①謎であるが、テレーゼ・フォン・ドロスディック(旧姓:マルファッティTherese von Malfatti)へ
の献呈説は有力である。ただし、2009年にソプラノ歌手エリーザベト・レッケル(1793-1883)だったと、
ドイツの音楽学者K.Mコーピッツが発表し、話題を呼んだ。しかし、それに反論する説も現れ、「いくつか
説があるが、いずれも決定的でない」とみるのが今のところ妥当とされる。
②自筆譜は消失。(テレーゼ・フォン・ドロスディック夫人よりミュンヘンのブレードル嬢に譲られたが、
その後、消失) ただし、スケッチのみ存在し、当館はファクシミリを所蔵
③有。手紙の1枚目のファクシミリ→当館所蔵下記参考図書の中にあり
請求記号:X-036/(45)/K (C13-839)
Manuskripte, Briefe, Dokumente, von Scarlatti bis Stravinsky; : Katalog der Musikautographen-Sammlung Louis Koch. / Beschreiben und erläutert von Georg Kinsky. (Stuttgart : Hoffmannsche Buchdruckerei F. Krais, 1953)
p.60
57[Ms.Nr.6] Clärchens Lied →Facsimile Nr.8, Seite 1-3
<探し方>
1)第一典拠としては、まず、キンスキーの作品目録を見る
請求記号:X-044/B415/K (C20-370)
Das Werk Beethovens : thematisch-bibliographisches Verzeichnis seiner sämtlichen vollendeten Kompositionen / von Georg Kinsky ; Nach dem Tode des Verfassers abgeschlossen und hrsg. von Hans Halm.( München : G. Henle Verlag, [c1955])
索引から
Klavierstuck”Für Elise”(Therese?)→WoO59→p.505-506
その参考文献Literaturから、次の文献へ
M. Unger : Beethovens Klavierstuck “Fur Elise”, IN “Die Musik”15-5
請求記号:P163/15(5)
2)日本語文献を探す
◇CiNii→エリーゼのために→湯浅玲子著:ベートーヴェン『エリーゼのために』楽曲分析
IN 『ショパン』20巻10号 請求記号:P893/20/(10)
◇OPAC→ベートーヴェン+書簡集
請求記号:当館請求記号●C27-921
ベートーヴェン書簡選集. 上 / 小松雄一郎訳編 (音楽之友社, 1978)
p.229-239 特にp.237-239
118 メートリングのテレーゼ・マルファッティ の(註1)に詳しい事情が記されている
↓
この手紙の始まりの「お約束のもの」は、《クレルヘンの歌》Op.84,4と推定されていたため、
③の目録ではClärchens Liedのファクシミリと一緒に掲載されたようである。
◇GeNii→Webcat Plus →エリーゼのために(一致検索)
請求記号:J123-787
知って得するエディション講座 / 吉成順著 (音楽之友社 2012)
p.40-52に、従来の有力な説と新しく登場した説が並べて述べられている。また、スケッチ、
初版、旧全集からベートーヴェンの意図について詳説されており、「作品は誰のものか」につ
いての著者の意見も述べられている。
3) 上記の本で挙げられている文献を探す←Rilmより
請求記号:J118-451
Beethoven, Elisabeth Röckel und das Albumblatt “Für Elise”/
von Klaus Martin Kopitz. (Verlag Dohr, 2010)
ドイツの音楽学者コーピッツによる著作。彼は、ウィーンの聖シュテファン教会に
残された1814年の文書の中でソプラノ歌手エリーザベト・レッケルが「マリア・
エヴァ・エリーゼ」として記録されていることを発見。また、悪筆で知られる
ベートーヴェンの手紙を読みこなしたノールが、この自筆譜の上書きだけを読み
間違えるはずはないのではないかとして、「エリーゼはエリーザベト・レッケル」説
を著した。
⇒翌年(2011)、オーストリアの音楽学者ローレンツが『暴かれたエリーゼ―エリーザベト・
レッケルがベートーヴェンのエリーゼだった期間は短かった』との論文で反論。
Die “Enttarnte Elise”: Elisabeth Röckels Kurze Kaeeiere als Beethovens “Elise”.
IN Bonner Beethoven-Studien; 2011, Vol.9, p.169-190 P5326/9
4) 自筆のスケッチとそれに基づく批判校訂楽譜+解説
◇OPAC→タイトル:Fur Elise (フレーズ)→件名:facsimiles(フレーズ)
請求記号:J97-650, J98-310
Klavierstück a-Moll WoO 59 : für Elise / Ludwig van Beethoven ; Kritische Ausgabe mit Faksimile der Handschrift BH 116, Skizzentranskription und Kommentar von Sieghard Brandenburg (Verlag Beethoven-Haus, c2002)
シリーズ:Veröffentlichungen des Beethoven-Hauses Bonn. Reihe III, Ausgewählte Handschriften in Faksimile-Ausgaben ; Bd. 18
ベートーヴェンハウス所蔵のスケッチとそれに基づいて音楽学者ブランデンブルクによる批判校訂報告がつけられ、出版されたもの。楽譜部分のスケッチであるため、今回のレファレンスのテーマ「誰に献呈されたものか」の手掛かりとなる題名は記されていない。
請求記号:J97-670
Für Elise : Beethovens Entwurf zu dem Klavierstück WoO 59
シリーズ:Jahresgaben des Vereins Beethoven-Haus 2002 ; Heft 19 (Verlag Beethoven-Haus, 2002)
注記:
"Sonderdruck aus Reihe III, Ausgewählte Handschriften in Faksimile-Ausgaben, Band 18."--P. [2] of cover
"Faksimile des Originals im Besitz des Beethoven-Hauses, BH 116 (S. 1 und 4)"--P. [2] of cover
上記スケッチの実物大ファクシミリ。シリーズの補遺として出版されたもの。
5)参考文献
◇マックス・ウンガーによるベートーヴェンの筆跡に関する次の研究書がある
請求記号●C37-728
Beethovens handschrift, / von dr. Max Unger ... (Veröffentlichungen des Beethovenhauses in Bonn ; IV)
(Verlag des Beethovenhauses, 1926)
◇新全集の校訂報告にOp.84,4のファクシミリが③に掲載されていることが記されている
当館請求記号●A9-862
Beethoven Werke, Abteillung XII・Bd.1, p.102
◇自筆譜ではないが初版譜と発見の詳細について、次の文献に記されている
請求記号●C3-556
Neue briefe Beethovens : Nebst einegen ungedruckten gelegenheitscompositionen und auszügen
aus seinem tagebuch und seiner lectüre / Hrsg. von Ludwig Nohl. (Neue briefe Beethovens : Nebst
einegen ungedruckten gelegenheitscompositionen und auszügen aus seinem tagebuch und seiner
lectüre / Hrsg. von Ludwig Nohl.)
p.28-33
*なお、③の目録は、編者はキンスキー(ベートーヴェン目録の編者)であり、Kochは、
コレクター(所蔵主)のため、簡略形では、次のように記されるので、注意が必要
G.Kinsky, Manuskripte, Briefe, Dokumente von Scarlatti bis Stravinsky
または、もっと簡略にKinskys Katalog der Sammlung Koch
*また、③に記されていた次の文献は、当館で所蔵しているが、手紙のファクシミリの掲載は確認できなかった
Die Musik, (9. Jahr, Heft 18) 請求記号:P163/9(18)
Paul Bekkers Beethoven Seite 71 der Abbildungen 請求記号:C3-346 C37-600
→Abbildung なし。
◆補足
③請求記号:X-036/(45)/K (C13-839)のp.60に掲載されているという典拠
⇒Beethoven Briefe 1808-1813 請求記号:J83-924 p.122-124
442. Beethoven an Therese Malfatti in Walkersdorf [Wien, gegen Ende Mai 1810]に
この手紙全文と注記がある
注記によれば、オートグラフは個人所有(スイス)。ファクシミリの1頁目が③のカタログのS.60
にあることが記されている。この独語と突き合せることにより、ファクシミリが解読可能となる!