主に経済効果、交通網、人口について、お求めの内容になるべく合致した資料をご紹介します。
1 師団誘致の概要について
時代背景や師団設置までの流れなど、全体像を確認する場合には以下の資料をご活用ください。
・『宇都宮市史 第8巻 近・現代編2』(宇都宮市史編さん委員会/編 宇都宮市 1981)
→「第6章 師団の創設と戦歴」より「第二節 日露戦争と第十四師団の創設」等
誘致運動から創設の流れがまとめられています。
→「第7章 世相の推移 附文化」より「明治四十年~明治四五年」
軍都・宇都宮の世相についてまとめられています。交通網の広がりや周辺の状況について記述があります。
・『栃木県史 通史編6』(栃木県史編さん委員会/編 栃木県 1982)
→「第六章 日露戦争前後の政治・社会 第三節 日露戦争後の栃木県」より「一 第十四師団の設立」
・『戸祭地域の歴史再発見』(戸祭歴史セミナー/〔編〕、発行 2018)
→「4.軍都への道 第14師団の設置」「5.桜通りの由来」等
2 経済効果について
・『栃木県の歴史 第2版』(阿部昭/著,橋本澄朗/著,千田孝明/著,大嶽浩良/著 山川出版社 2011)
「10章 地域開発と県民生活の変貌 2 発展し変貌をとげる栃木県」より「十四師団の誘致」(p.321‐323)の項が参考になります。
「師団設置は市内の商工業者に多大な恩恵をあたえた。」として、『宇都宮商工会議所五十年史』に依拠し、具体的な数字を挙げながら検証しています。(『宇都宮商工会議所五十年史』も所蔵しています。)
また、時代背景や商業都市としての宇都宮の性格、師団移駐による人口増加や商業戸数の増加についても言及されています。
・『戦乱でみるとちぎの歴史 「とちぎ」の源流を探る』(江田郁夫/編,山口耕一/編 下野新聞社 2020)
「Ⅴ 近代」(下田太郎/著)より、「1 明治・大正時代 第二節 軍都宇都宮の誕生」(p.144‐153)が参考になります。
本文中に「師団衛戍による経済効果」「師団廃止の危機と師団への経済依存」の項があります。(p.149‐151)
前出の資料同様に、宇都宮商工会議所のデータなど、出典に依拠して検証しています。
近年発行された資料であるため、多数の先行研究を取り込んでまとめられています。
・『陽西今昔物語』(宇都宮市西公民館ふるさと研究講座/編 宇都宮市西公民館 1990)
p.18-19「軍隊商い」
地域住民による記録です。周辺で行われた軍隊相手の商いの様子について、具体的に記されています。
なお、この資料には、p.8-13「第十四師団の設置」、p.14-17「軍道の桜並木」の項もあります。
それぞれ、経済効果や交通網の広がりについても言及されています。
・『とちぎ20世紀 下巻』(下野新聞「とちぎ20世紀」取材班/編 下野新聞社 2001)
p.194-199「宇都宮に第14師団」
「経済効果を狙った全県挙げての誘致運動だった」の見出しがあり、当時の誘致運動や反対運動の様子を郷土史家に取材しています。
具体的にどの程度の経済効果があったのかについては、言及されていません。
なお、師団誘致後は、負担の膨張による反動で不況も生じたようです。以下の資料から当時の報道記事を確認できます。
・『「下野」世相100年』(「下野」世相100年刊行委員会/編 下野新聞社 1984)
p.140-141「師団熱の反響 下層民(44.2.27)」
3 交通網の広がり
軍道の設置や周辺の風俗については、前出の『宇都宮市史 第8巻 近・現代編2』、『戸祭地域の歴史再発見』、『陽西今昔物語』、『とちぎ20世紀 下巻』をご確認ください。
宇都宮市内の交通の発達を網羅的に確認するには、以下の資料も参考になります。
・『宇都宮市六十周年誌』(宇都宮市役所総務部庶務課/編 宇都宮市役所 1960)
市内の交通網の広がりについては、「第7章 交通・通信 第2節 明治維新以後の交通・通信」でまとめられています。
「国道第二十九号線」の項があり、「明治四十一年十一月、第十四師団司令部が設置されたため新設された道路」等の記述があります。
4 軍隊が置かれる前後の人口
当時の河内郡統計書から、明治期の宇都宮の人口を調べることができます。
前出の資料によれば、誘致運動が明治38年、設置決定が40年、軍道の完成が42年でしたので、該当の年代を収録する資料として以下をご紹介します。(これ以前の人口から比較するのであれば、明治27年の統計書から所蔵しています。)
・『栃木縣河内郡統計書 第19回 明治44年』(河内郡役所/編、発行 1911)
「第21 本籍人口」の項があり、戸数と男女別人口を確認できます。
明治35年から明治44年まで累年で掲載されています。
なお、残念ながら大正期の河内郡統計書は未所蔵です。
その後の人口推移については、以下の累年統計書で追うことができます。
・『200万人へのあゆみ 人口200万人到達記念 栃木県人口累年統計書』(栃木県企画部統計課/編 栃木県 1998)
国勢調査の結果をまとめた「市町村別人口及び面積」の項があり、大正9年から平成7年までの宇都宮市の人口の推移を確認可能です。
市町村別ではなく県全体としての人口の推移であれば、明治5年から追うことができます。