レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年10月25日
- 登録日時
- 2014/11/12 16:19
- 更新日時
- 2016/12/08 13:54
- 管理番号
- 2014-15
- 質問
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解決
マハタの高級感が伝わるようなエピソードや幻の魚と言われる所以が書かれた資料がほしい。
- 回答
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まず「お魚博士」として知られる水産学者・随筆家、末広恭雄氏の著作には、【資料1】p395-403「ハタ」の項で「ハタの仲間には美味なものが多い。」、【資料2】p24-27「ハタ類」の項で「往々にして貪魚の魚の肉にはまずいものが多いが、ハタ類、とくにマハタの味はすばらしい。古い魚類学の本にも「マハタはハタ類のなかでもっとも美味である」と書かれている。マハタは、煮るより、焼くより、まず刺身である―とりたてのマハタを刺身にして舌にのせたら、こたえられない。」とあります。なお、この「古い魚類学の本」とは【資料3】のことで、「はたじろ」の項に「漢名(からのな)詳(つまびらか)ならず。種類多し。まはたを以て上(うえ)とす。(中略)肉白く旨し。(以下略)」とあります。
次に【資料4】p146-147「マハタ」の項に「夏が食べごろで、白身で小骨が少なく、調理しやすい。大型魚で、キジハタに次いで味がよいとされ、高級魚として扱われる。刺身やすし種、煮付け、鍋物、唐揚げなどで幅広く賞味される。長崎県の〈アラ料理〉にも使われる。
《本朝食鑑》では〈旗代魚〉、《和漢三才図会》では〈鰭白魚〉として登場する。体に黒と白の帯が並ぶ文様が印象的で、黒白に染め分けられた旗を連想させ、漁師のあいだの俗説として、竜宮の戦闘で旗代わりとなる魚として考えられ〈ハタシロ〉と呼ばれた。」とあります。この「本朝食鑑」【資料5】では「旗代魚」(p152-153)として記載されており、
「旗代魚 波多志呂(はたしろ)と訓(よ)む。
[釈名]漁家のいうところでは、魚紋は黒と白とを相畳み、ちょうど、黒白に分け染めた旗のようである。竜宮に戦闘があれば、この魚を旗代わりにするので、旗代というのであると。これは笑うべき誕言(こじつけ)であって用いるに足りない。あるいは旗白とも書くが、これも相当(あた)っていない。
[集解]鱗が細かく、鰭が長く、尾に岐がない。色の黒いものが上であり、白いものは味が劣る。略(ほぼ)藻魚に似ているけれども、形は扁で、鬐(せびれ)も細脆で、肉は美白、味は甘淡で佳い。以上に記した五種の魚の気味は相類(に)ているけれども、藻魚(もうお)・旗代(はたしろ)が勝れ、眼(め)張(ばる)がこれに次ぎ、鮎魚女(あいなめ)は膩(あぶら)があって味は佳くない。」
とあります。
【資料6】「鰭白魚」(p155)の項目に
「鰭白(はたしろ・こしょう)魚 古世宇[京俗] 名の由来、正字とも未詳
△思うに、旗代魚はほぼ藻魚に似て、身が扁(ひらた)く短首。繊(ほそい)鬐(せびれ)で鱗には黒白の文様がある。肉は脆白[淡甘]。冬春に出てくる。京師ではこれを賞味しない。ただ毒がないので佳(よし)としている。」
とあります。
【資料7】「はた 羽太(別名 まはた、あら)」(p288-289)の項に「ハタは鰭とも書き、魚類の古名で、ひれ(鰭)の古称とされる。神前に供える種々の魚を祝詞では「ハタの広物(ひろもの)、狭物(さもの)」といい、ひれが広いか狭いかによって魚類の大小を表現しており、大小さまざまの魚の意である。そういえば、マハタのひれもたいそう立派であるが、縁起魚として喜ばれるようになった明白な理由は不明である。」とあります。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 脊椎動物 (487 9版)
- 水産業 (66 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『魚の博物事典』(末広恭雄/〔著〕 講談社 1989年)<当館請求記号487.51/スヤ/1989>
- 【資料2】『末広恭雄選集 4 追補 随筆で楽しむ日本の魚事典 海水魚4』(末広恭雄/著 木村清志/監修 錦秋社 2007年)<当館請求記号487.5/スヤ4/2007>
- 【資料3】『魚鑑』(武井周作/著 天保2(1831)年刊) (国立国会図書館デジタルコレクション<http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2557482/28>)
- 【資料4】『食材魚貝大百科 2 貝類魚類』(平凡社 1999年)<当館請求記号664.6/シヨ2/1999>
- 【資料5】『本朝食鑑 4』(人見必大/著 島田勇雄/訳注 平凡社 1980年 ※原著は元禄8年(1695年)刊)<当館請求記号499.9/16/4>
- 【資料6】『和漢三才図会 7』(寺島良安/〔著〕 島田勇雄〔ほか〕/訳注 平凡社(東洋文庫) 1987年 ※原著は正徳2年(1712年)頃の刊行)<当館請求記号031.2/14/7>
- 【資料7】『日本料理由来事典 中 す~わ』(同朋舎出版 1990年)<当館請求記号596.21/121/2>
- キーワード
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- まはた
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000162101