レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年02月23日
- 登録日時
- 2018/03/08 17:24
- 更新日時
- 2019/09/12 18:39
- 管理番号
- 島根郷2018-02-006
- 質問
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解決
大名茶人として有名な松江藩主・松平治郷(不昧)が好んだ和菓子を作っていたのは、何という店か。その店は現在も残っているか。
- 回答
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当館所蔵資料より、下記の資料を紹介し回答。
三津屋(惣七)・面高屋は廃業、三津屋(作兵衛)は「一力堂」として継承されている。
資料1:p315-333「銘菓こぼれ話」(佐藤光恵)。松江での御用菓子司は「三津屋」「面高屋」があげられている。「三津屋」は宝暦年間に、三津屋惣七と三津屋作兵衛の兄弟二軒に分かれた。惣七の店は戦前まで天神町で「三津屋」を構えていた。作兵衛の店では代々「作兵衛」を襲名していたが、姓は「三津屋」から「高見」に変わっていた。これは明治の頃に高見万太郎という人物が養子に入り、高見姓を名のったためで、これは現在の「一力堂」であることが判明した。
「面高屋」は、不昧が家老・有沢織部の山荘にお成りの時に、面高屋新四郎道順が菓子を進呈したところ、これを見た不昧が喜び「菜種の里」と名付けたという。また明治初期に面高屋四郎(船越与四郎)は有沢宗閑に進められて桜餅を作った。廃藩により糊口を失った面高屋は、有沢宗閑が菅田の山荘を開放した際に観桜ににぎわう客に桜餅を売った。のちに、面高屋は明治23年に松江城山に「友松庵」という茶亭を出すが、平成6年の工事による立ち退きによって廃業した。
p306-311「不昧翁好み座菓子」(荒木英之)。『不昧伝』によると、不昧好みの主菓子は江戸では本所二つ目橋の「越後屋」、松江では「三津屋」が作ったとされる。また松江の石橋町にあった「面高屋高助」も不昧流門人・有沢家から主菓子を下命されていて、松江ではこの2軒が抹茶御用菓子の宗家である、としている。三津屋は兄弟それぞれが店を持ち、兄・作兵衛が米子町で、弟・総七が横浜町で店を構え、それぞれ不昧好みの菓子を作った。兄・作兵衛の三津屋が不昧から命じられて創作したのが「山川」で、松平家から「不昧翁好み山川」の公称を唯一許されている。しかし廃藩後は菓子座の権威庇護を失い、海外から安い砂糖が輸入されると新興菓子屋から安く質の悪い「山川」が氾濫した。座菓子三家は名誉を惜しみ「不昧翁好み山川」を作らなくなった。また不昧が「沖の月」と名付けた四季の干菓子は、現在「一力堂」が洋糖採用時に改称して「姫小袖」として引き継いでいる。
弟・総七の三津屋では「むらくも」と「しののめ」の白ようかんが不昧好みであった。しかしこの店は戦中の悪貨により廃業した。
資料2:p260「菜種の里」。菓子と面高屋の紹介(資料1と同じ)。現在、菜種の里は「三英堂」が作っており、これは面高屋の子孫から三英堂が製法を譲ってもらったことによるとする。
p353「山川」。「山川」は不昧が江戸・品川宿の菓子匠伊勢屋越後大掾に作らせ、松江には伊勢屋で修業した面高屋(船越)新四郎道順が伝えた、としている。
資料3:p137-143「お菓子」(佐藤光恵)。内容は資料1とほぼ同じ。三津屋作兵衛(米子町)は「菜種の里」「御好松葉」「山川」「鹿の子」「羊羹」を納めていた。明治8年に出雲から高見万太郎が養子に入って高見姓を名乗り、名前の「万」の字を二つに分けて「一力堂」と名前を変えて現在も営業している。三津屋惣七(横浜町)はお好み白羊羹「しののめ」「むらくも」を納めていた。横浜町大火で白潟天満宮の大鳥居横に移転して営業していたが、戦時中に材料の入手が困難となり廃業したという。
「面高屋」は船越新四郎が不昧の命で、品川宿の伊勢屋で「山川」の製法を習い、松江に広めたとする。寛政元年5月に有沢山荘に不昧がお成りの際に菓子を進呈し、不昧が「菜種の里」と名付けた。(以下は資料1と同じ)
資料4:1993年8月号p16「続・松江余談」(5)「『友松庵』のこと」。明治の中期に面高屋は軌道に乗ってきた茶店を通年営業に切り替え、友松庵の名で面高屋支店として数寄屋造りの店を出す。友松庵とは面高屋の茶室の庵号であった。その後も昭和30年の松江城解体修理工事で出てきた古材を建物に使うなどしてきた。しかし、今、松江城山公園にある茶店6軒に撤去の話が進んでおり、松江城を国宝指定にするために石垣の修理や櫓の復元が計画されているとする。
- 回答プロセス
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資料5:中巻p185-187にお好み菓子についての記述あり。「松江にては三津屋作兵衛、江戸にては本所二つ目越後屋といふもの」とあり。茶会記に載っている菓子の名前を列挙する。
- 事前調査事項
- NDC
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- 個人伝記 (289 8版)
- 茶道 (791 8版)
- 食品.料理 (596 8版)
- 参考資料
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【資料1】松平不昧と茶の湯. 不昧流大円会事務局, 2002.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069425308-00 (当館請求記号 郷貸出791.2/フ01) -
【資料2】奥山益朗 編 , 奥山, 益朗, 1918-2006. 和菓子の辞典. 東京堂出版, 1983.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001638093-00 (当館請求記号 588/148) -
【資料3】「三百ケ条」通して考える不昧流茶道文化. 不昧流研究会, 2011.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069438042-00 (当館請求記号 郷貸出791/サ/1) - 【資料4】しょほう.第452-474号(1993-94) 松江商工会議所. (当館請求記号 (逐次刊行物)SZ61/シ/93-94 ※貸出禁止資料)
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【資料5】松平家編輯部 編纂 , 松平家. 松平不昧傳 増補復刊. 原書房, 1999.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002839735-00 , ISBN 4562032529 (当館請求記号 郷貸出289.1/マ99)
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【資料1】松平不昧と茶の湯. 不昧流大円会事務局, 2002.
- キーワード
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- 和菓子
- 松平治郷 松平不昧
- 松江藩
- 茶道
- 不昧公好み
- 御用菓子
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000232309