レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年08月05日
- 登録日時
- 2012/09/26 14:41
- 更新日時
- 2012/09/26 14:41
- 管理番号
- 福井県図-20120801
- 質問
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解決
王羲之『興福寺断碑』の中の一部分「皇朝金紫光祿大夫行内常侍。七貂之徳。是使金鋪接」の意味を知りたい。
『王羲之全書翰』王羲之/〔原著〕 佐藤利行/著 森野繁夫/著 増補改訂版 白帝社 1996年10月 【サイズ】22cm 【ページ数】762,26p 【価格】\18,000 【ISBN】4-89174-292-5 【件名】王羲之(オウ,ギシ) には載っていなかった。
- 回答
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該当箇所の訳文が掲載された資料を発見することはできませんでした。
「興福寺断碑」は、『古典を極める臨書』下 高橋蒼石、渡部半溟・編 2011.8 天来書院(ISBN:978-4-88715-243-4 請求記号:728.4/コテン 資料コード:2012385569)p.32に「明の万暦年間(1573~1620)に出土した時、すでに碑の下半部が残存するだけであった」とあるように、碑文が全て残っていないため、文がつながっていない部分があります。
書き下し文が載っている資料はありましたのでご紹介します。文章がつながっていない部分は「・・・」で表しています。
『王羲之の書』高橋蒼石/編 2009.1 天来書院(ISBN:978-4-88715-208-3 請求記号:728.2/オウ 資料コード:2012276149)p.24
本文「父節皇朝金紫光祿大夫行内常侍。七貂・・・之徳。是使金鋪接慶。」
書き下し文「父の節、皇朝の金紫光禄大夫行内常侍。七貂・・・之徳。是れ金鋪もて慶に接し、」
あとは、それぞれの語を漢和辞典等で調べていく方法があるかと思います。『唐の行政機構と官僚』礪波護/著 1998.8 中央公論社(中公文庫)ISBN:4-12-203216-4(請求記号:222/トナミ 資料コード:1013126386)によると、「金紫光禄大夫行内常侍」は、官僚の肩書きを表しています。
なお、越前市中央図書館が『興福寺断碑全臨本』、『興福寺断碑全臨本・附録』田中海庵/著 1967 田中海庵先生古希記念全臨本刊行会 を所蔵していますのでご参考まで。
- 回答プロセス
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1.webcatplusで「興福寺断碑」を検索→ヒットした本のうち、当館(若狭含)で所蔵しているのは次の4冊
(ア)『王羲之の書』高橋蒼石・編 2009.1 天来書院(ISBN:978-4-88715-208-3 請求記号:728.2/オウ 資料コード:2012276149)
(イ)『古典を極める 臨書』下 高橋蒼石、渡部半溟・編 2011.8 天来書院(ISBN:978-4-88715-243-4 請求記号:728.4/コテン 資料コード:2012385569)
(ウ)『王羲之・王献之』(古典の新技法・4)吉川蕉仙・編 1998.2 二玄社(ISBN:4-544-01970-2 請求記号:728.4/コテン/4 資料コード:2010958581)
(エ)『ペン字の極意』伊藤松濤/著 2004.8 二玄社(ISBN:4-544-02512-5 請求記号:728.9/イトウ 資料コード:2011872799)
(ア)には該当箇所の書き下し文有。(ア)(イ)(ウ)には、「興福寺断碑」についての記述が少しあるが、回答に使えるほどではない。
2.単語ごとに訳してみることにする。「金紫光禄大夫」「内常侍」はともに官職のように思ったので、『東洋史辞典』京大東洋史辞典編纂会・編 1980.3 東京創元社(請求記号:220/S3/1 資料コード:1011298062)をみる。p.996 唐代の官職表に「内常侍」は載っている。
3.「金紫光禄大夫」をgoogleで検索→wikipedia「散官」の項目( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%A3%E5%AE%98)がヒット。→この項目の参考文献に挙げられている本(日向一雄 編『王朝文学と官職・位階』(竹林舎、2008年) ISBN 978-4-902084-84-9)は、当館所蔵なし。
4.中国の歴史の書架(請求記号:222の棚)を直接見に行く。『唐の行政機構と官僚』礪波護/著 1998.8 中央公論社(中公文庫)ISBN:4-12-203216-4(請求記号:222/トナミ 資料コード:1013126386)に、詳しい記述があった。
p.210「唐の官僚が帯びた官銜(肩書き)は、散官・職事官・勲官・爵号の四つからなりたっていた。」
・“散官”は、階あるいは階官ともよばれ、実職を伴わないで、単に品階の上下を示すにすぎない官名をいう。
・“職事官”は、実際の職務をもつ官職で、職事官に就任するには、その前提として一定の散官を身におびていなければならない。職事官の品階が散官の品階より高い場合は、“守”の字を、低い場合には、“行”の字を職事官の上に加えることになっていた。
これらの記述から「金紫光禄大夫行内常侍」は、肩書きであることがわかった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 書.書道 (728 8版)
- 参考資料
- キーワード
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- 王羲之
- 興福寺断碑
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000111798