レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/12/18
- 登録日時
- 2015/12/08 10:37
- 更新日時
- 2016/03/15 18:34
- 管理番号
- 埼熊-2015-127
- 質問
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解決
「兵法新論 九」(『古事類苑 43 兵事部』p191)の文中における「金、鼓、角、旌旗」の読み方と意味を知りたい。
- 回答
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当該資料の読みと意味について記述した資料は見つからなかったが、関連記述のある以下の資料を提供した。
(1)読みについて
金(1字)「カネ」『日本国語大辞典 3(おもふ-きかき)』(小学館 2001)p887
鼓(1字)「ツヅミ」『古事類苑 43 兵事部』(神宮司庁編 吉川弘文館 1968)p2152
金鼓(2字)「キンコ」『古事類苑 43 兵事部』p2149
角(1字)「ツノ」『日本国語大辞典 9(ちゆうひ-とん)』(小学館 2001)「4「つのぶえ(角笛)の略」今昔(1120頃)6・9「酉時に至りて、鼓打ち、角を吹く」」
旌旗(2字)「セイキ」『新釈漢文大系 36 孫子』(明治書院 1987)p181、『中国の思想 10 孫子』(徳間書店 1973)p79
旌「ハタ」『古事類苑 43 兵事部』p2097
(2)意味について
「金」
『古事類苑 43 兵事部』p2150-2151、『新釈漢文大系 36 孫子』p181
「鼓」
『新釈漢文大系 36 孫子』p181、『大漢和辞典 12』(諸橋轍次 大修館書店 1986)p1054-1055
「角」
『大漢和辞典 12』p1055「鼓角」、『大漢和辞典 10』p352-353「角」
「旌旗」
『古事類苑 43 兵事部』p2101-2103、2112、2116、『時代別国語大辞典 室町時代編 4(つ~ふ)』(室町時代語辞典編修委員会編 三省堂 2000)p654「はた」、『新釈漢文大系 36 孫子』p181
金鼓・旌旗が命令に従わせる手段として解説されている資料
『中国の思想 10 孫子・呉子』p174
金、鼓、角についてまとめた解説
『古事類苑 43 兵事部』p2149
旗についてまとめた解説
『古事類苑 43 兵事部』p2097
『参謀学〈孫子〉の読み方』(山本七平著 日本経済新聞社 1986)
p127-128「金鼓・旌旗」の説明あり。ただし、金は「どら」としている。
- 回答プロセス
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1 「兵法新論」を確認する。
自館目録、《埼玉県内公共図書館等横断検索》(http://cross.lib.pref.saitama.jp/ 埼玉県立図書館 2013/12/18最終確認)を〈兵法新論〉で検索するも見つからず。
『国書総目録 7 ふ-よ』補訂版(岩波書店 1990)
p205〔兵法新論 へいほうしんろん〕の項あり。「15巻16冊 (類)兵法 (著)桜田迪 (成)嘉永7 (写)内閣・葵(巻4・5 1冊)」
《国会図サーチ》(http://iss.ndl.go.jp/ 国会図 2015/12/04最終確認)を〈兵法新論〉で検索する。
「兵法新論 巻4、5」(櫻田廸著)あり。静岡県立図書館特別文庫所蔵。
「兵法新論」(桜田済美)16冊、内閣文庫に所蔵あり。
《国立公文書館デジタルアーカイブ》(https://www.digital.archives.go.jp/ 国立公文書館 2015/12/04最終確認)
文書のデジタル化画像はなし。
2 出典を確認する。
『古事類苑 43 兵事部』復刻版(神宮司庁編 吉川弘文館 1968)
〔兵法新論 9 選人任役〕の項あり。
「一軍艦一人(中略)此ハ中軍ノ大将ノ傍ニ在テ、大将軍トトモニ軍機ヲ謀ル役ナレバ、智謀衆ニ越ヘ、和漢ノ兵書ニ通ジ、天文地理ヨリ城壁ヲ築ノ利害、奇正変化ニ達シテ、神算アル老功ノ者ヲ選ブベシ、大将軍ノ側ヲ離レズシテ、金、鼓、角、旌旗ノ権ヲ主ドル也、中軍ノ外ニモ一陣ニ一人ヅヽアリテ、陳将ト謀ヲ共ニスル也」
上記『古事類苑 43 兵事部』の内容より、「金、鼓、角、旌旗ノ権」は、軍中の指揮命令系統に用いられる事物を扱う権限と判断できる。このそれぞれについて、上記『兵事部』の中に説明が載っていないかを索引から調査する。
『古事類苑 51 総目録,索引』復刻版(神宮司庁編 吉川弘文館 1969)
p116「カネ」の項に、兵事部に属する「金」なし。ただし、「鉦」あり。(兵12-2150)
p159「キン」の項に、兵事部に属する「金」なし。
p161「キンコ」の項に、兵事部に属する「金鼓【篇】」あり。(兵12-2149)
p209-210「コ」の項に、「鼓」なし。
p441「ツヅミ」の項に、兵事部に属する「鼓」あり。(兵12-2150)
p100「カク」の項に、兵事部に属する「角(笛)」あり。(兵12-2150)
p441-442「ツノ」の項に、兵事部に属する「角」なし。
p352「セイキ」の項に、兵事部に属する「旌旗」なし。「ショウキ」なし。
p137-138「キ」の項に、「旗」なし。
p525「ハタ」の項に、兵事部に属する「旗【篇】」あり。(兵12-2097)(4-603)(5-782)(8-1275)
『古事類苑 43 兵事部』復刻版(神宮司庁編 吉川弘文館 1968)
p2149〔金鼓〕篇の最初にまとめあり。
p2097〔旗〕篇の最初にまとめあり。
『大漢和辞典 11』(諸橋轍次 大修館書店 1985)
p458〈金鼓〉(キンコ)「軍中に用ひる鐘と鼓。進むに鼓を持ひ、止まるに金を用ひる。転じて、金革の音をいふ」質問の該当文とは異なるが、「孫子、軍争」の用法あり。
『大漢和辞典 12』(諸橋轍次 大修館書店 1986)
p1055〈鼓角〉(コカク)「軍中に用ひる太鼓とつの笛。」
〈角〉『大漢和辞典 10』(諸橋轍次 大修館書店 1985)
p352-353 「つのぶえ」
〈旌旗〉『大漢和辞典 5』(諸橋轍次 大修館書店 1984)
p699 「はたの総称」質問の該当文とは異なるが、「孫子、軍争」の用法あり。
3 上記『大漢和辞典』に「孫子、軍争」の用法があるため、孫子関係の資料を確認する。
『中国の思想 10 孫子・呉子』(徳間書店 1973)
p79「古来の兵書に「多数の兵士を統率するには(中略)目印の旌旗(せいき)を用いる」とある。」
「合図の鐘、太鼓、目印の旌旗というものは、大勢の耳目を一つにするためのものである。」ほか、鐘、太鼓、旌旗の役割について記述あり。
p80 上記の原文(白文・書き下し)。質問の該当文とは異なる。
『新釈漢文大系 36 孫子』(明治書院 1987)
p180上記図書と同様の記述あり。白文・書き下し文・通訳・語訳がある。
『参謀学〈孫子〉の読み方』(山本七平著 日本経済新聞社 1986)
p127-128「金鼓・旌旗」の説明あり。ただし、金は「どら」としている。
4 日本の古語辞典を確認する。
『時代別国語大辞典 室町時代編 4(つ〜ふ)』(室町時代語辞典編修委員会編 三省堂 2000)
p62〔つづみ〕軍事に関する記述、「兵法新論」についての記述なし。
p654〔はた〕「「戦場用旌旗也、幢与旛同」(下学)軍営・儀式などに、標識とか装飾とかして用いる具。(後略)」
その他 角〔かく〕〔つの〕 該当する記述なし。金〔きん〕〔かね〕 該当する記述なし。
5 国語辞典を確認する。
『日本国語大辞典 9(ちゆうひ-とん)』(小学館 2001)
p1374「どら」の項あるが、「金」という表記ではなし。「鉦」
p395「つの」の項に、4「つのぶえ(角笛)の略」今昔(1120頃)6・9「酉時に至りて、鼓打ち、角を吹く」とあり。
p373-374「つづみ」の項に、「古代日本で、打楽器の総称」とあり。
『日本国語大辞典 3(おもふ-きかき)』(小学館 2001)
p887〈かね 鐘・鉦〉の項に、万葉(8c後)4・607(皆人を寝よとの金(かね)は打つなれど)あり。
p888「かねを打つ」の項に、今昔(1120頃か)16・37「観音の御前にして、師の僧を呼て、金打ちて、事の由を申させて」とあり。
『日本国語大辞典 4(きかく-けんう)』(小学館 2001)
p634-635〈きん 金〉の項に、「きん打つ」「うそいつわりないことを示すために、自分の刀の刃や鍔を相手のそれと打ち合わせる」という記述あるが、楽器・兵器として用いられる鐘・鉦としての記述なし。
その他調査済み資料
『武器図』(〔出版地不明〕 〔江戸後期〕)ホラ貝の図あるが、「角」ではない。
『武器袖鏡』(栗原信充撰 江戸 金花堂須原屋佐助 1843(天保14))
- 事前調査事項
- NDC
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- 音声.音韻.文字 (811 9版)
- 語源.意味[語義] (812 9版)
- 参考資料
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- 『日本国語大辞典 3(おもふ-きかき)』(小学館 2001) , ISBN 4-09-521003-6
- 『古事類苑 43 兵事部』(神宮司庁編 吉川弘文館 1968)
- 『新釈漢文大系 36 孫子』(明治書院 1987) , ISBN 4-625-57036-0
- 『中国の思想 10 孫子』(徳間書店 1973)
- 『大漢和辞典 12』(諸橋轍次 大修館書店 1986) , ISBN 4-469-03132-1
- 『時代別国語大辞典 室町時代編 4(つ~ふ)』(室町時代語辞典編修委員会編 三省堂 2000) , ISBN 4-385-13603-3
- キーワード
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- 兵法新論
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000185240