レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年9月7日
- 登録日時
- 2021/10/17 09:54
- 更新日時
- 2021/10/24 16:10
- 管理番号
- 県立長野-21-146
- 質問
-
解決
長野県内の養蚕信仰の「蚕玉(こだま)さま」(石碑、木像など)について書かれている資料、特に長野県内の郷土資料家の論文やレポートがあるかどうか知りたい。また、初午の行事の際に蚕玉さまのおまつりをやっているところがあれば知りたい。
- 回答
-
<「蚕玉さま」についての資料>
1 『駒ケ根市誌 現代編 上巻』 駒ケ根市誌編纂委員会 駒ケ根市誌刊行会 1979【N242/61-3/1】
・p.706 「蚕玉祝」の項 横山家では八月十二日に繭かきをしたとあり、「養蚕家は「繭かき」をめ
でたいものとし、砂糖餅(あんころ餅)を作 り、蚕玉神に供え、会食する習慣があった。」
2 『駒ケ根市誌 現代編 下巻』 駒ケ根市誌編纂委員会 駒ケ根市誌刊行会 1974【N242/61-3/2】
・P.357-358 「蚕玉神社」の項 「養蚕が盛んになったのにつれて、蚕玉大神を祀る信仰が広ま
り、各地随所に蚕玉大神の碑が見られる。」 代表 的なものは、馬見塚の「蚕玉さま」で、
毎年五月上旬に例祭があるとのこと。
・p.598 「蚕玉石」 大久保という地域の筥石神社の東裏にあり、「昔、駒形明神(蚕玉神)が
西駒ケ岳より馬に乗って大久保の地に降り、養蚕の道を教えたと伝えている。」
3 『飯島町誌 中巻 中世・近世編』 飯島町誌編纂刊行委員会 飯島町 1996.2 【N242/110/2】
・P.498 「蚕玉様を祭る」 蚕玉様を祭るようになったのは、文政年間以降。小正月に養蚕の
豊作を祈るまゆ玉飾りが行われていた。
4 『飯島町誌 下巻 現代、民俗編』 飯島町誌編纂刊行委員会 飯島町 1993.3 【N242/110/3】
・P.1082-1083 「蚕玉神(こだまがみ)」 「石を神体としたものが飯島町には三九基ある。」
5 『南箕輪村誌 上巻』 南箕輪村志編纂委員会 南箕輪村誌刊行委員会 1984.12 【N242/100/1】
・P.528-529 「蚕玉(こだま)神信仰」 豊作を祈願し、また報恩のため祀るようになり、
村内に石碑または祠にまつられている。
6 『上松町誌 第2巻 民俗編』 上松町誌編纂委員会 上松町 2000.7 【N234/96/2】
・p.210 蚕玉神社
7 『泰阜村誌 上巻』 泰阜村誌編さん委員会 泰阜村 1984 【N243/134/1】
・P.474-475 「蚕玉神碑」の項 「蚕玉神は養蚕の豊饒を願う神として各村に祀られ、
養蚕業の盛んとなる明治中期から大正期に建てられた。」として、碑の一覧が掲載されている。
8 『喬木村誌 上巻』 喬木村誌編纂委員会 喬木村 1979 【N243/109/1】
・P.834-835 「蚕玉神」の項 江戸末期から部落ごとに蚕玉様を祭り、村の春祭りが
終わって部落の蚕玉祭りがあった、とあり。村内の蚕玉神の石碑建立年代及び分布一覧あり。
9 『高森町史 上巻後篇』 長野県下高井郡高森町史編纂委員会 高森町史刊行会 1972 【N243/76/1-2】
・p.1051-1053 「蚕玉堂」
・P.1152 「蚕玉神」
10 『白馬の歩み 第3巻』 白馬村誌「白馬の歩み」編纂委員会 白馬村 2003.3 【N231/51/3ア】
・P.467-468 「蚕玉(こだま)様」の項 「蚕影社ともいい、茨城県の筑波山麓に鎮座
する蚕影神社が本社で、ここが天竺から渡来した養蚕のわざの、我が国での始原の地であるとの
伝承をもつ。」
11 『木曽福島町史 第3巻』 木曽福島町教育委員会 木曽福島町 1983 【N234/76/3】
・p.1096-1097 「蚕玉様」 石碑の一覧表
12 『三岳村誌 上巻』 三岳村誌編さん委員会 三岳村誌編さん委員会 1987 【N234/80/1】
・P.625-626 「蚕玉様」 小正月にマユの形をした団子を神棚に供えたり、
「蚕玉大明神」と刻んだ大きな石碑の造立の事例が書いてある。
13 望月龍平(飯田市)「口絵解説 経蔵寺の蚕玉様(飯田市上郷別府)」
『伊那 第51巻5号』 伊那史学会 2003.5 表題紙裏
14 山内尚巳(飯田市)「口絵解説 清内路街道山本青木の石造蚕玉様」
『伊那 第53巻2号』 伊那史学会 2005.2 表題紙裏
15 『長野県中・南部の石造物』 倉石忠彦 長野県民俗の会 2015.2
・p.20 「梨久保の蚕玉様」(泰阜村)
・p.41-42 「北組の蚕玉様」 (中川村北組)
・p.55 「大萱の蚕神女神象」(伊那市西箕輪大萱)
・p.55-56 「白姜蚕(はっきょさん)供養文字碑」 (伊那市西箕輪大萱)
・p.72-73 「木曽沢の蚕玉神」(辰野町川島)
・p.230 「4 山の神と蚕玉様」
<論文・レポート>
1 挽地 康彦(和光大学) 「産業の神・諏訪明神―養蚕信仰から結社の神へ」
『諏訪学』山本ひろ子 国書刊行会 2018年 p.175-217
・p.190-197 「諏訪における蚕玉社」 の中に、「諏訪郡内の各村々では蚕の豊作祈願
のために、その守護神「蚕玉(コダマ)神」の石碑や蚕玉社が建てられ篤く信仰された」とあり、
詳しく論じられている。 (※著者は長野県内の郷土資料家ではない。)
2 原平夫(上伊那郡南箕輪小学校教諭)「蚕玉さま」
『伊那路 第6巻6号』 上伊那郷土研究会 1962.6 p.35-36
・蚕の神様と女神、馬との関係が考察されている。
3 赤羽篤(辰野町)「石仏調査からみた辰野町の蚕玉様」
『伊那路 第50巻5号』 上伊那郷土研究会 2006.5 p.14-22
・辰野町にある石碑について、また、蚕玉いわれの昔話についてなどが書かれている。
4 赤羽篤(辰野町)「石造物調査からみた上伊那地方の蚕玉様」
『伊那路 第50巻10号』 上伊那郷土研究会 2006.10 p.401-414
・上伊那地域にある蚕玉様の石碑について、一覧表と詳しい解説がある。また、
明治10年ごろの上伊那地方の生糸の輸出などについても書かれている。
5 小原稔(松本市島内)「松本平の養蚕神(松本市島内)」
『長野県民俗の会通信 第274号』 長野県民俗の会 2019.11 p.6-8
・島内の蚕玉様16基について一覧と考察がある。
6 竹村庄平(飯田市)「梨子野の蚕玉様祭」 『伊那 第33巻1号』 伊那史学会 1985.1 p.29-32
・明治初期、山本村と清内路村の境にあたる梨子野峠に祀られていた蚕玉様の祭りに
関する記録『梨野児玉神社』と碑についての解説。
7 木下睦美(飯田市)「養蚕の民俗〜蚕玉様は馬に乗ったり舟に乗ったり〜」
『伊那 第50巻1号』 伊那史学会 2002.1 p.22-26
・養蚕にまつわる様々な信仰、「おかいこさま」、「オシラサマ」、「舟に乗る
蚕玉さまと蚕影山信仰」、「ウマクトレルと初午信仰」について、飯田地方につたわる
事例を紹介している。中でも長石寺に関して、「お参りに行かなくとも、床の間に蚕玉さま
の掛け軸を掛け、「今年も午く(うまく)蚕が当たりますヨーニ」と祈願した」とある。
8 棚田芳雄(飯田市)「蚕玉様信仰についての思い」
『伊那 第58巻12号』 伊那史学会 2010.12 p.22-25
・「座光寺中羽場耕地の蚕玉神像」、「蚕玉様と馬鳴(めみょう)菩薩」、
「座光寺古賀比(蚕飼)神社」についての解説。中でも、蚕玉様関係のお札に女性乗馬の
蚕玉大神のお札があったとのこと。
9 岡田正彦(飯田市)「伊那谷の馬鳴菩薩信仰とオシラサマ-蚕玉様信仰の一側面-」
『伊那 第60巻12号』 伊那史学会 2012.12 p.30-36
・座光寺にある石碑が馬鳴菩薩像でオシラサマ信仰に関係があるのではないかと
疑問をもった著者は柳田國男の『遠野物語』に記載のある愛馬の悲恋物語と関連すると
考え調査した論文。二つの蚕の起源伝説として、蚕影神社に伝わる金色姫譚(こんじきひめたん)
と馬娘婚姻譚(ばろうこんいんたん)を紹介している。
<初午の行事の際のおまつりについて>
1 『三郷村誌 1』 三郷村誌編纂会 三郷村村誌編纂会 1980 【N232/23】
・p.427 「蚕玉あげ」の項 「蚕の上簇祝い、農家では餅をつき小豆餅、あんころ餅
にした。うんと甘くして蚕玉様に上げると、次の年、蚕があたるといわれた。(中略)
時期的に十月上旬、しかも午の日が選ばれる事は三月の初午の蚕玉祭りと同様である。
この日は余興の演技があったり、酒肴が用意されたり、遊ぶ日であるとされた。」
・p.420-421 「初午」 の項 「「蚕は竜の性たり、馬と気を同じうす」など
といわれ養蚕と馬との因縁は古代から深いものであったらしく、養蚕大当たりを願う
この地方の農民にとって、この初午の日に蚕玉祭を行うことは実に大切であった。
(中略)養蚕の大当たりを祈って、若年のように繭だんごをこしらえ…」
・p.416 「若年」の項に、繭玉など縁起の良い品々の形のだんごを柳の枝の先に
つける、という説明がある。
2 『三郷村誌 2 第5巻』 三郷村誌編纂会 三郷村村誌編纂会 2004.9 【N232/23/2-5】
・p.273-274 1と同様に「蚕玉あげ」の説明がある。
3 多田井幸視(長野市 山王小学校教諭)「養蚕農民の生活と蚕玉様-長野県南安曇郡旧梓村の場合-」
『信濃 第29巻第1号』 信濃史学会 1977.1 p.51-61
・大正期の養蚕飼育の様子を「蚕玉様(こたまさま)」という養蚕神との関りで
考察している。
・p.52 小正月と2月最初の午の日の初午の行事についての記述がある。
「ハツウマの日は蚕玉様やお稲荷様へお参りをし、繭形の団子(キンコと言った)」を供える。
家の蚕玉様には蚕籠へ紙を敷き、マブシの中へキンコを入れていかにも繭のようにして
供える家もあった。この日は近所で寄り合って酒を飲むのが習わしであった。」
<参考資料>
蚕玉神の記述はないが、その他の蚕にまつわる信仰や神様について分かる資料。
・『養蚕と蚕神 近代産業に息づく民俗的想像力』
沢辺満智子 慶應義塾大学出版会 2020.2 【632.1/サマ】
・『蚕を育むくらし 収蔵品展くらしのうつりかわり 』
富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館編・刊 2008.2 【384.3/トミ】
- 回答プロセス
-
1 事前調査事項以外の市町村誌を確認するため、「長野県市町村史誌目次情報データベース」にて地域を選択した上で「蚕玉」で検索し、<「蚕玉さま」についての資料>1-12と<初午の行事の際のおまつりについて>1-2を確認する。「こだまさま」と読むことが分かった。
2 自館蔵書検索にて、「蚕玉さま」「蚕玉」を全項目のキーワードにし検索したところ、『伊那』や『伊那路』等雑誌論文が複数ヒットする。
3 自館蔵書検索にて、「養蚕信仰」「養蚕」「信仰」のキーワードでは、<論文・レポート>1、<初午の行事の際のおまつりについて>の3や<参考資料>を発見する。
4 Cinii Articlesにて、「養蚕」「神」をキーワードに検索し、<論文・レポート>5を発見する。
5 自館蔵書検索にて、「石造」「蚕」のキーワードで『伊那路』の論文や<「蚕玉さま」についての資料>の15を発見する。
- 事前調査事項
-
諏訪6市町村の図書館、塩尻市立図書館にてすべてではないが、市町村史を確認済み
- NDC
-
- 蚕糸業史.事情 (632)
- 日本史 (21)
- 参考資料
-
-
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伊那路 第50巻第05号(2006/05) 第50巻第05号(2006/05) . 上伊那郷土研究会, 2006-05-10., ISSN 02877325
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伊那路 第50巻第10号(2006/10) 第50巻第10号(2006/10) . 上伊那郷土研究会, 2006-10-10., ISSN 02877325
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-
駒ケ根市誌編さん委員会 編 , 駒ケ根市. 駒ケ根市誌 現代編 上巻. 駒ケ根市誌刊行会, 1979.
- キーワード
-
- 蚕玉さま コダマサマ
- 養蚕信仰
- 石碑
- 年中行事 初午
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査 所蔵調査
- 内容種別
- 郷土 地名
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000306153