レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年11月15日
- 登録日時
- 2019/01/11 17:23
- 更新日時
- 2019/11/11 10:37
- 管理番号
- ASN2017-29
- 質問
-
解決
昭和20年代前半当時、「狂人」「廃人」とはどういう人のことだったのか、その定義が知りたい。
文学的な視点ではなく、社会学的な視点の情報を探している
【情報源・背景】
太宰治『人間失格』の中で「狂人になった/ならない」「廃人になった/ならない」という文章がある。
人間失格という状態と廃人、狂人の状態と同じ意味なのかどうか、考察している。
- 回答
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回答プロセスをご参照ください。
- 回答プロセス
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1.作品の概要をおさえる
JapanKnowledge <キーワード:人間失格>
「人間失格」(『日本大百科全書(ニッポニカ)』)
太宰治の小説。1948年(昭和23)6月から8月まで『展望』に連載。同年7月筑摩書房刊。
いまは狂人となった大庭葉蔵(おおばようぞう)の手記を、作者が紹介するという形式をとっている。
2.言葉の一般的な概念及び変遷をおさえる
質問にある時代に出版された辞典などで調べると、当時の概念がわかるかもしれません。
【★1】JapanKnowledge <キーワード:狂人、廃人>
「狂人」きょうじん(『日本国語大辞典』)
「狂人」くるいびと(『日本国語大辞典』)
「廃人・癈人」(『日本国語大辞典』)
【★2】『大辭典 縮刷版』
「キョージン」狂人
「ハイジン」廃人
3.図書
3-1 OPAC検索 <キーワード:狂気/件名:精神障害、精神医学-歴史 など>
以下の資料で昭和20年代前半当時について明確に記述している物は確認出来ませんでしたが、
一般概念として参考にできるかもしれません。
【★3】『狂気について:渡辺一夫評論選:他二十二篇』
p.127 「狂気」:“自覚を持たない人間、あるいはこの自覚を忘れた人間の
精神状態のことかもしれません。”
【★4】『「狂気」と「無意識」のモダニズム:戦間期文学の一断面』
p.48 “自らを<健常者>だと信じる人々のエゴが、<健常>な行動規範を共有しない人々を
<狂人>と呼び、彼らを脅威と見なす傾向がある”
【★5】『狂気と犯罪 : なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか 』
p.45 ”それは、社会を徘徊する「狂気」、つまり精神障害者たちだった。”
【★6】『精神医学の歴史と人類学』
p.113 ”20世紀に「狂気」が「精神病」と名前を変え近代医学の管轄内にあることが
示されることによって、大きな変容を迫られたと考えられる。”
【★7】『精神疾患言説の歴史社会学 : 「心の病」はなぜ流行するのか』
狂気の歴史について社会学の視点から確認することができる。
など
下記資料には該当情報なし
『日本の狂気』(ジェリー・S・ピヴェン 勝田有子著 日本評論社 2007.11 368/P69)
『狂気へのグラデーション』(稲垣智則著 東海大学出版部 2016.7 140/I521)
『あたらしい狂気の歴史 : 精神病理の哲学』(小泉義之著 青土社 2018.1 49371/KO38)
『文学における狂気』(佐藤泰正編 笠間書院 1992.6 904/S85-20)
『普通の人の中の狂気』(町沢静夫著 海竜社 1997.1 4937/MA19-1)
『狂気の構造』(小田晋著 青土社 1990.6 4937/O17)
『狂気の社会史 : 狂人たちの物語』
(ロイ・ポーター[著];目羅公和訳 法政大学出版局 1993.9 4937/P83)
『日本の狂気誌』(小田晋[著] 講談社 1998.7 コウダンガク/1338)
『狂気の時代』(佐伯彰一著 サンケイ出版 1979.12 041/S14)
『日本文学のなかの障害者像 : 近・現代篇』(花田春兆編著 明石書店 2002.3 91026/H271)
『無力感は狂いのはじまり:「狂い」の構造2 』(春日武彦 平山夢明著 扶桑社 2010.9 4937/KA79-4)
『日本精神科医療史』(岡田靖雄著 医学書院 2002.9 4937/O38)
『精神医学の歴史』(ジャック・オックマン著;阿部惠一郎訳 白水社 2007.5 4937/H81)
『精神障害者問題資料集成戦前編』(岡田靖雄 小峯和茂 橋本明編 六花出版 2011.12 4937/O38-1/9)
など
3-2 Googleブックス https://books.google.co.jp
<キーワード:廃人 社会 昭和,狂人 社会 昭和>
【★8】『福祉国家6日本の社会と福祉』
p.310 "(略)諸障害者を漠然と一括して「廃人」と見なしている…(中略)…
障害差を無視した「廃人」観は、その後の教育政策の中でも基本的に変化しなかった"
以下、当館に所蔵していないが、内容を確認できそうな資料
『戦前・戦中期における障害者福祉対策』(社会福祉研究所 [編] 社会福祉研究所 1990)
p.37 "廃人という言葉で障害者すべてをひとまとめにされていた時代がまずあった"
【他館所蔵】 愛知県図書館 など
『社会保障辞典(大川秀吉 [ほか] 編 社会保険法規研究会 1958)
p.45 ”身体上または精神上の著しい欠陥とは、いわゆる廃人の状態もあるものをいい”
【他館所蔵】 名古屋市鶴舞図書館 など
4.新聞記事 <キーワード:狂人、廃人>
記事の中での言葉の扱い方などから探してみる
4-1【★9】ヨミダス歴史館
"錯乱者を取り調べ 放火、失火両論/松山城火災"『読売新聞』1949.03.01 朝刊 2頁
(※紙面の見出しは 狂人を取り調べ)
"[自から狂人となり彼等の世界を探る]=上"『読売新聞』1934.01.13 朝刊 4頁
"凶悪放火犯けさ志村署へ 憎いおふくろ オレは精神障害じゃない 記者と問答"
『読売新聞』1950.01.16 夕刊 2頁
(※紙面の見出しは オレは狂人じゃない)
"二人の精神障害者/三好十郎"『読売新聞』1955.03.17 朝刊 6頁
(※紙面の見出しは 二人の狂人)
"老いにふるう涙の刃 知的障害の甥刺殺 愛すればこその凶行 ほか/東京・麻布"
『読売新聞』1933.06.22 夕刊 2頁
山本彩"[人生案内]私は廃人か 若い身空で不治の病"『読売新聞』1953.03.18 夕刊 3頁
"相模湖事件の責任で廃人同様の教官 放心の床に1年半も きょう判決"
『読売新聞』1956.02.14 夕刊 5頁 など
4-2【★10】聞蔵Ⅱビジュアル
"狂人でない容疑者=裏をかかれた捜査陣_放火魔山狩り"『朝日新聞』1950.01.15 東京/朝刊 3頁
"狂人とお嬢さま_家庭"『朝日新聞』1950.12.13 東京/朝刊 4頁
"狂人と水爆_きのうきょう"『朝日新聞』1953.8.11 東京/朝刊 3頁
"女性相談/問・夫は廃人の宣告を ……" 1935.10.19 東京/朝刊 5頁 など
4-3『昭和ニュース事典 8 昭和17-20年』
(昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ編集製作
毎日コミュニケーションズ 1994 2107/SH971/8)
狂人、廃人に関する記事を確認できず
5.論文
5-1【★11】国文学論文目録データベース <キーワード:太宰治、精神医学>
島崎敏樹, 福水保郎 ”精神医学から見た太宰治“ 国文学解釈と鑑賞 25(3) 1960.03
*キーワードが狂人、廃人、戦後、精神病理では該当資料がヒットせず。
5-2【★12】CiNii Articles
<キーワード:太宰治、人間失格、精神医学、戦後、精神病理、狂人>
中野 嘉一“人間失格と道化の病理--太宰治論(精神医学と文学<特集>)”理想 568 p.35-44 1980.09
高橋 正雄”精神医学的にみた近代日本文学(第14報)葛西善蔵・石坂洋次郎・太宰治“
聖マリアンナ医学研究誌 15(90) p.49-54 2015
中川輝彦”「心理学的人間」の近代 ”年報人間科学 (21) p.175-190 2000
松下 正明“精神科の戦後史(第1回)精神衛生法(昭和25年)”精神医学 57(2) p.153-157 2015.02
*MEDICAL FINDER【契約データベース】より全文閲覧可
本郷 隆盛“戦後日本社会の精神病理”
宮城教育大学紀要 第1分冊 人文科学・社会科学 (21) p.190-170 1986 など
5-3【★13】国立国会図書館デジタルコレクション
[国立国会図書館/図書館送信限定]と記載された資料については、図書館内の指定端末にて閲覧可能。
『わが国特殊教育の成立』(中野善達 加藤康昭共著 東峰書房 1967.6
書誌ID:000001095573 国立国会図書館/図書館送信限定)
p.168「より厳密に言えば「廃人」は特定の障害を持つ者を意味するよりは、
心身の障害などによって社会的有用性を失ったもの一般をさす。」
6.雑誌記事(当時の雑誌記事から探す) <キーワード:狂人、精神疾患>
6-1【★14】ざっさくプラス
武田彩霞”鄕土で記憶にある狂人” 旅と傳説 16(10) p.58-59 1943
中川努 “狂人について” 椹水 7 昭和22年1月特大号 p.3-4 1948.01.26
林”本邦人の精神疾患負荷に関する研究 ” 精神神経学雑誌 49(5) p.1-5 1947.10.15 など
6-2【★15】大宅壮一文庫雑誌記事索引Web版
志波宗一郎”狂人と語る 武蔵野脳病院探訪記” ペン(三笠書房) p.141-144 1936.11 など
以上
<Web最終確認日:2019/2/20>
- 事前調査事項
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JapanKnowledge[契約DB]『太陽』「狂人と社会制度」(S.2)
- NDC
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- 内科学 (493 10版)
- 異常心理学 (145 10版)
- 日本文学 (910 10版)
- 参考資料
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- 【★1】JapanKnowledge(ジャパンナレッジ)[契約DB] (百科事典・辞書・ニュース・学術サイトURL集などを検索可能)
-
【★2】平凡社 編, 大辞典. 平凡社, 1953-1954.
http://id.ndl.go.jp/bib/000000935953 (当館請求記号:8131/D19/5-6,19-20) -
【★3】渡辺一夫 [著] , 大江健三郎, 清水徹 編 , 渡辺, 一夫, 1901-1975 , 大江, 健三郎, 1935- , 清水, 徹, 1931-. 狂気について : 他二十二篇 渡辺一夫評論選. 岩波書店, 1993. (岩波文庫)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002287101-00 , ISBN 400331882X (当館請求記号:イワナミブン/アオ/188-2) -
【★4】小林洋介 著 , 小林, 洋介, 1977-. 〈狂気〉と〈無意識〉のモダニズム : 戦間期文学の一断面. 笠間書院, 2013.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024293337-00 , ISBN 9784305706829 (当館請求記号:910262/KO12) -
【★5】芹沢一也 [著] , 芹沢, 一也, 1968-. 狂気と犯罪 : なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか. 講談社, 2005. (講談社+α新書)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007629087-00 , ISBN 4062722984 (当館請求記号:4989/SE831) -
【★6】鈴木晃仁, 北中淳子 編 , 鈴木, 晃仁, 1963- , 北中, 淳子. 精神医学の歴史と人類学. 東京大学出版会, 2016. (シリーズ精神医学の哲学 ; 2)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027575329-00 , ISBN 9784130141826 (当館請求記号:4937/SH881/2) -
【★7】佐藤雅浩 著 , 佐藤, 雅浩, 1979-. 精神疾患言説の歴史社会学 : 「心の病」はなぜ流行するのか. 新曜社, 2013.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024340559-00 , ISBN 9784788513341 (当館請求記号:4937/S851) -
【★8】東京大学社会科学研究所編 , 東京大学社会科学研究所. 日本の社会と福祉. 東京大学出版会, 1985-09. (福祉国家)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000074-I000044020-00 , ISBN 4130350161 (当館請求記号:364/TO46-1/) - 【★9】ヨミダス歴史館[契約DB] (読売新聞記事検索)
- 【★10】聞蔵Ⅱビジュアル[契約DB] (朝日新聞記事検索)
- 【★11】国文学論文目録データベース <https://base1.nijl.ac.jp/~rombun/> (国文学研究資料館が提供する日本文学研究論文の総合目録データベース)
- 【★12】CiNii Articles <https://ci.nii.ac.jp/> (学術論文情報を検索の対象とする論文データベース・サービス)
- 【★13】国立国会図書館デジタルコレクション <http://dl.ndl.go.jp/> (国立国会図書館で収集・保存しているデジタル資料を検索・閲覧できるサービス)
- 【★14】ざっさくプラス[契約DB] (雑誌記事索引集成DB。明治初期から現在まで、全国誌から地方で発行された雑誌が検索可能。)
- 【★15】大宅壮一文庫雑誌記事索引Web版[契約DB] (雑誌専門図書館・大宅壮一文庫の雑誌記事索引)
- キーワード
-
- 狂人
- 廃人
- 狂気
- 昭和
- 戦後
- 精神医学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000250082