レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年07月29日
- 登録日時
- 2022/10/08 14:51
- 更新日時
- 2023/01/27 17:30
- 管理番号
- 奈県図情22-027
- 質問
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解決
法隆寺西院伽藍の再建時期は、中門仁王像と五重塔塑像の完成した和銅4年(711年、法隆寺資材帳)までであるというのが定説らしいが、伽藍の中で最も古いとされる金堂の再建時期について定説はあるのか調査している。斑鳩町の広報に持統7年(693年)の仁王会について言及した記述があるが、これをもって金堂が再建されたと解説している文献があるのか調べていただきたい。
- 回答
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法隆寺金堂の再建時期について記載されている資料は以下です。
①『蘇る法隆寺 考古学が明かす再建の謎』(菅谷文則、2021年)
→第二章「法隆寺再建・非再建論争」、第三章「建築史からみた再建論・非再建論」、第四章「考古学からみた再建論」などが記載されており、118頁に「金堂の建設は天智天皇九(六七○)年の罹災とあまり時間的へだたりがないことをうかがわせる。」との記述がございます。
②『法隆寺を科学する』(天野正樹、2016年)
→116頁に「現在の西側伽藍はそののち和銅(708~715)に再建したもの」という説、「金堂は(中略)焼けることなく(中略)五重塔、中門、回廊は和銅年間に金堂を模して新築されたとする二寺併存説」があるとの記述があり、そのうえで、本書は124頁に「火災発生(中略)の年に移設準備を始めて、仁王会のために金堂の天蓋が施納された持統七年(六九三)には、主要堂塔の移建が完成していた」と推定して論じています。
③『塔のある風景』(上野隆功著、2007年)
→173頁に「(前略)それでは再建法隆寺の移築工事はいつ頃完成したのでしょうか。(中略)霊亀元年(七一五)年に法隆寺で法会が行われていますので、おそらく、この霊亀元年を完成披露の時として間違いないと思われます。」との記述がございます。
④『秋季法隆寺文化講演会』(法隆寺主催、平成20年講演)
→13頁に「金堂は大凡六六○年代に伐採した原木で建築され、(中略)六七○年前後には天井版も取り付けられて金堂は竣工したものと察知される。」と記述されています。
⑤『法隆寺の謎を解く』(武澤秀一著、2006年)
→159頁に年輪年代測定法による金堂の木材の伐採年の調査から「(前略)金堂の着工は六六七年ないし六六八年あたりでしょうか。」と推定している記述がございました。
また、仁王会の記録をもって金堂が再建されたと解説している文献は上記②のみ確認できました。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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ウィキペディアの法隆寺の記事には『現存の西院伽藍については、持統7年(693年)に法隆寺で仁王会が行われている(『法隆寺資財帳』)ことから、少なくとも伽藍の中心である金堂はこの頃までに完成していたとみられる。』とあるが、出典がなく確認ができない。
広報斑鳩 2022年7月号「いにしえの風 斑鳩文化財センターだより」(https://www.town.ikaruga.nara.jp/cmsfiles/contents/0000000/234/r4_07.pdf)には、「法隆寺の再建については、当初の法隆寺(若草伽藍)を建立した聖徳太子やその一族は既に亡くなっていて、だれが関わっていたのか明らかではありません。ただし、法隆寺に天武・持統天皇の時代のものが納められていることや、『日本書紀』に記された持統7(693)年の仁王会(にんのうえ)(鎮護国家などを祈願する法会)に際し、経台(きょうだい)や蓋、帳(とばり)などの仏具が法隆寺に寄進された記事、また、霊亀元(715)年に飛鳥にある川原寺(かわらでら)とともに法隆寺が雨乞いの法会の会場となっていて、先に記した仁王会とともに、これらの行事が朝廷(国家)により行われていることなどから、法隆寺の再建には、朝廷、つまり天武天皇や持統天皇も関わっていたと考えられ、その背景には、この両天皇による、聖徳太子に対する崇敬の思いがあったものと思われます。」とある。
- NDC
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- 近畿地方 (216)
- 日本の建築 (521)
- 参考資料
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菅谷文則 著 , 菅谷, 文則, 1942-2019. 甦る法隆寺 : 考古学が明かす再建の謎. 柳原出版, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031491087-00 , ISBN 9784840950282 -
天野正樹 著 , 天野, 正樹. 法隆寺を科学する : 法隆寺和銅移建論. 白馬社, 2016.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027488919-00 , ISBN 9784907872120 -
上野隆功 著 , 上野, 隆功. 塔のある風景 : 法隆寺再建の真相. 鹿島出版会, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009163917-00 , ISBN 9784306085176 - 秋季法隆寺文化講演会 平成20年 2008年11月3日. 法隆寺.
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武澤秀一 著 , 武沢, 秀一, 1947-. 法隆寺の謎を解く. 筑摩書房, 2006. (ちくま新書)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008225286-00 , ISBN 4480062602
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菅谷文則 著 , 菅谷, 文則, 1942-2019. 甦る法隆寺 : 考古学が明かす再建の謎. 柳原出版, 2021.
- キーワード
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- 法隆寺
- 金堂
- 法隆寺再建
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000322407