レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年07月23日
- 登録日時
- 2013/08/03 14:58
- 更新日時
- 2015/03/05 15:03
- 管理番号
- 宇南13-00051
- 質問
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解決
関東大震災のときの東京・神楽坂付近の被害状況はどの程度だったのか知りたい。
- 回答
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関東大震災関係資料とインターネット情報を調査し、質問内容に関わることが書かれている資料を紹介した。
※それらを見る限り、神楽坂付近は、大きな被害が無かったことが推測される。
下記に挙げた図からは、神楽坂付近での火災は認められなかった。
①関東大震災のときの自らの避難のことを書いた 永井龍男/著 『東京の横丁』の「関東大震災」の中に次のような記述がある。「神楽坂下まで来て、私達はみんな思わず声を挙げた。坂にかかるところから、ここは一切今朝までの火災とは無関係であった。潰れた家も焼けた店もなく、私達は呆然と立ちすくんだ。このまま坂を上がって、町へ入って行ってもよいものか疑われた位であった。・・・」
②神楽坂付近(牛込区)の状況が分かる資料
・『関東大震災を歩く』 P10 図:「火災の延焼地域と死者数の分布ならびに主な避難地と焼け残り地」 P12~13 表:「東京市15区と周辺2町の被害集計」→牛込区:全潰率2.0%,焼失率0%,圧死数203人,焼死数0人。
・『図説 関東大震災』 P10~11 図:「東京市火災延焼状況図」 P62 「牛込区では、北東の江戸川に沿った大曲から東五軒町で堤防とともに土地が1メートル近く陥没し、倒壊した家屋もあった。火は早稲田大学・士官学校・物理学校から出た。・・・早稲田で一棟、士官学校で四棟を焼いただけで消し止められた。同区の死者・行方不明者はニ〇三人だった。」
・『関東大震災 写真集』 P3 「火災の被害は東京市内でも浅草、日本橋、京橋、神田など、東京市街の中心繁華街、本所、深川地域は85%~100%消失したが、山の手台地の本郷、小石川、四谷、牛込、赤坂、麻布などは多少の倒壊家屋はあるものの延焼を免れた。」
・『実写・実録 関東大震災』 見返し 図:「東京火災地域及罹災民集団地図」 P42 表:焼失面積(単位:方里) 牛込区0.0002,焼失歩合0.00 P54 表:焼失戸数 牛込区4
・『関東大震災』 P54 表:土地の被害 牛込区外濠縁 亀裂9
③インターネット情報
・『関東大震災・地図と写真のデータベース』 動画:「火災延焼動態図 (説明文:この動画は、関東大震災の東京市の火災の拡がる様子を表しています) 」を見ることができる。 http://www.himoji.jp/database/db06/materials.html#01 (最終確認 2015年3月5日)
・『1923 関東大震災(第1編)』 (中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会 第2期報告書) 図:口絵11「延焼火災および消し止め火災の出火点分布」,口絵12「飛火の分布」,口絵14「延焼動態図と死者分布」,口絵15「延焼等時線と死者分布」 http:///www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1923--kantoDAISHINSAI/pdf/1923--kantoDAISHINSAI-1_02_kuchie.pdf (最終確認 2015年3月5日)
④国立国会図書館デジタル化資料
・『大正震災記』 コマ番号6 図:「東京市内罹災図」, コマ番号43 表:発火場所(牛込区)陸軍士官学校 原因 不明
・『大正震災誌』 コマ番号50 表:各区焼失戸数と人口,各区焼失面積, コマ番号52 焼失した町名(牛込区)◎神楽坂警察署管内 陸軍士官学校一部焼失 ◎早稲田警察署管内 山吹町1丁目77、1戸半焼, コマ番号61 「[牛込区]は大体被害の最も少ない区であるが・・・」 の記述あり。
・『東京府大正震災誌』 コマ番号110 図:「帝都大震火災図」, コマ番号304 表:罹災戸数並死傷者,焼失面積区郡別
・『東京大正震災誌』 コマ番号8 図:「火災系統図」, コマ番号28 表:主ナル失火場所ト其ノ原因(牛込)市ケ谷木村町陸軍士官学校 原因 不明, コマ番号30 表:火元箇所表(牛込)火元出火数2
・『東京灰燼記』 (トウキョウ カイジンキ) コマ番号5 図:「市内罹災図」, コマ番号101 焼失の区域[牛込区]江戸川電車終点付近に、数十戸の焼失を見たが(小石川区内)、全く無難の部である。 〈2013.8.13追加〉
・『東京震災録 地図及写真帖』 コマ番号109 図:「震火災火流図」 〈2013.8.13追加〉
- 回答プロセス
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①神楽坂の位置を確認 → 東京・新宿区内にある坂。JR飯田橋駅の西側。当時は東京市牛込区。(インターネット:ウィキペディア「神楽坂」「新宿区」「牛込区」,図書資料:『江戸東京切絵図散歩』 山川出版社2010,『東京都道路地図 県別マップル13』 昭文社2012 等による)
②関東大震災関連の資料をみて、牛込区の被害状況が載っているか確認。
④インターネット情報を検索 (以下、参考にしたもの)
・『関東大震災・地図と写真のデータベース』 (神奈川大学 21世紀COEプログラム 第3班課題3) http://www.himoji.jp/database/db06/ (最終確認 2015年3月5日)
・『1923 関東大震災(第1編)』 (中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会 第2期報告書) http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1923--kantoDAISHINSAI/index.html#outline1 (最終確認 2015年3月5日)
・小寺重行氏のサイト 『院長のコラム>関東大震災2』 http://mitsuo-cl.com/mitsuo/colum/colum26b.html (最終確認 2015年3月5日) の 「地震火災をまぬがれた場所」 に 「神楽坂下については、永井龍男の 『東京の横町』 の関東大震災に書き上げられているが、皆が思わず声を挙げるほど、火災とは一切無関係で、潰れた家も焼けた店もなく、呆然としたと書き込まれている。」 と記載されていた。→ 同書 『東京の横丁』 は宇都宮市図書館に所蔵あり。
⑤中央防災会議 報告書 『1923 関東大震災(第1編)』 中の 「資料編」 をみて、当時の報告書等のタイトルに“大正震災”が入っているものがあったので,キーワードを “大正震災” にして [国立国会図書館サーチ] で検索。→ 「国立国会図書館デジタル化資料」としてインターネットで公開されている資料があったので,内容を確認した。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210)
- 関東地方 (213)
- 参考資料
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永井竜男 著. 東京の横丁. 講談社, 1991.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002089589-00 , ISBN 4062052733 (宇都宮市図書館請求記号 914.6/ナガイ) -
武村雅之 著. 関東大震災を歩く : 現代に生きる災害の記憶. 吉川弘文館, 2012.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023418544-00 , ISBN 9784642080750 (宇都宮市図書館請求記号 210.6/タ/12) -
太平洋戦争研究会 編. 図説関東大震災. 河出書房新社, 2003. (ふくろうの本)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004218755-00 , ISBN 430976035X (宇都宮市図書館請求記号 210.6/タ/03) -
北原糸子 編. 関東大震災 : 写真集. 吉川弘文館, 2010.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010832003-00 , ISBN 9784642037945 (宇都宮市図書館請求記号 210.6/キ/10) -
実写・実録関東大震災 : 震災後六十五年にあたって. 講談社, 1988.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001938591-00 , ISBN 4062041413 (宇都宮市図書館請求記号 210.6/コ) -
中島陽一郎 著. 関東大震災. 雄山閣出版, 1995. (雄山閣books ; 9)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002443424-00 , ISBN 4639001711 (宇都宮市図書館請求記号 210.6/ナ) -
長井, 修吉 , 長井修吉 編. 大正震災記. 大正震災記録編纂会, 1923.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001847068-00 -
山田, 延弥 , 山田延弥 編. 大正震災誌. 大正震災誌刊行会, 1923.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001845278-00 -
東京府 , 東京府 編. 東京府大正震災誌. 東京府, 1925.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001482457-00 -
東京市 , 東京市庶務課 編. 東京大正震災誌. 東京市, 1925.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001667749-00 -
大曲, 駒村, 1882-1943 , 大曲駒村 著. 東京灰燼記. 東北印刷出版部, 1923.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001629303-00 -
東京市 , 東京市 編. 東京震災録 地図及写真帖. 東京市, 1927.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001445752-00 -
エドワード・サイデンステッカー 著 , 安西徹雄 訳. 東京下町山の手. 筑摩書房, 1992. (ちくま学芸文庫)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002235221-00 , ISBN 4480080295
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永井竜男 著. 東京の横丁. 講談社, 1991.
- キーワード
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- 関東大震災
- 大正震災
- 牛込区
- 新宿区
- 神楽坂
- 照会先
- 寄与者
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- 小寺重行 様
- 備考
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インターネットから参照した 『1923 関東大震災(第1編)』 は、冊子体のものも 埼玉県立浦和図書館 より借用。
【追加事項 2013年9月18日】
「大震災の頃のことである。牛込は十五区のうち、大火を受けていない唯一の所だった。そこで、昔ならもっと由緒のある下町の色街に行けたはずの人々も、やむなく神楽坂に遊びに行くことになったのである。」(『東京下町山の手』P331)
- 調査種別
- 事実調査 文献紹介
- 内容種別
- 災害
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000135056