レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年06月26日
- 登録日時
- 2013/12/30 16:42
- 更新日時
- 2018/08/07 16:57
- 管理番号
- 2012-015
- 質問
-
解決
「電話での会話」もしくは「電話」自体をモチーフにしたモダニズム文学の作品(小説や脚本)にはどのようなものがあるか。
国内の作品のみでよいが、分かれば海外も紹介してほしい。
- 回答
-
こちらの2作品を紹介します。
①川端康成「望遠鏡と電話」(短編集『掌の小説 : 百篇』に収録)(昭和5年(1930)発表)
モダニズム文学の代表的な作家である川端康成の作品です。
電話の特徴である“姿が見えない”ことを要素としています。
②プルースト『失われた時を求めて』第3編「ゲルマントのほう」(1921-1922年刊行)
海外の作品となりますが、モダニズムの代表的作家であり、モダニズム文学の代表的作品です。
その他、ご参考になると思われる評論等がありましたので、回答プロセスをご確認ください。
- 回答プロセス
-
1.モダニズム文学の代表的な作家からの調査
(1)モダニズム文学の代表的な作家
・『日本現代文学大事典』
”昭和3年から7年頃にかけて、新興芸術派の作家たちによっておし進められた非マルクス主義的文学傾向”
→新興芸術派とは ”龍胆寺雄・久野豊彦・楢崎勤・井伏鱒二・阿部知二・雅川滉らが代表的作家・評論家”
・『ラルース世界文学事典』
”新感覚派を中心として芸術派の内部にも表現技法の革新によって方法的に文学の革命をめざすモダニズム文学が現れた。”
→”この派(新感覚派)の代表は横光利一と川端康成である。”
・『国史大辞典』
新興芸術派→”中村武羅夫・浅原六朗・久野豊彦・竜胆寺雄・中村正常・舟橋聖一・吉行エイスケ・雅川滉”
新感覚派→“川端康成・片岡鉄兵・横光利一・中川与一・今東光・十一谷義三郎・岸田国士・稲垣足穂”
以上から、モダニズム文学の代表的な作家を今回の調査では以下とした。
龍胆寺雄・久野豊彦・楢崎勤・井伏鱒二・阿部知二・雅川滉・川端康成・片岡鉄兵・横光利一・中川与一・今東光・十一谷義三郎・岸田国士・稲垣足穂・中村武羅夫・浅原六朗・中村正常・舟橋聖一・吉行エイスケ
(2)電話モチーフの作品を調査
上記の作家の作品事典や各種データベースを「(作家名) 電話」等で検索した。結果、以下の2作品が該当した。
・川端康成
「望遠鏡と電話」(短編集『掌の小説 : 百篇』に収録)(昭和5年(1930)発表)
→ 羽鳥徹哉, 原善編『川端康成全作品研究事典』の作品情報・解説で内容を確認。
・横光利一
「電話と客観 藤森君の批評眼」(評論・随筆)(大正15年(1926)発表)『定本横光利一全集16』収録
横光利一がこの時期発展途中にある電話をどのように評しているかがわかるもの。
→小説等ではないため、参考として紹介。
(3)青空文庫収録作品の本文の全文検索
物語の中に電話(個人用のもの)が多く登場し始めるのが1930前後からか。
→吉行エイスケの作品には特に多く見られたが、電話がモチーフとまでは断定できず、参考として紹介。
2.文学作品のモチーフまたは具体的に電話が書かれたものを調査
(1)CiNiiにてKWD「小説 電話」等で検索
坂本浩也著『プルースト、電話と小説』がヒットしたが、本学には掲載誌の所蔵なし。
→プルーストはフランスの代表的なモダニズム作家であることを、百科辞典等で確認。
プルーストの著作に電話モチーフのものがないか解説などを調査したところ、
高遠弘美著「プルーストと暮らす日々(27) : 電話の神秘性を描写 」産経新聞2011/11/17
という記事を発見した。
→②『失われた時を求めて』(1913-1927刊)うち、第3編「ゲルマントのほう」(1921-1922年刊行)
(2)リサーチナビ「物語のキーワードから文学作品を探す(日本)」を参照
・物語要素事典(http://www.aichi-gakuin.ac.jp/~kamiyama/)[参照2013-12-30]
【電話】の項目あり。ただし、モダニズム文学に当該しないため、ご参考として紹介。
(3)CiNii Books、NDLサーチ等を「文学 電話」等で検索
・三島由紀夫「をはりの美学」(評論)昭和41年発表 『三島由紀夫全集32評論Ⅷ』収録
モダニズム文学ではないが、電話についてコクトーの「声」を引合に出している。
・幸尾保之『電話文学散歩』昭和42年
本学所蔵なし。明治~昭和の文学作品において、電話の出てくる場面を抜粋・解説している模様。
・『新興芸術派叢書』全24冊 新潮社(1930年刊行)(復刻版 ゆまに書房,2008年)
本学所蔵なし。復刻版の出版社の紹介文に“ラジオ・テレビ・電話などのメディアが登場し始めた昭和初期の文化・文学再検討に”とあり。
3.電話というメディアの展開・普及状況 からの調査
調査方法としては多少無理がある(絞り込めない)ものだった。
(1)電話事業の発展について概要を得る
国史大辞典「電信・電話事業」、日本大百科全書「電話」の項あり。
(2)本学OPAC検索および書架ブラウジング
・日本電信電話株式会社広報部企画・編集『電話100年小史』
電話の発展をわかりやすくまとめてあり、詳細な数値等もあり。しかし、文学作品には結びつかず。
・松田裕之著『明治電信電話 (テレコム) ものがたり : 情報通信社会の《原風景》』
明治時代の文学作品に表れているものの紹介もあり。
- 事前調査事項
-
久生十蘭『猪鹿蝶』(電話での女性の話し言葉のみで構成された小説(久生十蘭短篇選p290-308)(初出:別冊文藝春秋1951(昭和26)年3月号))
のあとがき(同p415)に「『猪鹿蝶』は、電話のひとり語りのみで構成されている。モダニズム文学には新しい声のメディアである電話を使った作品がめずらしくないが、文学座のレパートリーであったジャン・コクトー(1889-1963)の『声』のパロディめいたところもある」とある。「声」は読んだ。
- NDC
-
- 文学 (900 9版)
- 参考資料
-
-
三好 行雄/[ほか]編集. 日本現代文学大事典 人名・事項篇. 明治書院, 1994.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I000233734-00 (NCID:BN10857695) -
河盛好蔵//監修. ラルース世界文学事典. 角川書店.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000004-I000013424-00 , ISBN 4040211006 (NCID:BN0082485X) -
日本 電信電話株式会社 広報部/編. 電話100年小史 : TheStoryofTelephon. 日本電信電話株式会社広報部, 1990.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I013209481-00 (NCID:BN05203973) -
川端康成全集 第6巻 (掌の小説 百篇). 新潮社, 1969.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001251013-00 (NCID:BN04533746) -
羽鳥徹哉, 原善 編. 川端康成全作品研究事典. 勉誠出版, 1998.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002702790-00 , ISBN 4585060081 (NCID:BA3667206X) -
Proust, Marcel , 井上, 究一郎. ゲルマントのほう 1. 筑摩書房, 1985. (プルースト全集)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I045442292-00 , ISBN 4480787046 (NCID:BN00705293) -
保昌正夫 [ほか]編集・校訂. 定本横光利一全集 第4巻. 河出書房新社, 1981.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001527308-00 (NCID:BN00289960) -
三島由紀夫/著. 評論 8. 新潮社, 1975. (三島由紀夫全集 ; 32)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I021584472-00 (NCID:BN02260802) -
幸尾, 保之, 1935- , 幸尾保之 著. 電話文学散歩. 東京出版センター, 1967.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I000403471-00 (NCID:BA69752142) - 新興藝術派叢書.全24冊 新潮社, 1930 (NCID:BN12021309)
- 新興芸術派叢書.全24冊 ゆまに書房, 2000 (NCID:BA47116498)
-
三好 行雄/[ほか]編集. 日本現代文学大事典 人名・事項篇. 明治書院, 1994.
- キーワード
-
- 電話
- 小説
- モダニズム文学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000142830