レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2009/01/26
- 登録日時
- 2009/06/19 02:11
- 更新日時
- 2009/06/30 08:22
- 管理番号
- 埼久-2009-008
- 質問
-
未解決
英国人作曲家カール・ジェンキンス(Karl Jenkins)のRequiem(鎮魂歌)の中に、埼玉県越谷出身の越谷吾山の俳句に基づく曲がある。俳句は「花と見し 雪は昨日ぞ 元の水」。句の意味、解釈、背景等の情報がほしい。
- 回答
-
「辞世 花と見し雪はきのふぞもとの水 師竹庵」から、辞世の句とわかる。ただし該当の句に関する詳しい解釈や作句の背景がわかる資料は見あたらず。主に埼玉資料にある越谷吾山の研究書5点の記述や関連するWebサイトの情報を提供する。回答プロセスを参照のこと。
①『越谷吾山 方言に憑かれた男 日本最初の全国方言辞典を編む』(杉本つとむ さきたま出版会 1989)
②『物類称呼 生活の古典双書17』(越谷吾山 杉本つとむ 八坂書房 1976)
③『杉本つとむ著作選集 7 辞書・事典の研究』(杉本つとむ 八坂書房 1999)
④『越谷吾山 附吾山俳句集』(志田義秀 埼玉県立浦和図書館(製作) 1986)
⑤『江戸中期「俳諧師師竹庵・越谷吾山」の話』(杉本つとむ 越谷市郷土研究会 1999)
⑥視聴覚資料 『レクイエム/アディエマス カール・ジェンキンス』(CD 西カザフスタン・フィルハーモニック・オーケストラ 東芝EMI 2005)
Web上で見られる吾山関係の情報。
◆《越谷市Webサイト》 越谷吾山句碑(市指定文化財)
◆《早稲田大学 古典籍総合データベース》 著作「師竹庵聞書」(滝沢羅文記)
- 回答プロセス
-
越谷吾山は『埼玉人物事典』(埼玉県教育委員会 埼玉県 1998)に〈会田吾山〉の項目があり。以下引用。
--------------------------
享保2-天明7.12.17(1717-1787) 江戸時代の俳人。越ヶ谷宿(越谷市)生まれ。名は秀眞(はつま)、通称文之助。号は古馗庵、師竹庵、凉華坊など。(中略)俳人としてばかりでなく文献学・言語学研究者としても評価されている。江戸での交友・門人も多く、滝沢羅文・馬琴の兄弟も門弟であった。句碑:越谷市久伊豆神社、天嶽寺。
--------------------------
①『越谷吾山 方言に憑かれた男 日本最初の全国方言辞典を編む』(杉本つとむ さきたま出版会 1989)
p259-278「終章 吾山の晩年と追善集『雪を花』」となっている。
p260に、「辞世 花と見し雪はきのふぞもとの水 師竹庵」とあり。
この章は、晩年の吾山が次第に衰えていったらしいこと、弟子の滝沢羅文が大変に哀悼の念を持っていたこと、
同じく滝沢馬琴は「芭蕉の再生」と言っていたこと、一周忌追善に編まれた『雪を花』に友人の井上春蛾
が「序」を記し、吾山を詩仙とあがめているこなどが詳述されている。
②『物類称呼 生活の古典双書17』(越谷吾山 杉本つとむ 八坂書房 1976)
p198-204「越谷吾山のこと」の節があり、人物についてまとめられている。
p200に、辞世の句として、「華と見し雪はきのふぞもとの水(追善句集『もとの水』)」とあり。
吾山の墓が越谷市天嶽寺にあり、著者は墓碑の考証から、吾山が会田家の墓地ではなく、おそらく妻の実家である
神田氏の敷地に葬られていると述べている。「この神田氏はおそらく吾山の妻の実家で、当時は問屋場を営んでかなり羽振りのいい家柄だったようである。吾山とその生活や蔵書のことなどを考えると、このへんにも何か人間吾山を考察する上での資料がありそうである。」との指摘があり。
③『杉本つとむ著作選集 7 辞書・事典の研究』(杉本つとむ 八坂書房 1999)
本書の第2章が「越谷吾山『物類称呼』とその世界」となっている。この中でp132-136が「吾山と越谷と江戸」の節にあたるが、前掲②の記述とほぼ同じ。
④『越谷吾山 附吾山俳句集』(志田義秀 埼玉県立浦和図書館(製作) 1986)
本書は昭和9年(1934)に越谷吾山翁記念事業会から発行された非売品を県立浦和図書館で複写製本したもの。句集としては、吾山研究の最もまとまった資料と考えられる。
p68に、「辞世 花と見し雪はきのふぞもとの水 吾山」があげられており、その誹風について「芭蕉が越人に送った「二人見し雪は今年も降りかるか」の句を連想させるものであるが勿論句の内容意義は異なつてゐて、吾山の終焉の句としてふさはしいものである。」と評されている。
⑤『江戸中期「俳諧師師竹庵・越谷吾山」の話』(杉本つとむ 越谷市郷土研究会 1999)
平成11年8月に越谷市中央市民会館で開催された講演会の資料。
⑥視聴覚資料 『レクイエム/アディエマス カール・ジェンキンス』(西カザフスタン・フィルハーモニック・オーケストラ 東芝EMI 2005) 当館にジェンキンスのCDがあり、附属の解説書を確認したところ、意味として「昨日の雪は 桜のように降っていたけれど今はもとの水に返ってしまいました」(対訳:藤野治美)とあり。
その他、該当の句ではないが、Web上で見られる吾山関係の情報を参考までに連絡する。
◆《越谷市Webサイト》
越谷吾山句碑(市指定文化財)が掲載されている。
(http://www2.city.koshigaya.saitama.jp/miru/tera/sisekikyuuseki/index.html 2009/01/26最終確認)
◆《早稲田大学 古典籍総合データベース》
吾山の著作「師竹庵聞書」(滝沢羅文記)がデジタル・ライブラリーの体裁で見られる。
(http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/search.php 2009/01/26最終確認)
- 事前調査事項
-
情報源:Requiemの楽譜には「Hana to mishi Yuki wa kinouzo Moto no mizu」とある。俳句は「花と見し 雪は昨日ぞ 元の水」(満開の桜の花が散るように見えた昨日の雪は、もう溶けてもとの水に戻ってしまった、人の人生もこれと同じようなもの)と推測・解釈するが確認したい。
調査済み資料:この組曲は英語の輸入版が日本でも入手可能
(音楽CD)http://www.amazon.co.jp/Karl-Jenkins-Requiem/dp/B0007S67K2/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=music&qid=1232893597&sr=1-2
(合唱譜)http://www.amazon.co.jp/Requiem-Karl-Jenkins/dp/0851624855
- NDC
-
- 詩歌 (911 9版)
- 貴重書.郷土資料.その他の特別コレクション (090 9版)
- 音楽史.各国の音楽 (762 9版)
- 参考資料
-
- 『越谷吾山 方言に憑かれた男 日本最初の全国方言辞典を編む』(杉本つとむ さきたま出版会 1989)
- 『物類称呼 生活の古典双書17』(越谷吾山 杉本つとむ 八坂書房 1976)
- 『杉本つとむ著作選集 7 辞書・事典の研究』(杉本つとむ 八坂書房 1999)
- 『越谷吾山 附吾山俳句集』(志田義秀 埼玉県立浦和図書館(製作) 1986)
- 『江戸中期「俳諧師師竹庵・越谷吾山」の話』(杉本つとむ 越谷市郷土研究会 1999)
- 『レクイエム/アディエマス カール・ジェンキンス』(CD 西カザフスタン・フィルハーモニック・オーケストラ 東芝EMI 2005)
- キーワード
-
- 俳句
- 越谷 吾山(コシガヤ ゴサン)-会田 吾山(アイダ ゴサン)
- 人物-越谷市-埼玉県
- 俳人-江戸時代
- 郷土資料
- Jenkins Karl(ジェンキンス カール)
- 音楽家-作曲家-イギリス
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000055818