レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015/05/11
- 登録日時
- 2016/10/29 00:30
- 更新日時
- 2016/11/01 10:40
- 管理番号
- 0000001405
- 質問
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解決
現在残っている能登の麦屋節の歌詞を調べたい。
①入れ詞「すべってころんで」が入っているか。
②正しい歌詞があれば知りたい。
- 回答
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(1)『石川県の民謡』(石川県教育委員会編 加能民俗の会 1981.3)・『門前町史』(門前町史編集委員会編 門前町史編集委員会 1970)・『石川県の文化財』(石川史書刊行会編 「石川県の文化財」編集委員会編 石川史書刊行会 1985.3)収録の歌詞は同じものと思われます。
①『石川県の民謡』は、「本書は、昭和54・55年に実施した石川県内民謡緊急調査の報告書で、市町村の教育委員会が推薦した調査員より提出された調査票・収録記録票にもとづき、市町村ごとにまとめたものである」とあり、また「節まわしを忘れていても歌詞を記憶しているものは一応対象とし」(例言)とあるものです。
本書p246「能登麦屋節」の項によりますと、
「七浦に伝わる麦屋節である。(中略)文化文政の頃は70軒を越す麦屋があり素麺の生産も最盛期であったという。働く娘たちも200~300人もいたようである。旧西保・浦上・七浦・諸岡、あるいは河原田・三井・鵠巣・南志見などに麦屋節が歌い残されたのは当然である。(中略)昭和初期までは西保・浦上・道下・七浦・南志見・町野方面に原型に近いものが僅かに残っていた。その中で最も長く歌い踊られていたのは五十洲と西山である。それで五十洲に何軒かの麦屋のあったことが推測される。五十洲の歌い手は安藤ハル・角島みよの両名で一風異なっている。(中略)今度の録音や調査記載の歌詞にはないが(中略)五十洲独特である。(後略)」とあり、以下の通り、七浦採録の歌詞を掲載しています。
「○能登の志津良で竹切る音は 三里きこえて五里ひびく(七浦)
○ここは藻浦か通りが端か おろく倒しかなつかしや(同)
○輪島麦屋は七軒(ななやけ)八軒(ややけ)中の麦屋に市がたつ(同)
○麦や小麦は二年で孕みむ 米やお六は年孕み(同)
○輪島み町の 麦挽きやめて いつか小伊勢の橋渡ろ(同)
○輪島名所と 連れてはきたが 何が名所や 麦ひきや(同)
入れ詞
○竹の丸木橋ゃ すべってころんであぶないけれど 君となら渡る 落ちて死すとも もろともに
○おらが若い時ゃ さびやの山の その又奥の青山すすき 今はやつれて 炭俵
○竹の切口ゃ スタタンコタント ナミナミダンブリ 溜り水 水は澄まず濁らず出ず減らず
○おらが友だちゃ 向かいの小川のだんだん畑の かたがり畑の 茶の木の根っこに
○黄色に真っ赤に 五色に咲いたる 菜種の花や 最中(さなか)すぎれば チヤバラヤ」
②『門前町史』p806~807では、上記の歌詞を収録するとともに、「入れ詞」の分だけ楽譜がついています。
③『石川県の文化財』p324では、県指定無形民俗文化財(昭和43年2月26日指定)としての能登麦屋節の解説に、同様の歌詞が記されています。
(2)「石川県民謡協会が昭和63年から4か年計画で石川県内の潜在的民謡の発掘」(刊行のことばより)した『ふるさと石川の民謡』(「ふるさと石川の民謡」編纂委員会編 石川県民謡協会 1992.3)p223~225掲載の能登麦屋節は、以下のような歌詞です。
「能登の七浦で 竹切る イナ(チョイト)
音はヤーイナ 三里きこえて イナ(チョイト)
五里サヤー イナひびくやー
アラチョイト 五里ひびくやーイナ
三里きこえて イナ(チョイト)
五里サヤー イナ ひびくやー」(後略)
こちらには楽譜がついています。
「入れ詞」とされている部分はありません。
(3)『ふるさとのいぶき 北陸の民謡 改訂・増補版』(小坂登志喜企画・編集 加賀民謡会 1997.10)では、以下の通りです。
『付録歌詞編』p70~71では、
「麦や小麦はイナ二年でイナ(アチョイト)孕むヤイナ
米やお六はイナ(アチョイト)年サヤイナ孕みや
(アラチョイト 年孕みヤイナ)
米屋お六はイナ(アチョイト)年サヤイナ孕みや
竹の切口ゃイナ スコタンコタンと
なみなみたんぶり溜り水イナ(アチョイト)水はヤイナ」
から始まり、
「能登の七浦で 竹伐る音は
三里聞えて 五里響く」
という歌詞になり、
「竹の丸木橋 滑って転んで」
という歌詞もあります。(「入れ詞」であるという記載はありません。)
同書[本編]には楽譜が収録されていますが(『ふるさとのいぶき 北陸の民謡 改訂・増補版』p138~139)、
楽譜に書き込まれている歌詞は、「能登の七浦で 竹伐る音は」からの歌詞になります。
(4)この他の図書収録の歌詞も、採録者・出版社により、すべて少しずつ異なります。
①『日本民謡大全集 下巻』(千藤幸蔵編 長田暁二編 ドレミ楽譜出版社 1990.6)p84~85
「麦や小麦はイナー 二年でイナー(ちょいと)刈るがヤーイナ 米はお六でイナー(チョイト)」からは始まり
途中から「能登の志津良で 竹切る音は」という歌詞になり、
「(字あまり)竹の丸木橋 滑って転んで」という歌詞が続きます。
※『日本民謡選集』(千藤幸蔵編著 長田暁二編著 ドレミ楽譜出版社 1996.5)p133も同じ。
②『日本民謡大鑑 下』(榊原帰逸著 西田書店 1985.5)p37~38
「おらが若い時きゃ佐比野の奥の
そのまた奥の 青山すすき
今はやつれて 炭俵」
から始まり、最後には
「竹の丸木橋じゃすべってころんで」から始まる歌詞も記載されています。(入れ詞とは記載されていません)
③『日本民謡の旅 1』(服部竜太郎著 河出書房新社 1973)p201~202
「竹の丸木橋ゃ
すべってころんで あぶないけれど
君となら渡る ヤアイノ
落ちて死ぬとも もろともに」
から始まり、『石川県の民謡』で入れ詞としている部分のみが歌詞とされています。
同書によると「北陸鉄道の岡田弘さんが録音テープを送ってくれたので、それから採譜することができた」とあります。
④『北陸民謡集 改訂版』(加賀山昭編 加賀山会 1987.5)p134~135
「輪島麦屋はイナー 七軒イナー
八軒やイナー中の麦屋でイナー
市サヤイナ 立つヤ
(アラチョイト市立つヤーアイナ)」から始まり、
「能登の七浦でイナー 竹切るイナー」という歌詞になり、
途中で
「(字余り)竹の丸木橋ゃすべって転んで」から始まる歌詞があります。
他にも能登麦屋節の歌詞を収録した図書があるかもしれませんが、以上で、回答とさせていただきます。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 音楽.舞踊.バレエ (76 9版)
- 参考資料
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- 1 石川県の民謡 石川県教育委員会∥編 加能民俗の会 1981.3 K388.9/8 p246
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2 門前町史 門前町史編集委員会∥編 門前町史編集委員会 1970 K213/12 p806-807 -
3 石川県の文化財 石川史書刊行会∥編 「石川県の文化財」編集委員会∥編 石川史書刊行会 1985.3 K709/65 p324 -
4 ふるさと石川の民謡 「ふるさと石川の民謡」編纂委員会∥編 石川県民謡協会 1992.3 K767/31 p223-225 -
5 ふるさとのいぶき 北陸の民謡 改訂・増補版 小坂 登志喜∥企画・編集 加賀民謡会 1997.10 K767/1001 p138-139 -
6 ふるさとのいぶき 北陸の民謡 付録 改訂・増補版 小坂 登志喜∥企画・編集 加賀民謡会 1997.10 K767/1001/B p70-71 -
7 日本民謡大全集 下巻 千藤/幸蔵?編 長田/暁二?編 ドレミ楽譜出版社 1990.6 767.5/26/2 p84-85 -
8 日本民謡選集 千藤/幸蔵?編著 長田/暁二?編著 ドレミ楽譜出版社 1996.5 767.5/34 p133 -
9 日本民謡大鑑 下 榊原/帰逸?著 西田書店 1985.5 388.9/80/2 p37-38 -
10 日本民謡の旅 1 服部竜太郎∥著 河出書房新社 1973 388.9/42/1 p201-202 -
11 北陸民謡集 改訂版 加賀山 昭∥編 加賀山会 1987.5 K388.9/14 p134-135
- キーワード
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- 麦屋節
- 民謡
- 石川県
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000198887