レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年12月09日
- 登録日時
- 2013/12/09 13:36
- 更新日時
- 2020/06/11 18:34
- 管理番号
- 20131209-3
- 質問
-
解決
森下仁丹の大礼服マークの広告塔があった場所、またはそこに記されている「東京河田盛弘舎」のかつての所在地を知りたい。
- 回答
-
ご質問の塔のある写真の撮影された場所は、1910年(明治43年)9月17日から2ヶ月間に群馬県前橋市で開催された「群馬縣主催一府十四縣聯合共進會」の会場の正門外側付近と思われる。当時の記念はがきから、この建物は東京河田盛弘舎経営の遠望台とされる。同社の所在地については、大正11年、12年の電話帳から確認することができた。
- 回答プロセス
-
○ 複数の担当者が手分け(並行)して調査したものを、以下にまとめて記しておきます。
◆ 新聞記事データベース【読売新聞:ヨミダス歴史館】を使って、Kw:“東京河田盛弘舎”で明治期の記事を検索をしたがヒットはなかった。
◆ 自館OPACを使って、Kw:“明治・大正”で検索し、
・明治・大正・昭和建築写真聚覧/藤井恵介,角田真弓編(資料2)を見つけたが、該当の建築物は見当たらなかった。
◆ 森下仁丹株式会社に電話をして確認をとった。
→ 担当者にも連絡をとったが資料も残っていないので、今ではもうわからないとのこと。
◆ 江戸東京博物館図書館に電話をして調査を依頼。
→ 博物館所蔵の絵はがきに、「遠望臺全景」というキャプションで該当のHPにある建物が写っているはがきが見つかる。そこには発行が東京河田盛弘舎となっており、また「地域 浅草」と記されているのみで、撮影地が浅草だったのかそれとも所在地をさすのかも判明しない。それ以上の情報はない。
さらに問い合わせ先には、台東区立図書館・郷土資料調査室がある旨の紹介を受けた。
◆ 台東区立図書館・郷土資料調査室に電話をして、これまでの経緯を説明し調査依頼した。
→ やはり東京河田盛弘舎について辿りつく手掛かりは見つからないとのこと。
◆ 森下仁丹の創業と仁丹商標の「大礼服マーク」についてのエピソードは、資料6の「超ロングセラー大図鑑」の p.143-147 に若干の説明が見つけられるが、広告塔についての情報はない。
また資料7の「ロングセラー商品の舞台裏」の p.98-103 により詳しい解説が見つかり、創業者の森下博氏が「広告による薫化益世を使命とする」を事業方針の一つに掲げていたこともあって、1907年(明治40年)に大阪駅前に巨大なイルミネーションを完成させ、翌年には東京・神田の「開化楼」の上に、書方活動式3色イルミネーションによる広告塔を作ったことが記されている。
また資料8の p.206-217 には巻末資料として、「森下仁丹120年のあゆみ」として年表が明治26年から平成25年までの出来事が記されている。
1.まずは、東京河田盛弘舎について調べた。(Kw:河田盛弘舎、東京)
OPAC、新聞データベース等を検索するが、ヒットせず。
Googleで、Kw:河田盛弘舎で検索すると、古書店の絵葉書がヒットした。
「発行:河田盛弘舎」とあるが、会社の場所などは表示されていなかった。
( http://bmhouse.shop-pro.jp/?pid=20719876 )(2013.12.16確認)
2.次に、仁丹の関連本を調べた。
キーワード:仁丹でOPAC検索。仁丹の経営改革などの書籍がヒット。
イルミネーションや大型の看板など、広告に力を入れていたこと、浅草の仁丹塔を始め、全国各地に仁丹のイルミネーション看板があったことはわかったが、上記の写真に該当する情報は得られなかった。
3.次に、広告や広告塔、屋外広告など、「広告」の視点から調査。
新聞データベースで、Kw:仁丹で検索。明治期からの新聞広告が多数ヒット。該当する写真や関連情報がないか調べ、明治43年(1910)3月1日の新聞広告で、ご質問の写真のイルミネーション部分と同様の「自転車にのった仁丹坊」の広告あり。
森下仁丹歴史博物館の「年表」より、1908年頃から中国・インド・タイ・ビルマなどへ海外進出したとのことで、海外の可能性もあるのではと思い、海外支店の写真等も調べた。海外支店の写真についても、新聞データベースでヒットしたが、上記の写真に該当するものはなかった。
その他、広告の歴史に関する図書も調べた。
4.次に、写真の建物の形状が明治期の灯台(旧堺燈台など)に似ていたこと、写真の塔の台座部分に「展望台」らしき文字が見られることから、塔や展望台に関する図書・Webサイトを調べたが、合致するものは見つからなかった。
5.改めて「河田盛弘舎」について、Googleで検索すると、①と同様、古書店の絵葉書がヒット。
絵葉書の情報:
【遠望臺より観たる赤城山及共進會全景/遠望臺より観たる前橋市街全景】
【群馬縣主催一府十四縣聯合共進會】
サイズ:9cm×28.5cm
発行:河田盛弘舎
ここで、「遠望臺」という言葉に気づく。
質問の写真の、塔の台座部分に書かれている「展望台」らしき文字は「遠望台」ではないかと推測した。
そして、河田盛弘舎についてはWebサイトやデータベースでもほとんど情報が得られないので、ご質問の写真とこの古書店の絵葉書が同一場所で撮影された、あるいは、古書店の絵葉書の風景をご質問の写真の塔から撮影した可能性がないかと考え、古書店の絵葉書の「群馬縣主催一府十四縣聯合共進會」について調べた。
6.Kw:群馬縣主催一府十四縣聯合共進會でGoogle検索すると、群馬県立文書館『文書館だより』第18号(平成4年1月)がヒットする。
(【PDF】http://www.archives.pref.gunma.jp/kankobutu/dayori/dayori-18.pdf 2014-01-15確認)
1ページ目に「群馬縣主催一府十四縣聯合共進會」についての記事があり、「(前略)会場の建物は夜間イルミネーションに輝くなど、(後略)」の記載があった。記事に掲載されていた写真に『一府十四県連合共進会記念写真帖』とあり。
Kw:群馬縣主催一府十四縣聯合共進會、紀念寫眞帖でGoogle画像検索したところ、資料3の群馬県立図書館デジタルライブラリーの資料がヒット。
トピックの「平成25年1月公開分」に「記念写真帖」あり。詳細画像(HTML)を確認。20枚目の画像に塔のようなものが写っていたので、拡大してみると、ご質問の写真とは撮影角度が異なるものの、「懐中良薬」の文字と自転車に乗った仁丹坊らしきイルミネーションが確認できた。
( http://www1.library.pref.gunma.jp/da/archive/jpeg/H24/02380848/020.jpg )(2013.12.16確認)
7.その他、以下の情報もヒット。
「アンティーク絵葉書専門店ポケットブック」(資料5)より、下段の画像を入手。
№Q4652 「371488群馬 1府14県連合共進会 観覧遠望台」
写真下に、「共進会唯一の観覧遠望台 (東京河田盛弘舎の経営)(東京河田盛弘舎発行)」とあり、写真右側には「前橋 一府十四縣聯合共進會 遠望台登閣紀念」の印が押されている。また、写真の塔の台座部分「遠望台」の文字の下に「東京河田盛弘舎」の文字が見える。
また、この遠望台の位置については、同じく資料3の群馬県立図書館デジタルライブラリーの『群馬県主催一府十四県聯合共進会事務報告』の詳細画像(HTML)101枚目に共進会会場の地図があり、正門外側にある「第2余興地」に「遠望台」と記されているものが該当すると思われる。
( http://www1.library.pref.gunma.jp/da/archive/jpeg/H24/02380822/101.jpg )(2013.12.16確認)
8.国立国会図書館関西館レファ協事務局よりコメントを頂き、所在地情報が確認できた。(2020/06/10)
国立国会図書館へ、一般の方より、「「河田盛弘舎」は、東京の日暮里金杉に所在し、後に日本広告看板工業株式会社に社名が変更された」との情報が寄せられた。その後、同事務局で調査頂き、NDLデジタルコレクションに公開されている電話帳で両社の情報が確認できたことを情報提供頂いた。
日本商工通信社編『職業別電話名簿.東京・横浜』 (日本商工通信社, 1922)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950545/288 (2020/06/10 確認)
「河田盛弘舎本店」の社名、住所、電話番号、「ペンキ看板業」の記載あり(288コマ目。555ページ、上段)。
日本商工通信社編『職業別電話名簿. 東京・横浜』 (日本商工通信社, 1923)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/950546/309 (2020/06/10 確認)
「日本広告看板工業株式会社」の記載あり。(309コマ目。595ページ、上段)
所在番地が変わっているが、電話番号が同一であるため、「河田盛弘舎」と同一の会社と考えることができる。
- 事前調査事項
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○ 森下仁丹 公式Websiteの歴史博物館の広告ギャラリー(資料1)に、
3. 東京河田盛弘舎のイルミネーション(1912年 大正元年)とあり、大礼服のトレードマークの写真が載っている。この画像を示しての質問。
(http://www.jintan.co.jp/museum/ads/910_3.html last_access:2013-12-09)
- NDC
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- 広告.宣伝 (674 9版)
- 参考資料
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【資料1】.森下仁丹 公式Website : 森下仁丹歴史博物館 > ■黎明期 大礼服マークの登場
(http://www.jintan.co.jp/museum/story/index01_04.html last_access:2014-01-15) -
【資料2】.藤井恵介, 角田真弓 編. 明治大正昭和建築写真聚覧. 文生書院, 2012.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023542022-00 , ISBN 9784892534850 (本学所蔵 523.1//F57) -
【資料3】.群馬県立図書館デジタルライブラリー 公式Website
( http://www.library.pref.gunma.jp/?page_id=334 last_access:2014-01-14) -
【資料4】.群馬県立文書館 公式Website
(http://www.archives.pref.gunma.jp/ last_access:2014-01-15) -
【資料5】.アンティーク絵葉書専門店「ポケットブックス」 Website
(http://www.pocketbooks-japan.com/ last_access:2014-01-14) -
【資料6】.竹内書店新社編集部 編. 超ロングセラー大図鑑 : 花王石鹸からカップヌードルまで : 明治23年から昭和46年までの45傑作商品. 竹内書店新社, 2001.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003656621-00 , ISBN 480350332X (本学所蔵 675.1//Ta67) -
【資料7】.成美堂出版編集部 編. ロングセラー商品の舞台裏 : ヒットを続けるのには理由がある : 国民的商品から学ぶ企画、開発、営業・宣伝のすべて. 成美堂出版, 2010.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010887818-00 , ISBN 9784415309248 (本学所蔵 675.1//Se17) -
【資料8】.森下仁丹株式会社 取材協力. 老舗に学ぶ企業改革成功の理由. 幻冬舎メディアコンサルティング, 2013.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024262305-00 , ISBN 9784344999220 (本学所蔵 499.09//Sh62)
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【資料1】.森下仁丹 公式Website : 森下仁丹歴史博物館 > ■黎明期 大礼服マークの登場
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- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 建物 広告
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000141670
- 関連ファイル