レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/08/17
- 登録日時
- 2013/11/09 00:30
- 更新日時
- 2013/11/13 12:39
- 管理番号
- 千県中参考-2013-28
- 質問
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解決
源氏物語における夕顔の香りについて研究した資料を探している。
具体的には源氏物語の「白き扇のいたうこがしたるを」の「こがす」の意味が「匂いをつけるために薫物(たきもの)の煙でくすぶらせる」(『日本国語大辞典 第二版 5』(小学館 2001)p.527)という意味だが、どのような薫りか研究した資料は無いか。
- 回答
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尾崎左永子「平安時代の薫香(7)」(『香料』 通号 200 1998.12)【資料1】p.129-134中に「夕顔の扇と香」(p.133-134)という章があり、「白き扇の,いたうこがしたる,と書かれていて,おそらく紙扇であろうが,焦げて色のつくほど,香をたきしめてあった。 (中略) この香りが,どのようなものであったかは追求しにくいが,少なくとも「紙扇」にたきしめて日毎使い,しかも「夏」であることを思うと,「薄荷」か,或はそのすずしさにやや女の甘さを加えた薫物を想像することが出来るであろう。」との記述があります。
なお、具体的な香の記述ではありませんが、『国文学年次別論文集 中古2平成17(2005)年』(学術文献刊行会編集 朋文出版 2007)【資料2】p.197-207掲載の 「源氏物語の移り香」(畠山瑞樹著)という論文中に、夕顔の差し出してきた白い扇には移り香が深くしみついていたが、その香は誰の移り香であったか(頭中将か夕顔か)についての論考が記載されています(p.204-205)。
また、同じく具体的な香についてではありませんが、『夕顔という女』(黒須重彦著 笠間書院 1987 笠間選書)【資料3】中の「第2章 私の夕顔ノート 11 前項にひきつづいて、白き扇のいたうこがしたるともてならしたる移香いとしみ深うなつかしくてについて イ いたうこがしたるについて」 p.72-73 に、「こがす」とは「香をたきこめて、そのために色づくのを言う」と注釈されることが多いが、視覚的な、一目でそれと分かる特徴をいっているのではないかとする著者の論考が記載されています。
- 回答プロセス
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当館蔵書検索やリサーチナビ、国会図書館の雑誌記事索引で源氏物語と香、香道、香料などのキーワードを掛け合わせて検索しましたが、具体的な香について記述されている資料は見つかりませんでした。
そこで更に検索範囲を広げ、件名が香道の資料全般や、平安時代の香について書いてある資料を探しました。
リサーチナビで「平安時代」と「香」を掛け合わせて検索したところ、当館所蔵雑誌『香料』に連載されている「平安時代の薫香」という連載記事が見つかり、内容を確認したところ、7回目に「夕顔の扇と香」という章が見つかりました。
なお、源氏物語については文献目録等が作成されており、夕顔について調べる際には下記の資料が参考になると思われます。
『源氏物語講座 10 研究文献目録』(今井卓爾[ほか]編集 勉誠社 1993)
p.278-282 「研究論文 B 巻論・人物論」中に夕顔の項目があります。
『源氏物語研究ハンドブック 巻別・テーマ別研究文献目録』(吉海 直人著 翰林書房 1994)
p.50-68 「夕顔巻研究文献目録」があります。
『人物で読む源氏物語 第8巻 夕顔』(上原作和編集 勉誠出版 2005)
p.266-286 「研究史・研究ガイドライン・主要参考文献目録」があります。
近日中に必要とのことで、当館未所蔵の雑誌記事の内容については未確認ですが、論題名から関連する可能性の高い雑誌記事が国立国会図書館雑誌記事索引およびCinii日本の論文を探す(http://ci.nii.ac.jp/)や、上記文献目録などから見つかりましたので、参考までにお知らせします。
吉海直人「源氏物語の移り香 夕顔巻を起点にして」(『同志社女子大学大学院文学研究科紀要』 vol.1 2001.3)p.1-18
吉海直人「扇の移り香 夕顔巻の再検討」(『むらさき』vol.33 1996.12)p.69-731
黒須重彦「白き扇のいたうこがしたる」(平安文学研究 vol.46 1971.6)
以下、確認したが記述の無かった資料
『香と香道 第4版』(香道文化研究会編 雄山閣 2011)
『香道の歴史事典』(神保博行著 柏書房 2003)
『日本の香り』(松榮堂監修 平凡社 2005)
『匂いの文化史的研究 日本と中国の文学に見る』(高橋庸一郎著 和泉書院 2002 阪南大学叢書)
『源氏香の世界 二〇〇八年度京都の美術・工芸展』(香文化資料室松栄堂松寿文庫編集 香文化資料室松栄堂松寿文庫 2008)
『香三才 香と日本人のものがたり』(畑正高著 東京書籍 2004)
『文学と香道』(早川甚三著 あるむ(発売) 2007)
『日本の香り物語 心に寄り添う香りのレシピ』(渡辺敏子著 八坂書房 2013)
『香りの比較文化誌 東の「香」から西の「アロマテラピー」まで』(宮沢正順編著 北樹出版 2001)
『源氏の薫り』(尾崎左永子著 求竜堂 1986)
『源氏物語講座 7 美の世界 雅びの継承』(今井卓爾[ほか]編集 勉誠社 1992)
朱捷「においの系譜 万葉から源氏、そして現代へ」(『香料』No.239 2008.9)p.21-26
尾崎左永子「源氏の薫りと出会う 古典の中の香り文化をめぐって」(『国際交流』24巻3号 通巻95号 2002.4)p.54-60
- 事前調査事項
- NDC
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- 香道 (792 9版)
- 油脂類 (576 9版)
- 小説.物語 (913 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『香料』 通号 200 1998.12 | 0500421703
- 【資料2】『国文学年次別論文集 中古2平成17(2005)年』(学術文献刊行会編集 朋文出版 2007)|0105995976
- 【資料3】『夕顔という女』(黒須重彦著 笠間書院 1987 笠間選書)
- キーワード
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- 源氏物語(ゲンジモノガタリ)
- 夕顔(ユウガオ)
- 香(コウ)
- 薫物(タキモノ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 一般
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000140227