリニャーノの最初の巡察の記録。日本人に対する好意的な表現が随所に見られるが、体面という国民性に言及した記述の紹介はなし。 『日本巡察記』(ヴァリニャーノ〔著〕 松田毅一〔ほか〕訳 平凡社 1973) 日本人に対する好意的な表現が見られるが、体面という国民性に言及した書簡の記述はなし。また、書簡が掲載された資料も判明しなかった。 『東インド巡察記』(ヴァリニャーノ〔著〕 高橋裕史訳 平凡社 2005) 「体面」に関する部分とそれ以外の記述は以下のとおり。 p170「日本人は生まれつき非常に優れた能力の持ち主ではあるが」 p171「私が眼にした限りの人種の中で、とても愛想がよく親愛の情を表に現わす。」「此の国民は世界中のあらゆる人種の中で、最も偽善的で上辺を取り繕う国民である。」 p174「他のあらゆる人々よりも、素晴らしい畏敬の念と外面の謙虚さをもって、神に関わる事柄を色々と論じる。」「かの東洋全域の中で最も有能で立派に教育を施されているので、我々の聖なる法に関する諸事を正しく理解し、東洋全域の中で最良のキリスト教徒となるには、最適な国民なのである。」 (4) イエズス会から調べる 『新異国叢書 1 イエズス会士日本通信』(雄松堂書店 1973) 索引項目〈日本人の性向〉の該当ページを見るが、該当する内容の記述なし。 | |||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | ||||||||
NDC |
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参考資料 (Reference materials) |
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キーワード (Keywords) |
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照会先 (Institution or person inquired for advice) | ||||||||
寄与者 (Contributor) | ||||||||
備考 (Notes) | ||||||||
調査種別 (Type of search) | 文献紹介 | 内容種別 (Type of subject) | 人物 | 質問者区分 (Category of questioner) | 個人 | |||
登録番号 (Registration number) | 1000140678 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) | 解決 |